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写真展UNTITLED2023展示作品「自己愛」紹介・解説

12/4に掲載した記事の続きです。
写真展に展示した四葉、そして設置したブックについてのご紹介と解説です。
併せて私の備忘録。
まだご覧いただいてない方は、前回記事も併せて読むと幸せになります。


全体の構成

今回は四葉を展示しました。
これまで40名ほど撮影をさせていただきましたが、その中でも自分のターニングポイントとなった方を、僭越ながら選んでおります。

〇テーマ「自己愛」

全体のテーマとしては1年3カ月で12本の記事を書いた『表現の自由研究』をもとにしています。
連載でのゴールは「表現を通じて誰かを愛せるか、自分を愛せるか」。
連載を続けたうえで撮られた写真が、果たしてご覧いただいた方に伝わるのか、という挑戦です。

いずれも「この自分を好きになれる」という基準で、役者さんご本人に写真を選んでいただいています。
逆に「役者さんがどんなポイントを見て『この自分がいい』と思ったのか」を考えてもらえるよう、ステートメントを書いています(画像中の左下青いパネル)。

額に関しては今回もっとも反省が多い箇所。
もっとこだわらないと駄目だし、もっとこだわれる。

ただ「黒の額に白のマット」という構成自体は気に入ったので、他の構成も試す課題はあるものの、方向性自体は確かめられたと考えています。

〇展示の方法

前回の記事で「憧れのフォトグラファーさんと同じく、額装で」と触れました。
知識ゼロの状態からでしたが、様々な展示を視察し、額のサイズやマットを選ぶ材料にしています。
展示してみた感想は「大事にしている一葉」な印象が出るなと。

固定方法は釘で。
ピクチャーレールを使っても良かったのですが、どうしても作品以外の視覚的要素が入り込むことが許容できませんでした。
反省点として額の高さをうまいこと調整できなかったことが挙げられるので、次回以降は考慮して図面に起こすなどしたい。

〇プリント

ポートレートの写真展を観覧した際、ブースを構えられていた「ナカイ写真工房」様を利用しました。
ものすごく時間をかけて選んだ訳ではないのですが、実際に手に取って見た質感から「ここでいってみよう」と決めています。

用紙は富士フィルム・プロラスターを選択。
どうしてもマットな質感が欲しかった。
なので額のアクリルパネルも外して展示しています(額を買わなかったのはこれが理由)。
ただプリント自体がほぼ初めてで、いきなりお金かけるのも…となって、比較的お手頃価格でマットさが出せるこちらで。

結果として、自分が意図したような色味が出せたので満足。
特に深緑をシャドウ部分に入れた箇所は、ご覧いただく方々に好評いただけました。
それでも証明を当てると反射するなとも思ったので、もう少し調査を重ねる必要はありそう。

〇その他

役者さんの名前やステートメントは、セブンイレブンのマルチコピー機でプリントした紙をハレパネに貼っています。
思っていた以上に浅葱色が濃く滑らかに出たので「これでいいわ」と。
小さなこだわりとして、ハレパネのエッジ部分は斜めにカットして、ハレパネの存在感を和らげる工夫をしています。

作品紹介

〇蒼じゅんさん「あおいのいろ」

じゅんちゃんの写真を選ぶのは非常に困難を極めました。
直近でスケジュールが合わず撮影が出来ていなかったことに加え、気に入っている作品が多かったことに起因します。

この一葉に関しては、私が見せたい空気や色が出せるもの、という基準が多分に含まれたものになりました。
絶景や豪華なスタジオではなく、街中のふとした一瞬。
都市景観と人物、そして青色。
人物のバックボーンを語りつつ、それでいて好きな色に彩るには、この一葉が適していました

青色という彼女のイメージカラーでありアイデンティティを使いつつ、単に色を見て美しいと思えるよう、私が好きな印象派絵画からのインスピレーションを加えています。
「あおいのいろ」は当時候補を20ほどあげて、助詞の使い方まで考えた末の一文です。
青色とも、あおいの色とも、あの色とも、あおいのとも、微妙なニュアンスに受け取れるように。

一枚絵としても、タイトルと組み合わせても、さまざまな角度から語れる「物語のようなポートレート」が表現できたかなと。

〇武藤彩さん「いろとりどり」

いろさんと言えば「黒」。
私は彼女の黒に一家言、もとい執着にも近いこだわりを持っていて、それは「色のある黒」「決して闇ではない」
…ご本人に語るには色々恥ずかしくて対面ではお伝えしていないですが。

