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『おしゃれの萌芽』

6歳のスコットが通う保育園では、近くスクールパーティもといお店屋さんごっこがあるという。
特に年長組は、この日ばかりのおしゃれが許され、女の子ならメイクやマニキュア、男の子はネクタイにヘアセットをしてきて良い。

「パパ、ワックスないの?」
請われてトムは急遽お店へ。
ワックスなどもう何十年も使っちゃいない。
そもそも自分たちの頃はムースと言った。

帰るとスコットはスーツ姿になっていた。
「当日はこれを着ていくんだ」
五歳の祝いに仕立てた物が既にパツパツ。
その成長ぶりにトムは目を細めた。

「髪も試してみるね」
スコットがワックスをたっぷり掬い取る。
「おいおい、そんなに付けるもんじゃない」
トムは彼の指先を拭い取り手本を見せてやった。

見よう見まねのスコットもやがて思うように手を動かし出す。
かれこれ20分、鏡の前を動かない。前髪の角度を幾度も直して確認する。「イケメンになったかな」
その仕草にまた目を細めるトムであった。


つくしんぼ前髪キメる小さき指

(つくしんぼまえがみきめるちさきゆび)

季語(仲春): 土筆、つくづくし、つくしんぼ、筆の花、土筆野、土筆摘む、土筆和



※日記を小説風に表現しています__🖋
いやあ、自分が初めてムースを使ったのは高校生でしたけどね。時代かなあ。

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