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「科学的な適職」でオンラインABDをやってみた。

こんにちは、株式会社タバネルの奥田です。

職業選択の自由を有する

就職、転職など、誰もが経験する「職業選択」
誰もが経験するにも関わらず、多くの人が迷い、悩み、ときに後悔する正解がない行為であるとも言えます。

どのようにすれば最高の職業選択ができるか?を、膨大な論文、調査に基づき科学的に導き出しているのが、「科学的な適職」です。

今回、この本についてABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ®)を、ZOOMを使ったオンラインで実施しました。

先ほども述べた通り誰もが経験する「職業選択」だからこそ、対話が生まれやすくABD向きの一冊だと思います。
後ほど詳しく述べますが、実際に今回は参加者のほとんどが初対面、かつABD未経験者でありながらもオンラインで大いに対話が盛り上がりました。

今回は、オンラインABDをどのように進めたか?を中心に書いていきます。本の内容については最後にまとめていますので、内容が気になる方は、最後から読んでいただいても大丈夫です。

ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ®)とは

アクティブ・ブック・ダイアローグ®は、読書が苦手な人も、本が大好きな人も、短時間で読みたい本を読むことができる全く新しい読書手法です。
1冊の本を分担して読んでまとめる、発表・共有化する、気づきを深める対話をするというプロセスを通して、著者の伝えようとすることを深く理解でき、能動的な気づきや学びが得られます。

ABD開発者の竹ノ内 壮太郎さんがこのように解説しています。

私はABDに出会う前は、「本を読む」ことは「一人で行う行為」と信じて疑わなかっていなかったです。しかしながら、ABDを通じて複数で読む楽しさにどっぷりハマりました。

何より一人ではできない「対話」をすることによって、本からの学び、気づきが驚くほど増大します。分担することで「短い時間で本が読める」こともメリットですが、やはり「対話」が深まることがABDの醍醐味だと私は感じています。

オンラインABDの準備

今回のABDは「Next Innovation Kansai」という社会人交流会のグループで実施させていただきました。

グループのfacebookに以下の投稿があり、思わず「オンラインでABDがしたい!」と投稿したのがきっかけです。

なかなかリアルイベントが開催できないので、オンラインでの取り組みも考えていきます!
みなさん、どんなオンラインイベントなら参加したいですか??ぜひ投票お願いします❤

そしてグループ内でfacebookイベントを立ち上げ、イベント日時、ABDとテーマ本の概要説明のほか、以下の内容を告知しました。

◆イベント参加までの流れ
本イベントではABDのサマライズを事前に行います。
・イベント参加者でFacebookメッセージグループを作成しますのでご参加ください。
・メッセージグループ内でテーマ図書内での分担を決めます。
・当日までにご自身が担当となった箇所を読み、要約しておいてください。◆ご注意
・当日の参加はビデオ・マイクオンできることが望ましいです。ご自身の環境をご確認ください。
・ファシリテーターが画面共有を使用しますのでPCからのご参加を推奨いたします。(スマホでは画面が小さく見づらい可能性があります)
・人数によって実施方法が変わるため、コサマライズ開始後のキャンセルはご遠慮ください。参加が難しくなった場合は、事務局にご相談ください。

今回は対話を重視したいという思いもあり、サマライズを事前課題としました。

と言うのも、サマライズは担当する人、担当する場所によって時間がバラつくこともあること、かつ長い時間かかるためオンラインイベント全体が長時間になるからです。

そして、申込締め切り後に、参加者だけのメッセンジャーグループを作り、担当パートを自己申告で先着順で決めます。

今回は参加者7人となり、担当分けは以下の通りです。

「科学的な適職_onABD - サマリー分担

そして、オンラインABDのツールは、ZOOMとGoogleスライドの2つを使います。

ABDの説明、事前課題の提出はすべてGoogleスライド(下記参照)で行いました。操作が簡単であること、そしてABD中にスライドを使う練習にもなりますので、Googleスライドで全てを行ったのは良かったと思っています。

