歌と、10%

秋色の服とともに、こないだ黒のワークブーツを買った。もともとはオーストラリア発祥の物なのだと知ったのはつい最近のこと。丈夫な革製なので作業場はもちろんのこと、フォーマルな場所でもキマる優れ物としてオーストラリアでは働く男性の味方なのだとか。それが所変わって日本では女性の足元を飾っているからおもしろい。

ハイカットで靴紐のないすっきりとしたシルエット。脱ぎ履きが楽チンだし、雨もしのげるし、たしかにこれは現場で重宝される奴なんだろう。オーストラリアでは職人技の光る1点物もあるらしいが、がしがし歩いてすぐ靴をダメにしてしまう私はファストファッションで間に合わせた。

新しいものを身につけるのはやっぱり気分が上がるもので。うきうきしながら家を出て、時折足元の黒に目をやりながら電車に揺られる。消費税アップとともに新曲をリリースした香取慎吾「10%」が最近のお気に入り。彼のユーモアとラップと歌声がすき。元気が出る。

そうして普段通りの生活に新入りを馴染ませようとしていたら、ふと、ハイカットの内側の縫い目が気になり始めてしまった。その1点だけを除けば、素足に寄り添うブーツの縁はどこもなめらかな指触りで、履く人のことを思いやったその造りに安物ながら感心したりして。ただ、角っこの、おそらく糸が玉止めでもされているのであろう箇所だけが、どうしても気になる。ほんの少し、たったの数ミリの違和感。購入してからまだ数日しか経っていないとはいえ、なんなら積極的にがしがし歩いてしまっているし、お店へと返品に出向くのもなんだか億劫なので、こうなったらもう自力でなんとかしようと私はカッターを手に取った。革の合わさっている部分にメスを入れ、切り開いた内側に隠れていた糸と革をちょこっとスライスして摘出。ただこれをまたなめらかに縫い直すことは私の指では不可能に思えたので、瞬間接着剤という名の強行手段に出た。紙を束ねていたゴツいクリップで止めを刺して、念の為ひと晩そのまま寝かせてみた。見た目はあんまりきれいじゃないけれど違和感はなくなったし、まぁ応急処置にしてはよくできたと思う。安物とはいえ、ちゃんとこの手で選んだ物だから、どうか長持ちしてほしい。

そうして満を持して今日も黒いのと一緒に家を出る。うっかり新入りの靴下を履いてみたのだけど、五本指ソックスとは相性が悪いってことだけは覚えておこう。

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