ハラスメントは〈起こしたら終わり〉
実は数ヶ月前から、会社でマタハラを受けている。
わたしは男性なのでパタハラと呼ぶべきかもしれないが、呼称はともかくとして、育児休職の取得に関して上司から非常に難しい注文を受けており、実質的に取得が妨害されている状況だ。
個人が特定されるのでこれ以上詳らかにしないが、育児休職は法に定められた制度なので、これを正しく運用できない事態は直ちにコンプライアンス違反である。
わたしが勤めているのはそれなりの規模の会社なので、こういうハラスメントを受けた時に相談するための通報窓口がある。けっこう良く整備された制度のようで、解決に向けて慎重に対応してくれるそうだ。
通報者の匿名性は守られる、通報を行ったことによる不利益は生じない、など、被害者に寄り添った対応が謳われている。
おそらくわたしが通報すれば、スムーズに育児休職が取得できるような措置が講じられるであろう。
しかしふと考える。
いくら通報者は匿名とはいえ、通報したのがわたしなのはすぐに明白になる。というか不利益を被っている個人を特定することなしに、適切な措置など講じられるはずもない。
また通報後に適切な措置が講じられたとして、そのときわたしは「加害者」となった上司たちにどのような顔をして会えば良いのだろうか。
もちろんハラスメントを起こした時点で加害者が排除されれば別だが、偉大なる我がJTCではそのようなことは起こり得ない。
こういうケースの場合、とりわけJTCのような企業の場合、育児休職は取得したい、けれども上司との関係を無下にはできず会社員としてのキャリアも大事にしたい…そういう板挟みのなかで会社員生活を送っている人間が大半なわけで、上司との関係をご破産にすることに躊躇がないならば、そもそも最初から「育児休職を取得します。取得させてくれないなら然るべき場所に訴えます」と言えばいいだけだ。
通報して被害者/加害者の構図がハッキリとしてしまった場合、その後両者が以前のように同じ気持ちで働くことはもうできないだろう。
つまりこの種のハラスメントは「起こしたら終わり」なのだ。
なにが「終わり」なのかといえば、「組織の中での被害者のキャリアが終わる」ということだ。
起きてから解決しようとしても、手遅れだ。
というわけでわたしの会社員としてのキャリア第一弾は無事に終了が確定したわけだが、差し当たって行うべきは転職活動か、独立して自営業としてやっていく準備か、あるいはその両方である。
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