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ポップコーンは買わない派です。vol.48

エセルとアーネスト

普通を懸命に生きるってとっても大変なんだなって思う

予告編

あらすじ

激動の20世紀を生きた庶民の歴史を、温かい眼差しで描き出す。1928年、ロンドン。牛乳配達人のアーネストとメイドだったエセルは恋に落ちて結婚し、ウィンブルドンに小さな家を構える。最愛の息子レイモンドの誕生と成長、そして第2次世界大戦の苦難の中にあっても、2人は寄り添い笑い合うことを忘れない。そんな2人にも、やがて静かに老いが忍び寄ってくる。

エセルとアーネストって誰のこと?

初めて目にする方も多いかもしれません。エセルとアーネストとはそれぞれどんな人なのか。

この2人はこの作品の作者であるレイモンド・ブリッグズさんのご両親なんです。

「え、ちょっと待ってさらにレイモンド・ブリッグズって誰なんですか。」

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ブリッグズさんは主にイギリスで活躍されているイラストレーターさんで、児童文学を中心に世に輩出しています。

代表作は、「さむがりやのサンタ」「スノーマン」「風が吹くとき」など。

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本作でもエセルとアーネストの間に誕生した息子として本人の生い立ちが描かれています。

平凡であることは大変

母のエセルはメイドとして働き、父のアーネストは牛乳配達員として働いていいました。そんな2人はひょんなきっかけで恋に落ち、庶民的な生活を過ごしていきます。観ていても実に平凡で、どこにでもいそうな家族像がそこに映し出されていたのです。

もちろん日本人の僕がイギリスの普通を知っている訳でもないですが、アーネストが牛乳配達員として定年まで勤続し続けていたりとか、エセルは専業主婦として家のことをずっと支えていたりとか。この設定をきく限りでは普通、平凡、安定、という言葉がぴったりと当てはまるのではないかと思います。

そんな庶民の彼らはつまりその当時のイギリスの多数派を指している訳です。そして時代とともに移り変わっていく世界情勢や経済、戦争、など自分たちの生活に直接関わってくる様々な事象に巻き込まれながら強く、生きていく姿は全くと言って平凡や普通という言葉で片付けてはいけないと思うのです。

以前、家族を想うときという映画を紹介しました。

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その作品ではこれもまたイギリスの家族が必死に生活していくため労働したり、社会への訴えかけを試みたりするシーンがあったりとそのスクリーンで起こっていることはなんらフィクションじゃなく、事実をベースにした物語で多数派の人間が社会に押し潰されていく様子がまざまざと見せつけらます。

自分の価値を知り、高めるのは意外と自分の近くにあるものだと思うんです。

エセルとアーネストでもその様子は感じ取られると思います。普通に暮らすこと、平凡でいることの大変さ。その大変さの上にたくさんの愛で育て上げられる息子。後に児童文学という世界で多くの人に愛されていく作家を生み出していく訳ですが、その彼がこのような作品を残したことはまさに奇跡。

両親の存在を作品として残すことは自分の存在証明になるだけでなく、多くの人との共感を生み、その人たちの存在の証明にもなるという。。自分の周りにあることを深堀りすることに自分にとって一番大事な何かがあるんじゃないかなって想う訳です。

自分の周り以外の外にでて自分を探すという方もいるかもしれません。それは最終的にそうなるだけで、外から客観的に観たときに色々とわかってくることもたくさんあって結局は自分も生まれたところ、育ててくれた両親に立ち戻ることがアイデンティティの発見に関しては最も大切なことなんじゃないかなってこの作品を観終えて考えたことです。

なんか面倒なことを書いてしまっていることは自覚しているのですが、観てもらいたいです。スクリーンに映っている夫婦はただ子供の成長を楽しみに生きていく、細かい出来事で(記念日や子供の誕生、成長、喧嘩)で起こる感情表現だったりとかがとても共感できるし、心がほっこりとするアニメ映画なのです。

”ほっこり”する映像表現の秘密

ほっこりとするのはこの絵のタッチに注目するとわかりやすのかもしれません。

手書きの温かみをコンピュータの技術を用いて表現している様子が動画でまとまっているのを見つけたのでぜひ参考にご覧ください。

ポール・マッカートニーと作者の意外な関係

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言わずものがなみんな大好きポール・マッカートニー。本作のエンディング曲を書き下ろしています。ポールは実は作者のブリッグズの大ファンらしく、アルバム「McCartneyⅡ」に収録された「Bogey Music」はブリッグズの「いたずらボギーのファンガスくん」に影響された楽曲であることはファンによく知られてた。

監督がブリッグズの許可を得て、ポールに「曲を書くことに興味がないか?」という手紙を出し、ポールがこれを了承し、貴重なオリジナル曲が映画に使われることになったそうです。全く素敵な話だ。

最後に

自分の両親のことを知ることって自分を知ることって言ったもののなかなかできたことじゃないような気がしてて、親の恋愛やどんな人生を歩んできたかってとても気になるけどどうしても少し照れ臭くて、聞きづらいし、答えてくれないような気がしてる。自分の子供ができた時には将来のママになる人との話はしていきたいなって思う。


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