感染した時のビタミンB1の重要性
ウイルスや細菌など外敵から体を守るために、腸には免疫細胞の6~7割が集まっています(腸管免疫)。
ウイルスや細菌の多くは胃酸によって殺菌されますが、それでも死なない外敵は⼩腸に到達し、空腸や回腸の腸壁にある免疫の要となる「パイエル板」というリンパ組織に取り込まれます。
パイエル板の中には、樹状細胞、T 細胞、B 細胞など、主要な免疫細胞が集まっており、侵⼊してきたものが生体にとって「敵」と判断した場合、免疫グロブリンA(IgA)という抗体を出してやっつけます。
ちなみに、パイエル板は、「免疫細胞のトレーニングの場」でもあります。
敵か味方かを司令官である若いT細胞が識別の仕方を学んでいく学校のようなものです。T細胞はB細胞の指令を出して、敵をやっつけるための抗体という飛び道具を作らせます。
感染症などで白血球が急増する場合、侵襲に伴うエネルギー代謝の増大により、異化(分解)が亢進し、ビタミンB1(チアミン)が消費も増大します。
また、ビタミンB1が減ると、パイエル板は小さくなり、免疫細胞の数が維持できなくなり、生体の防御機能が弱くなります。
腸管にあるパイエル板のB細胞の一部は、IgA抗体を産生しています。
病原体などの外敵が腸を通ると、パイエル板の免疫細胞が認識して、IgA抗体をつくります。
そのためビタミンB1不足は免疫力の低下により感染症にかかりやすくなる恐れがあります。
つまり、
感染→ビタミンB1を中心とした栄養の需要増→ミトコンドリアにおけるTCA回路の低下によるエネルギー産生の低下→腸の免疫の要であるパイエル板のB細胞が減少→IgA抗体の分泌低下→免疫力の低下
という流れになります。
IgAを作るB細胞は腸管だけでなく、口や鼻などカラダ全体の粘膜に移動してIgAを作り出すため、全身で異物の侵入阻止に大切な役割を果たしています。
Kunisawa, J.,et al(2015). Mode of bioenergetic metabolism during B cell differentiation in the intestine determines the distinct requirement for vitamin B1. Cell reports, 13(1), 122-131.
また、ビタミンB1は、ピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸からアセチルCoAを生成)やαケトグルタル酸脱水素酵素(αケトグルタル酸からスクシニルCoAを生成)の補酵素です。 糖質だけでなく、分枝アミノ酸BCAAの代謝にも大切です!
【どうする食事?】
ビタミンB1といえば、豚肉ですね。 ニンニクや玉ねぎやニラに含まれる「アリシン」は、ビタミンB1の吸収率を大きく上げてくれます。 糖質を摂りすぎたり、お酒の飲み過ぎ、ストレス過多は、ビタミンB1不足につながります。
●まとめ
感染対策、免疫において、糖代謝、エネルギー産生にに大切なビタミンB1を中心として、十分な栄養が大切です。
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「メンタルヘルスは食事から」 日本栄養精神医学研究会 奥平智之 作成
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