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妻を拝む

雨上がりのベランダに物干しに出る。
雑草にかたつむりを発見。
ぽつり尋ねる。――妻はどこに行ったんだ?

昼時。「仕事が半休になった」とLINEが入っていた。
即レスできず遅れたが「良かったらお昼でも一緒に」と送る。
以来、返事がない。
しばし待てど帰ってくる様子もない。

夕方近く、いよいよ心配になってようやく返信が。
「ずっと気になっていた品川と駒込のお墓に行ってました~」
品川は妻の父方。
駒込は私の母方。
妻は結婚前からお墓参りを欠かさない人で、彼岸に限らず思うことがあると立ち寄ってくる。

私の足が重くなってからは一人でもふらりと。
ありがたいというか。
本人曰く。神社で神頼みするより心が落ち着くんだそう。

「ちょっと降られちゃったー」
保育園お迎え前に、いったん荷物を置きに戻ってきた。
バタバタと着替える妻からお線香の匂い。
「ありがとう」と思わず手を合わせてしまう。
半裸の妻を拝む格好になって「やめてよ」とたしなめられた。


蝸牛帰る妻より御香ほの

(かたつむりかえるつまよりおこうほの)

季語(三夏): 蝸牛、ででむし、でんでんむし、まいまい、かたつぶり


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