見出し画像

大切な人に病気が発覚。自分にできることは?【仏教で答える悩み相談28】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。
 
今月のお悩み
Q 80代の父に病気が発覚し、病床にいます。人生に悔いのないように日々を過ごしてほしいのですが、息子として父にどんなことができるでしょうか?
(40代・男性)
 

A1 一つずつを積み重ねて

 
 病床におられるとのこと、お父様もご家族様も色々と悩まれている状況かもしれません。健康な時にはあまり考えないことを、病気になって気づくこともありますね。
 
しかし私たちは、たとえどんなに恵まれていても、やはりどこか足りないと思ってしまいがちです。健康な時には体の心配はしないけれども、仕事や家のことが心配で、といったふうにきりがない。「悔いのない人生」というものも、求めすぎてはいつまでもたどり着けないものかもしれません。

 相談者様は、お父様と一緒に過ごす時間を増やし、昔の楽しかった思い出や、自分が有意義に感じている物事など、色々お話される機会を持たれるのはいかがでしょうか。一つずつ積み上げて行く先に、ああよかったなと思える時が来ればいいなと思います。
(築地本願寺コンタクトセンタ―担当・相馬顕子) 

A2 病気がなければしたいことは?

 
 後悔には、「あれをしなければよかった…」と、「あれをしておけばよかった…」があります。できることが限られている状況では、「あれをしておけばよかった…」が増えやすくなります。

 そこで、お父さんに「病気がなければどんなことをしてみたいか」を聞いてみてください。たとえばそれが旅行なら、「病気だから無理」と決めつけるのではなく、「今の状態だと、どんな旅行なら可能か」を探してください(もちろん、医師など専門家との相談は必要ですが)。

 仮にそれで寿命が縮むことになったとしても、暮らしの満足度はむしろ上がります。周囲には「病人にあんなことをさせるとは!」と言う人も出てくるでしょうが、大事なのはお父さんの満足度です。
(編集委員・多田 修)

 A3 大切なのは、安心感や充足感

 風邪をひいたときに、誰かにおかゆを用意してもらったことはありますか? あれはおかゆしか喉を通らない時にはもちろん嬉しかったことですが、おかゆを作ってもらえた、という安心感、心の充足感の方が大きいのではないでしょうか。
 
 おかゆは一例ですが、お父様のことを思っている、お父様のことを気にかけている、もし言葉で言うことに抵抗があっても、態度で示すことによって、お父様はあなたの行為に対して安心感を持ち、さらには優しい息子を育てることができた、と心の充足感も持つことができるのではないでしょうか。
 
 人生に悔いなく日々を過ごせるかどうかは、お父様だけではなく、あなたの問題でもあります。どうかあなた自身も、悔いなく過ごせるようにしてください。
(本願寺新報記者・星 顕雄)


お悩み募集中!
同コーナー上でお坊さんに聞いてみたい相談がある方は、年代、性別を併記の上、築地本願寺新報社「ちょっと、聞いてよ」係(〒104–8435東京都中央区築地3–15–1)まで、お悩みをお送りください。

※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

この記事が参加している募集

最近の学び

これからの家族のかたち