新しくって懐かしい
一つずつ包装用ビニールを剥いでいく。
そのたびに立ち上がるプラスティックやらポリエステルの香り。
――新品の文房具の匂いだ。
昂揚感を覚え、さらに嗅ごうと鼻を近づける。
僕はまもなく小学一年生。
不安もあるがワクワクの期待感が勝る。
お勉強はどんなことをするのだろう。
仲の良いお友達はできるだろうか。
はさみ、クレパス、ねんど、道具箱……
一つ一つを手に取ってその使い道を空想した。
「ねえ、聞いてる?」
突然、妻の顔が視界に入ってきて我に返る。
「全体では100人くらい。3クラスに分かれるんだって」
今日は息子の通う小学校の入学説明会であった。
妻が出席し、指定の道具箱等をもらって帰ってきたところ。
広げてるうち、つい自分の時のような錯覚をしてしまった。
クンクン……
「なにやってんの?」
妻が私の不審に気づく。
――ほら。新品だけど懐かしい匂いだよ。
私が「さんすうぼっくす」の蓋を開けて掲げると、妻は鼻を近づけ「化学臭い」と言った。
春めくやさんすうせっとの時計盤
(はるめくやさんすうせっとのとけいばん)
※今の時代でも、変わらずアナログ時計で練習するんですねえ。
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