見出し画像

「自分の一葉と一緒に旅をしているような空間でした」|写真展UNTITLED2023に参加して

去る11月24日から26日の3日間、グループ写真展『UNTITLED 2023』に参加しておりました。
私にとって正式な写真展への初出展と相成りました。

何もかも初めてづくしの中で、数々の失敗と、新たな挑戦に対する熱量やアイデアを得た日々の記録です。
写真に限らずクリエイティブを楽しむ方に、ヒントをご提供できるよう、そして自分の備忘録として書いてみます。

作品の紹介や解説については、後日別途記事を投稿いたしますのでお楽しみに。

この記事が「先週特にスキを集めたアート記事」に選ばれました!


謝辞

主催のMiKuRiAさんに最大限の感謝を申し上げます。
初めての展示参加が本展でよかったと心から思いました。
何も分からないまま多くのご迷惑をお掛けしたにも拘わらず、ご親切にサポートして下さり、そのお力がなければ失敗に終わっていたかもとすら考えてしまいます。
今後ともよろしくお願いいたします。

併せて、一緒に展示を作り上げた参加者の方々へも感謝を。
どなたも素晴らしい写真観と技術、熱量をお持ちで、とても多くの感動と学びを得ることができました。
今後も更なるご活躍をお祈りするとともに、来年さらにパワーアップした皆様と肩を並べられることを楽しみにしております。

またご来場いただきました方々、とくに私の写真に興味を抱いて下さった方へ。
不特定の方に見て頂いて、その上で役者さんの魅力や自分のコンセプトを共有できる機会の楽しさは格別のものでした。
もっと考えを深めて、よりよい鑑賞体験をご提供できるよう精進してまいります。

謝辞の最後に、これまでご縁をいただいた役者の皆様。
私の活動は私一人では成立せず、お一人お一人の「撮られてみよう」という勇気のもとに成り立っています。
皆様の更なるご活躍をお祈りするとともに、今後とも引き続き撮影させていただければと存じます。


写真展全体の感想「自分の一葉と一緒に旅をしているような空間でした」

なぜUNTITLEDを初参加の写真展に選んだのかといえば、ポートレート専門の写真展は”なんか違う”と思っていたから。
一番は賞レースがあること、また他の参加者さんとの空気感に摩擦が出そうと考えました。
実力のあるモデルさんやフォトグラファーさんが評価される土壌は素晴らしいのですが、いかんせん順位や序列を付けられるのが嫌でした。

評価されるのが私だけであれば(メンタルへのダメージはあれど)構わないのです。
しかし私が撮っているのはモデル専業でない方々であって、そんな方を異なる土俵で審査されるのは心外であると考えています。
こころざしを持ってポートレート界で評価されたいと言うのであればその限りではないのですが。

そんなことを考えている折、2022年の初回UNTITLEDを観覧しました。
ノンジャンルで、評価される場でもなく、思想にも共感できる。
風景も人物も動物も並ぶなかで、自分がどう振舞えるか確かめたい。
1年後のここで出してみよう、そう決心できたのは、ひとえに主催のMiKuRiAさんの人柄や実力のおかげと思っております。

いざ展示期間を終えて思うことは「ここでよかった」
1年前に感じたことはパワーアップして実感でき、よい学びと敗北感、なによりこの場でないと関われなかったような方々との交流は、代えがたい財産となりました。
参加者みなさんの熱量や知識、技量は尊敬してやまないものであり、燃え尽き症候群になる暇もなく「次はこうしよう」と思える会でした。

ここで、モデルとして展示させてもらい、来場もしてくださった蒼じゅんさんのお言葉を借りて。
「自分の一葉と一緒に旅をしているような空間でした」
とても誇らしい場に名を連ねられたこと、誇りに思います。