彼女も候補となる写真が多くて迷いましたが、直近の撮影で一番「見てもらうにも気に入っている点でもこれ」と意見が一致したもの。
構図の面でも光のコントロール面でも、雄弁に魅力を語ってくれるように感じています。

何よりもこだわりは光と色。
光と闇は二つで一つ、照らされている箇所もそうでない箇所も美しいことに変わりはありません。
照らされている肌や通路は白色に近く、印象派絵画のインスピレーションから黒は真っ黒ではなく青緑を混ぜて、ぐっと引き込まれるように。
シンプルな構図ながら、「いろとりどり」感じられる一葉に仕上げました。

〇楪亜紀さん「Memories.」

りはさんとの関係は、撮影にとどまらず「恩」が大きいです。
さまざまなタイミングで助けられ、成長の機会をもらい、命の恩人とも思っています。
そんな感謝を、色使いで表現出来たらなというMemories.。

自分の中でのお気に入りが沢山あったのですが、それはブックの方にまとめることにして、最新の写真から一葉を選びました。
彼女の撮影のテーマのひとつ「笑顔」。
笑うと目が細くなってしまうのがコンプレックスと語る彼女に対し、「別に笑ってなくても素敵だ」という私なりのメッセージを込めています。

一番は本人が納得のいく笑顔になれることです。
実際撮影を重ねて追及してきましたし、いい写真も撮れています。
それでも彼女の視線から伝わる芯の強さ、挑発でも誘惑でもない自然な表情、かわいいだけで終わらせない力強さ。
そういった総合的観点で、行間を読んでもらえたらな一葉。

〇知里香澄さん「春」

私にとって知里さんのテーマを語るなら「挑戦」。
ひとえに私が私を変えるために必要なピースであり、ある意味”自己愛”というテーマを語るに欠かせない方です。

彼女とも撮影スケジュールがかみ合わず、それでも納得いく一葉は撮れていたので、Xのアイコンにもご利用いただいているこちらを選んでいただきました。
私のポリシーとして「単にこちらへ笑顔を向けている写真は嫌だ」を(伝えてはいないものの)持っており、どこかシュールな要素を含んだものに仕上げたいとご提案したものです。

声優が本業であって、表に顔を出して活躍することはメインではない彼女。
しかし「この魅力を眠らせておくにはもったいない、世界の損失である」と確信した私は、どうか撮らせてほしいと懇願したのです。
その直感は、果たして合っていました

彼女に興味を持ったという意見を複数聴くことができたのです。

私にとっては思い切って声をかけることへの。
彼女にとっては撮られるという新しいジャンルへの。
そんなお互いの挑戦の「春」。

〇フォトブック「自己愛」

これまで撮影してきたポートレートを一冊にまとめました。
冒頭のページから謝辞を載せたのですが、その中にステートメントを紛れ込ませています。
役者さんたちへの感謝の言葉の傍ら、一人の方に対する手紙、もとい惜別の感情を書きなぐっています。

表紙の一葉は各SNSで何度も利用しているもの。
謝辞の手紙というのは、彼女に宛てたものです。
この一葉から得られる感情や情報、思考といったものを昇華させることが私のテーマであり、テーゼであり、カサブタのように気になり続けるものなので。
もっというと、この展示をきっかけに、この一葉に囚われすぎない新たな一歩を踏み出す、という意味の惜別も込めています。

サブタイトル「写真である意味はないけど、写真だからいい」は、連載『表現の自由研究』全11回を通して出した結論。
絵画や彫刻、動画、刺繍、切り絵など、芸術作品のジャンルは星の数ほどあるのです。
その中で写真に固執する意味というのは実質的にないけど、自分がやりたいという直感に従って撮り続けた軌跡が、見た人に影響を与えうるのか、共感してもらえるのかという思考の結果です。

展示を通して

実を言うと、ここに書いていない実験的な内容も含んで展示しました。
実験的というからには仮説を立てており、結果は仮説を肯定するものとなりました。
これは私のポリシーにも迎合するもので、自信につながっています。
しかしあくまで限定的な状況下での検証であるので、今後もブラッシュアップすること前提ではありますが。

いずれにしても「ただ人を撮って飾るだけ」は面白くない。
コンセプトを煮詰めて表現することが、私の「写真だからいい」なので。

また皆様にお会いできる日を楽しみにしております。
それでは。

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