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人はいつから大人になるの?【仏教で答える悩み相談7】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。
皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。

Q あと3カ月で、高校を卒業します。僕自身の中身は何も変わっていないのに、自分がいつの間にか大人になっていくようで、少しさみしいです。子どもは、いつから大人になるんでしょうか。
(10代・男性)

A1 成長は誰しも自分では気づかない

 子どもはいつから大人になるのか。それは見る人、見る場面で感じ方は変わるので、自分が気づかないうちに成長しながら、大人になります。

 私は高校を卒業して10年になります。この相談をもらって改めて「10年経ってしまった」と思うと、確かにさみしい気持ちになりますね……。

「10年で何が変わったかな?」と考えてみました。10年前から身長も体重も変わらないし、好きな食べ物も趣味も変わりません。でも、久しぶりに会う人からは、「大きくなったねぇ~」とか「しっかりするようになったねぇ~」とか、それこそ「大人になったねぇ~」とか。自分では「何も変わってない」「いつの間にか大人になってしまった」と感じるかもしれないけど、自分でも気づかない間に成長しているもんです。

 まずは、今は学校で過ごす時間を、一日一日を、大切に楽しんでください!
(築地本願寺コンタクトセンター担当・井手誠哉)

A2 自立とは、誰かと支え合うこと

 子供から自立した大人になっていかねばならないということに、不安を感じているんだね。今の社会生きていくにはある程度のスキルは必要です。でも大人になるということは家族や社会からの助けなく生きていけるようになることではないと思います。人間はどこまでいってもお互いに助けあうことなしには生きていけません。 

 児童精神科医の佐々木正美さんは「本当に自律している人というのは、うんと迷惑をかけることができる人をたくさん持っていると思います。そして相手から迷惑をかけられていることを、受け入れることができる人だと思います。いつも自律とは相互依存だと申し上げていますが、相互依存を通して自律することが、個の確立につながるのです」と著書で書いておられます。 

 あせらず、step by step。

(西照寺住職・酒井淳昭)

A3  その違和感を忘れないで

 自分は何も変わっていないつもりなのに、よそからの評価が一方的に変わってしまうのは、自分を否定されるような気がして、さみしい気分になりますよね。ところが歳を重ねるうちに、自ずと周囲に迎合して痛みを和らげ、期待された自分像を演じるようになってしまうものなんです。

 大人の世界は、多くの人が本音を隠して平静を装い、互いを傷つけないように暮らしています。それは大事なことなのですが、知らず知らずに抑え込んだ気持ちや、押し殺した感情がはち切れると、暴走した力が他人や自分を傷つけてしまったりもします。

 ところで、それよりももっと恐ろしいのは、偽ることに慣れて、その自分を本当と信じきってしまうこと。放っておいても大人になってしまうのならば、いま抱いているその違和感こそ、いつまでも忘れずにいてください。

(隆照寺住職・小柴隆幸)

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※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。