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連載「差押えコラム。未払金を取り返せ!⑧」 ー 労基署が行う「指導」の効力とは? ー

※当記事は連載「差押えコラム」の第8回です。第1回から読む方はこちらです。

こんにちは!筆者の渡邉です。このコラムは、私がある会社から、未払いとなった業務委託料を回収するまでの軌跡を記録したものです。初noteでいきなり生々しい体験談ですが、記憶が新しいうちに共有できたらと思い、筆を取らせていただきました。
私のように「会社から給料が払われない」「クライアントがギャラを振り込まない」といった被害にあわれている方にとって、少しでも問題解決の手助けになればという思いで執筆します。
現在は無事に未払金を回収し、元同僚と新たに「合同会社Mauve(モーヴ)」という会社を立ち上げ、アプリケーションやWEBサイトの受託開発を行っています。
※Mauveでもnoteにてコラムを掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://note.com/mauve_0210/

登場人物の紹介

私は2020年末から、アプリケーション等の制作会社(以下、A社)で、バックオフィスの仕事を業務委託というかたちで請け負っていました。
契約上はオフィス勤務を求められていたため、業務は原則オフィスで行っていました。この勤務形態が後々、解決策の道標になるため前述します。

登場人物 (2)

2021年3月28日 ― 2度あることは3度ある ―

前回のコラムでは、労基署に未払い賃金を取り戻す相談をしに行ったお話をしました。

労基署のアドバイスに従って、栗田・山本・野原の3名は、未払いを起こしたA社に対して支払い催促の書類を配達証明で送付したのです。3月28日のこの日は、配達証明を受け取ったA社から何らかの反応があればいいなと、それぞれが期待を込めて結果待ちをしているところでした。

そんななか、A社に関して別のトラブルが発生したのです。

A社で派遣社員として働いていたエンジニアの益子から、A社が取引先のT社とも請求トラブルを起こしている、と聞かされたのです。

T社はA社にエンジニアを派遣し、A社の行っているアプリ制作に携わらせていました。ところがA社はこのエンジニア派遣に関する一連のサービスに対して、料金の支払いを拒否しているというのです。

A社は「T社がサービスを履行していない」ことを不払いの理由に挙げているらしいのですが、実際にT社から派遣されたエンジニアが稼働しているのを私は目撃していましたから、このA社の言い分はまったく根拠のないものです。

つまりこの話は、私と栗田に対してあらゆる理由をこじつけて賃金を未払いにした時と、まったく同じ手口だったというわけです。

ちなみに私と栗田はA社退職後、2月に新会社「Mauve(モーヴ)」を設立していますが、その際、A社の顧客を横取りしたという理由で1月分の業務委託料は支払われませんでした。

A社の社長は「顧客の横取り」といいますが、顧客は自分の意志でMauveを選んでくれたのです。もちろん、A社と結んだなんらかの契約を破ったわけでもありません。これは、厳然たる自由競争の原理だと思うのです。

そもそもA社から離れた顧客というのも、もとは栗田の知人であり、営業だった彼がA社に紹介した経緯もあるのです。

後に私たちは、A社が創業以来、幾度もこうして様々な理由をつけては払うべきお金を踏み倒してきたことを知っていくのです。
そしてT社と私達は協力して、A社を追い詰めていくのです。

2021年3月31日 ― 予想通り ―

この日は、栗田・山本・野原がA社に通告した支払期日でした。しかし、私が予想した通り、A社からの支払いはありませんでした。
そこで私たちは相談し、改めて労基署へ向かうことにしました。

2021年4月1日 ― 指導・勧告・命令 ―

この日のメンバーは、仕事で不在の野原を除いて、栗田・山本・私の3人で、前回と同じ労基署に相談に行きました。
前回、労基署から受けたアドバイス通り、A社に対して未払い金の請求をしたものの、支払い期限の31日を過ぎても支払いがなかったことを報告した結果、行政指導に入るための申請手続きをするよう指示がありました。

ここからは、行政が権限を持つ「指導・勧告・命令」について、それぞれどんな効力を持つのか解説していきます。

◆指導とは?
まず、行政指導の「指導」がどの程度の効力を持ったものなのか、簡単に説明します。

行政のいう「指導」とは、「法に触れている可能性があるから、直してくださいね」もしくは「法に触れていないが、改善してくださいね」という意味があります。

指導なので、それを受け入れるかどうかはあくまでも任意ですが、そもそも行政から指導を受けること事態が、企業としてはまずい状態です。
そのため、大抵の企業は指導の段階で是正をし、問題ないことを行政に報告します。ところが、これが悪質な企業になると「指導」では改善されず、「勧告」そして「命令」へと内容が変わってくるのです。

◆勧告とは?
では「勧告」はなにかというと、「定めた期日までに直してくださいね。今ならまだ罰則なしで良いですよ」という意味合いです。
勧告の内容は、通常は文書で送付されてきます。是正しなくても罰則はありませんが、裏を返せば「直さないとこの後どうなるかわかっているよね?」ということです。つまりこの勧告が示す内容の、空気を読めよということなのです。

◆命令とは?
「命令」は言わずもがな「今すぐ直さないと罰則があるよ」という意味です。これは説明するまでもなく、すぐ是正をしないと前科(罰則なので)がつきます。

この話を踏まえて、A社は労基署より指導対象企業となったのです。指導が入るということは、この先の勧告...そして命令も視野に入ってきます...。
そして、以前もお伝えしましたが、労基署は逮捕権がある行政機関ですから、最悪、書類送検で逮捕ということもあり得ます。そうすると事業活動自体もストップしてしまうので、A社の現状を踏まえると実質倒産となります。

ひとまず今回は「指導」ですが、数万円単位の債権を持っている山本からすれば、A社が支払いをしてくれるかもしれないという最後の希望です。うまく事が運べば良いですが、まだまだこの件は続くということを先にお伝えしておきます。

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