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「アジャイル化する人事」を読んでみた

こんにちは、株式会社タバネルの奥田です。

前回のアジャイル本についてのnote記事を書いた勢いに乗って、今回は人事分野のアジャイル化について書かれた「アジャイル化する人事」を読んでみました。

本の内容に触れる前に念のため確認しておきます。人事業務は以下のプロセスを中心に成り立っています。

・採用/退職
・配置
・評価
・報酬
・育成

本書では、これらの人事業務にアジャイルをいかに取り入れているのか?を学べることを期待して読み進めました。

アジャイル化する人事

こちらは、前回の『日本企業が「アジャイル」を実践する方法』と同じくハーバード・ビジネス・レビュー掲載の論文になります。

目次
・人事分野で進むアジャイル化
・最大の変化は人事のどの領域で起きているか
・現状の課題

本書では先に挙げた人事業務の各プロセスで、アジャイル化が進んでいると書かれています。

アジャイル化の方法は各社、各業務で様々ですが、大きく2点ポイントがあります。

一つ目が、リアルタイム・フィードバックの重要性です。

ご承知の通り、業務がアジャイル化すると、短期サイクルを何度も回すプロセスが行われます。従来のウォーターフォール型と異なり、最初に要件定義を固めないため、当初目標に固執したフィードバック、業績評価、報酬決定が無意味化します。また、複数のプロジェクトにアサインするため、組織図上の上司が年次単位で評価することは困難です。

チーム業務を機能的に動かすためにも、個人の成長や業務改善のためにも、リアルタイムフィードバックは欠かせなくなります。

二つ目がマネジメント対象の個人からチームへの変化です。

スクラムに代表されるように、アジャイルではプロジェクトをチームで動かすことが求められます。つまり、マネージャーはチームをマネジメントすることが求められます。そのため、これまで以上にマネージャーに対する支援、特にコーチングスキル獲得が重要になるとされています。

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アジャイル化する人事⑥

このような変化が人事のアジャイル化では必要になりますが、本書ではそのための最大の課題は人事部内の反発だとあります。

IT導入での省力化にはなんとか協力できても、これまでの慣習からの脱却には反発を示してしまう、というのことは人事に限らずよくある話ですよね。

本書を読み終えて

この本を読んで感じたポイントは3つです。

1つ目のポイントは、人事のアジャイル化といっても各社多様で、明確な定義があるわけではない。当然と言えば当然ですが、改めて気づきました。

特に個人的に面白かったのが、「報酬」です。
ある会社は都度ボーナスを支払い、別の会社はボーナスを廃止する、など本当に多様です。

私が専門にしているOKRについても、OKR導入でどんな報酬制度、人事評価制度にすれば良いですか?とよく質問を受けます。OKRは報酬制度、人事評価制度ではなく、マネジメントツールでありコミュニケーションツールです。

事業環境と経営の意思に基づく人事戦略の一環で報酬・評価制度ですので、当然ですがアジャイルだから、OKRだから、この制度になるというものではありません。本書のおかげで、そのことを強く再認識できました。

2つ目のポイントは、良い意味での本書への期待を裏切られたことです。

最初に書いたように本書を読む前の期待は「人事業務にアジャイルをいかに取り入れているのか?を学べること」でした。

しかしながら、読み進めると人事業務がアジャイル化していることではなく、アジャイル化した業務、事業にいかに人事業務を適応させるか?について書かれていることが分かりました。

アジャイルが「顧客中心」を掲げる以上、人事は事業や経営の要望に素早く適応しようとすることは人事のアジャイル化とも言えます。しかし、本来の人事は、事業や経営から離れたところにいてはいけないことが原則です。

3つ目のポイントは、人事プロセスの中で「能力開発」の事例が物足りない点です。

これは事例が少ないということが原因では、恐らくないのだと思います。HRtechの進化などで様々な取り組みが行われているものの、まだまだこの分野は進化の余地がある証左だと思います。

もう一方で、座学研修などでの育成以上に、リアルタイムフィードバック、コーチングなどの実際の業務経験からの成長を促進することが今後より重要になるのだな、と認識しました。

最後は我田引水かも知れませんが、アジャイル化が進む組織にOKRはマッチするな、と改めて思いました。



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