「科学的な適職」_onABD - 表紙

協会ホームページよりABDの説明文を引用しています。

「科学的な適職」_onABD -ABDとは

全体の流れを簡単に理解できるように説明を載せました。

「科学的な適職」_onABD - 流れ

Googleスライドでは、フォント、図解、装飾、アニメーションなどいろいろできてしまうので、一定のルールを設けて課題に取り組んでもらいます。そして、担当箇所を4枚のスライドにまとめてもらうようにしました。

「科学的な適職」_onABD - サマライズ

サマライズ作成で迷うことのないように、いくつか例を載せます。

「科学的な適職_onABD - サマライズ見本

また、各自が間違いなく作成できるように、入力するスライドも事前に全員分準備しておきました。

「科学的な適職」_onABD - サマライズ記入用

事前説明、事前課題は、当日の運営をスムーズにするためにとても大切です。オンラインで初対面の方も多いので、できるだけ不安を減らすこと、ツールの慣れ不慣れの差を減らすこと、ができるように設計することが重要だと実感しました。

オンラインABDの実際

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いよいよ当日を迎えます。全員分のサマライズ課題がGoogleスライドに埋まっていることも確認できるので、安心してスタートできます。

開始10分前からZOOMをオープンしておきます。

こうすることで、いきなりスタートではなく、入ってくる人ごとに簡単なコミュニケーションをとれることできます。

そして、ZOOMの表示名を「名前@居場所」に変更してもらいます。私であれば「奥田@大阪市北区」を表示名にします。こうすることで、親近感が沸いたり、話題が広がる効果があります。

入ってきた人と雑談をしながら、定刻に7人全員がそろってスタートしました。
私が簡単に自己紹介して、チェックインからスタートです。

「科学的な適職_onABD - チェックイン

ちなみに遅れてくる人がいても定刻にスタートした方が良いかと思います。チェックインが終わるまでに間に合えば、ABDの進行自体には大きな支障がありません。

練習もかねてABDの経験をチャットに入力してもらったのですが、ほとんどが「はじめて」「1回」でした。また参加者同士もほとんどの人が初対面とファシリテーターとしては少し不安が残りましたが、結論から言えば全く問題なかったです。

そして自己紹介タイムに移ります。「Next Innovation Kansai」の代表の吉永さんにグループの説明も含めて最初に自己紹介を行ってもらい、その後全員を回して、いよいよスタートです。

あらためて、ABDの概要と流れを説明したのち、グランドルールとリレープレゼンの説明を行います。

「科学的な適職_onABD - グランドルール

特に”聴き合う”はとても大切だと思っています。プレゼンや対話が続きますので、「うまくプレゼンしたい!」「自分の話をしたい!」などの気持ちを抑えて、他人の話を”聴く”を全員が意識することが大切です。

「科学的な適職_リレープレゼン

1章から順に、自分の作ったサマライズをリレー形式でプレゼンしていきます。全員が同じGoogleスライドを持っているので、画面をシェアせずとも見れるのですが、全員で同じプレゼンを集中して聴く状況を生み出すためにあえて画面共有しました。

「科学的な適職_リレープレゼン例

実際の所要時間は一人2分では難しかったため、3~4分程度に2人目のプレゼンから変更しました。

一人4枚✖7人分の計28枚のプレゼンが終わると、ギャラリーウォークに移ります。ブレイクアウトセッションで2~3人一組に別れて行います。プレゼンを聴くだけでは十分には理解できていないところもあるので、一旦内容を少人数理解するために行います。

ちなみにギャラリーウォークは、美術館の絵を見て歩くようにサマリーを見て回ることをイメージしています。

「科学的な適職_ギャラリーウォーク

前後半に分けて行うのは、途中のスライドで会話が弾み止まったり、後半のスライドが気になり前半をあまり見ずに進めたりすることがあるからです。前後半の間に、もう一度全体を見渡すように確認することを促します。

ギャラリーウォークが終わると全員が一通り内容を理解できているので、私がABDの醍醐味と考える「対話=ダイアローグ」に移ります。今回は参加者7人を3人、4人の2グループに分けます。

