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連載「差押えコラム。未払金を取り返せ!⑩」 ー 書類送検のハードル ー

※当記事は連載「差押えコラム」の第10回です。第1回から読む方はこちらです。

こんにちは!筆者の渡邉です。このコラムは、私がある会社から、未払いとなった業務委託料を回収するまでの軌跡を記録したものです。初noteでいきなり生々しい体験談ですが、記憶が新しいうちに共有できたらと思い、筆を取らせていただきました。
私のように「会社から給料が払われない」「クライアントがギャラを振り込まない」といった被害にあわれている方にとって、少しでも問題解決の手助けになればという思いで執筆します。
現在は無事に未払金を回収し、元同僚と新たに「合同会社Mauve(モーヴ)」という会社を立ち上げ、アプリケーションやWEBサイトの受託開発を行っています。
※Mauveでもnoteにてコラムを掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://note.com/mauve_0210/

登場人物の紹介

私は2020年末から、アプリケーション等の制作会社(以下、A社)で、バックオフィスの仕事を業務委託で請け負っていました。

登場人物2

2021年4月13日 中編 ― 書類送検のハードル ―

T社と情報共有を終えたこの日の午後、A社の件で動いてくれている労基署の担当者から電話がありました。

その担当者は、4月7日(水)に行政指導のためA社のオフィスへ飛び込み訪問したそうです。しかしこの日、社長は不在。仕方なく、オフィスのポストに労基署が訪問したことを記載した来所通知だけ残したといいます。

担当者もこれまで私たちの話を聞き、A社の社長を捕まえるのはなかなか容易ではないぞ、と思っていたようなのですが、なんと本日、社長自身が労基署へやって来たといいます。

担当者から、未払い賃金の件で行政指導をしていると伝えられた社長は、次のように訴えたといいます。

「そもそも、労基署に来ているメンバーは業務委託。社員として雇った覚えはない」
「資金がないため、賃金は払えない」
「行政指導に従わない場合、何か罰則があるのか」

特に3つ目の「罰則」については繰り返し確認したということで、担当者から見ても未払い賃金を支払わない可能性が高い、と感じたそうです。

以前にも書きましたが、あくまでも現時点では行政「指導」のため、未払い賃金を未払いのまま放置し続けてもA社が罰則を受けることはありません。

わかりきっていたことですが、こうなると労基署でできることは、最終手段の書類送検(つまり逮捕)しかありません。私は書類送検を実行できないか聞きましたが、担当者レベルでは判断ができないため、上席に確認したいということでいったん電話が切られました。

その数十分後、労基署の上席より連絡があり、あらためて書類送検は難しいと回答がありました。
その理由は、書類送検しても不起訴の可能性が高いという点でした。

そもそも私たちとA社の契約は、業務委託(請負)で始まっています。実質的に雇用されていたと言えども、社長が「すみません、請負と雇用の違いがわからなくて、請負で頼んだつもりが雇用するように見えてしまいました!これからは請負は、時間や場所を定めず、業務内容も明確にします!」と言ってしまえばそれまでです。

これを法律用語で、「錯誤」と言います。

つまり、「思い違い」ということです。

・故意ではなく思い違いでやってしまったこと
・今後は気をつけます!

このように主張されれば検察側も「(初犯だし)錯誤なら仕方ないよね。これから気をつけてね。」ということで不起訴になる可能性が高いというわけです。

あくまでも可能性ですから起訴できるのではないかと思うかもしれませんが、錯誤が錯誤でないという立証は難しいものです。

また、今回は労基署も乗り気ではありません。このことから、社長の書類送検は断念せざるを得ませんでした。
労基署に逮捕の権限があるとはいえ、その力を行使するのはなかなかハードルが高いものでした。

その代替案というわけではありませんが、労基署の上席からある提案がありました。
それは「未払賃金立替払制度」の活用です。

この制度は、企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払する制度だそうで、今回の私のケースにも対応できるのではないか、ということでした。

次回は、この「未払賃金立替払制度」について詳しくお話をしていきたいと思います!

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