初めての家族旅行
家族で一泊二日、スパリゾートハワイアンズへ。
五歳息子にとっては初めての旅行。
自身にとっても在宅酸素生活になって以来の念願成就。
一度諦めたことを取り戻していける幸せよ。
プール初体験の息子は、最初に挑んだスライダーで鼻から水を飲む洗礼。
それでも今日はめげない。「ツーンとするけど楽しい」
休む間も惜しんではしゃぎ回った。
見守り役の私も……流れるプールにて浮き輪に体を通す。
こっそり海パンに履き替えていたのさ。
鼻カニューレをむしり取り、いざ。
サプライズに息子は目を丸くする。「パパ、泳げるの!?」
「無理しないで」と浮き輪を引いてくれる優しき息子。
プールサイドから追っかけ撮影している妻に手を振る。
途中、落ちそうになるのを見た瞬間、なぜか私の鼻の奥にもツーンとくるものが――顔に水をかけてごまかした。
たった一周、されど掛け替えのないひととき。
大小の浮き輪連なり流れけり
(だいしょうのうきわつらなりながれけり)
帰宅前の、最後の露天風呂。
息子が初めて男湯に。
妻は心配したが、着替えも何ももう一人でできる。
パパの真似をしロッカーの鍵を左腕、手ぬぐいを頭にのせチャポン。
だだっ広い露天に、父子二人きりの贅沢時間。
「パパ、大きいね」
――世界最大級の露天だってよ。
「違うよ、ちんこ」
――お、おう。
ドドーン! バリバリバリ!
突然の大音量に「怖い、何?」と息子。
「ステージの音響。大丈夫だよ」としばし膝に抱っこ。
と、係員がきて「落雷がありました。直ちに露天から出てくださいっ!」
二人慌てて湯から飛び出したのも、いい思い出。
遠雷や露天の父子のおちんちん
(えんらいやろてんのふしのおちんちん)
帰りのバス。
「帰りたくないよー」と何度も呟くのはママの方。
息子は「また旅行できるように頑張ろう」
大人の顔を見せることが増えたと実感する二日間。
共に旅行できるのはあとどれくらいだろう。
立ち寄ったサービスエリアの入口に、空の燕の巣があった。
近くに一匹だけ佇む燕がいたが、これは親だろうか子だろうか。
夏つばめ帰路のなごりの休憩所
(なつつばめきろのなごりのきゅうけいじょ)
以上、思い溢れいつもの二倍の800文字&三句、失礼いたしました――
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