ただ、対話が弾まずただ感想の共有になってしまうことが過去に何度かありました。そこで、今回はダイアローグを2回に分けて行います。

「科学的な適職_対話①

1回目は、より深い対話を行うために、「気づき」と「問い」を立ててもらいます。

気づき:この本を読んでの一番の気づき
問 い:この本を読んで更に考えたい点

「気づき」の共有も大切ですが、「気づき」からもう一歩進んでさらに考えたい点を「問い」として考えてもらいます。

それぞれのチーム用に記入スライドを準備しておくとスムーズに進みます。

「科学的な適職_対話用シート

そして10分後に一回目の対話が終了すると、内容をお互いに共有します。そして、二回目は違うチームの「問い」を考えてもらいます。

違うチームの「問い」を考えることで、自分たちにはなかった視点、切り口から改めて考えを深めることができます。ただし、「問い」の答えに必ずしもこだわる必要はなく、「問い」をきっかけに考えを深めることが大切です。

「科学的な適職_対話②

実際に出てきた「気づき」「問い」とその結果の一例です。

「科学的な適職_気づき&問い例

一枚のスライドにまとまっていますが、前後半合わせて20分間絶え間なく対話が続いていました。一人で読むだけでは決して得られない気づきや創発があったと思います。
また「適職」の本にも関わらず、「パートナー探し」が出てくるのもABDならではの面白さも知れません。

ここまで終われば、エンディングを迎えます。

「科学的な適職_エンディング

エンディングでは、この本やABDの感想にこだわらず、今の率直な気持ち、感想全員が発表して終わります。

「楽しかったので、またABDやりたい!」
「初めての人ばかりで不安だったが、すごく盛り上がった」
「本を読んでここまで気づきがあったのは初めて」

などなど、ファシリテーターとしては嬉しい感想をもらって終了しました。

「科学的な適職」のまとめ

今回のテーマ本「科学的な適職」についてまとめます。

本書において、「適職」はこのように定義されています。

あなたの幸福が最大化される仕事

また、このようにも書かれています。

単に「自分の才能が発揮できる仕事」や「好きなことができる職場」のようなイメージがありますが、本書ではこれらの定義は採用しません。

なぜこのような定義をしているかと言えば、仕事選びの失敗は人生の後悔につながるからだそうです。そのため、人生に後悔しない仕事選びが必要ですが、人間は間違いを犯しやすいので、科学的な根拠に基づくステップを踏むことが重要です。

この「適職」の定義に基づいて、科学的に適職を選ぶステップが書かれています。

まず、職業選択にありがちな「7つの大罪」を紹介しています。
職業選択を誤らせる最大の原因は、本当は人間の幸福とは関係ないにも関わらず、思い込みでミスしてしまう要素が「大罪」です。

大罪1:好きを仕事にする
大罪2:給料の多さで選ぶ
大罪3:業界や職種で選ぶ
大罪4:仕事の楽さで選ぶ
大罪5:性格テストで選ぶ
大罪6:直感で選ぶ
大罪7:適正に合った仕事を求める

どれも一見、こうすべき!と思ってしまいますが、本書ではデータを用いてどれも幸福と関係ないと断じています。

次に仕事選びに失敗する理由は視野狭窄であり、視野を拡げるためには仕事の幸福度を決める「7つの徳目」を手掛かりにすると良いそうです。

徳目1:自由 仕事内容や働き方の裁量権がある
徳目2:達成 前に進んでいる感覚を得られる
徳目3:焦点 モチベーションタイプに合っている
徳目4:明確 なすべきこと、ビジョン、評価軸が明確である
徳目5:多様 作業内容にバリエーションがある
徳目6:仲間 組織内に助けてくれる友人がいる
徳目7:貢献 どれだけ世の中の役に立っているかわかる

いくら幸福度の高い仕事を選んでも、働く環境、職場が最悪な状況だと意味がありません。そこで最悪な職場に共通する「8つの悪」に気をつけることが大切になります。

1位:ワークライフバランスが崩壊
2位:雇用が不安定
3位:労働時間が長い
4位:シフトワーク
5位:仕事の裁量権がない
6位:周囲のサポートがない
7位:組織内に不公平が多い
8位:通勤時間が長い

そして、「7つの大罪」、「7つの徳目」、「8つの悪」をベースに最適な仕事を分析し選んでいきます。

しかしながら、人間にはバイアス(偏ったものの見方)があり、意思決定を間違ってしまう可能性が高いです。そこでバイアスを回避するためには、時間や視点をコントロールする手法を使うことが大切であると書かれています。

ここまで見てきた方法で職業に就いたとしても、「なんとなく今の仕事に納得できない」などぼんやりと不安を抱えることもあります。

そこで満足度を再評価し、失敗ならば転職、そうでなければ問題改善をすることになります。

ぼんやりとした不安に対する問題改善は、今の仕事の「やりがい」を見出すことにエネルギーを注ぐことが大切です。「ジョブクラフティング」と呼ばれる手法を用いて、自分の仕事を価値観に基づいてとらえ直すとが良いです。

以上のように、本書は科学的な根拠に基づき仕事選びの意思決定の精度を高める手法を教えてくれます。そして、仕事選びの失敗を科学的に減らすことで、人生の後悔を極限まで減らすことができるのでしょう。

(以下、個人的な雑感)

この本は職業を選ぶ側ではなく、採用し雇用する側が読むべきではないか?

つまり、就職者ではなく、人事部門やマネージャー、そして経営者こそが読むべきかと思います。

なぜなら、この本を読んでも、やはり適職を選ぶことはいまだ難しいように感じます。そこで発想を変えると、選んだ会社が適職だったと思えるようにする、つまり社員の幸福度を最大化する努力を人事や経営者がすることはできます。

ただし、むやみに社員に合わせる必要がないことを「7つの大罪」では証明してくれています。

また、会社が整えるべきことが「8つの徳目」で、取り除くべき職場環境を「7つの大罪」で示されている。特に「8つの徳目」は、仮に「社員の幸福度」を考えず、「会社の成果」だけを考えても選ばれるべき項目です。

つまり、「会社の成果」と「社員の幸福度」を上げることは両立すると読み取ることもできます。

社員の幸福度を最大化することは、社員にとっても会社にとっても大切であり、この本はそのためのヒントを教えてくれていると感じました。

Well-Beingを目指す会社の人事、経営者にも新たな視点を与えれくれるか、と思います。

さいごに

今回は初対面、初ABDの方も多い中、とても楽しくオンラインABDができました。この要因は3つあると思っています。

1つ目は「オンライン向けの準備」です。
今回は進行はすべてGoogleスライドで行ってことが良かったと思います。リアルな場と違い、参加者に迷いや戸惑いがあっても、なかなかファシリテーターは気づくことができません。なので、できるだけ準備をしておくこと、対話を誘発しやすい設計をしておくことが大切だと改めて実感しました。

2つ目は「ABDの仕組み」です。
オンラインで実施して、改めてABDの仕組みのすばらしさを実感しました。同じテーマについて、全員が意識を向け対話をすることが自然にできる仕組みとなっています。オンライン、オフライン限らずできるのも素晴らしいです。今回、私はアレンジして実施しましたが、より学びたい方はぜひ協会の公式マニュアルをダウンロード(無料)してください。

3つ目は「参加者の協力」です。
今回、「Next Innovation Kansai」の吉永さん、中嘉さんに協力いただき開催することができました。参加者のみなさんも非常に協力的だったおかげで、対話が盛り上がったと思います。オンラインならではのストレスはありますが、みんなが配慮できると楽しく過ごせることが分かりました。みなさん、ありがとうございました!

ここまで読んでいただければお分かりかと思いますが、私はすっかりABDにハマっています。

オンラインで知らない人とでもおうちで楽しく学べるABD。まだABDに参加されたことのない方は、ぜひ一度お試しください。

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