展示は「この写真好きです」を聴ける場

展示をして一番思ったのは、対面で感想を聴けることの嬉しさ。

SNSで投稿していると、壁打ちのような状態で続けている感覚に陥ります。
(ほんとうに自分の写真は誰かに届いているのだろうか…)
(方向性は間違っていないだろうか…)
そんな不安が霧のように視界を遮るのです。

しかしいざ展示して在廊していると、自分の写真に興味をもってくれる人が分かります。
SNSのQRコードを読み取ってくれたり、感想ノートを書いてくれたり。
勇気振り絞ってお声がけして、作品に対して語ってみたり、逆に撮っている写真について聞いてみたり。
生の声で、それも見ず知らずの段階で観た、その場での印象を聴けたことは大変大きい財産になりました。

何より私の話を聴いて、作品に対してより納得してくださる方が(主観ですが)多かった。
特に私の写真は背景に色んな思考を埋め込んでいるので、話せば話すだけ発見できるものだと思って臨んでいます
自分の思考は受け入れて貰えるものなのだ、そう実感できたことは参加してよかったポイントの一つ。

逆に、これまで写真展で解説を聴くことは少なかったのですが、ひとの写真について聞いてみたくもなりました。
どんな思想で撮っているのか、聴いたうえで意見をぶつけてみたいですね。

打ちのめされた感と「自分の写真で足を止めさせる」覚悟

本展では風景写真が大多数を占めていました。
人物写真、かつスナップ寄りで撮っていた私はマイノリティ。
それでいて風景写真の方々は技術や機材での勝負と見受けられ、どなたもハイクオリティ。
圧倒されるばかりでした。

これは想定通り、いやこの感覚を望んでこの場に赴いたのです。
ポートレートという狭いジャンルではなく、ノンジャンルの、それもハイクオリティな作品しか集まらない場において、自分の作品がどう評価されるか試したかったのですから。

実際、会期中は圧倒的なクオリティや知名度を誇る方に打ちのめされた感覚でいっぱいでした。
しかし逆に「この人目当てで来た人の足を、自分の写真で止めてみせる」という反骨心も芽生えてきたのです。
目の肥えた方が集まるわけですから、未知の「役者ポートレート」というジャンルに引き込む絶好のチャンス。

現時点「コンセプトをどう表現するか次第」だと手ごたえ感じています。
今後展示する際には見据えて展示を考えます。

「強みを生かす」ために技術・機材よりもテーマで勝負したい

ここからは個人的な今後の方針について。

出展者さんとお話しして思ったことに、自分は表現がしたい人間だ、ということ。
機材や技術が写真において必要不可欠なことに反論する気はないのですが、そっち方面に関心を向けきれない自分がいるのも確かだったのです。

私にはいくつか武器があります。
写真のほかに、文章はもちろん、文章を書くために美術展に行き、写真史・写真論・美術史・哲学・文学など様々なジャンルの本を読み。
そういった積み重ねは、会場にいた誰にも劣らないと自負しています。
今回は40万字に及ぶ執筆の経験を背景に仕込んでいますし。

今回は様子見、もとい実験的な展示で反応を伺ったので、次回はもっとアートに振った作品展開をしたいと考えています。
より深くコンテクストを練り、ステートメントを煮詰め、どんな課題に対してアプローチを講じたのか、そこで得た感覚は何か、を表現していく。
そしてご覧になった方を意見を交わして、テーマでアピールしてみたいのです。

私が目指すのは「観て何かを得てもらう」こと。
私が各種展示に行って一番重要視しているポイントを、自分が展示する側としてどう提供していけるのか。
「より良い鑑賞体験とはどのようなものか」といった側面からも考えを深めよう、そう考えたのでした。

写真を売りたい

以前から自分の写真を売りたいという希望をもっていました。
しかしもろもろ都合上、販売に至るために超えなければならないハードルが多く、断念をしていたのです。

今回の展示では販売ブースがあり、参加者さんが各々ポストカードやフォトブックを出品されていました。
どれも目移りしてしまうクオリティ。
その中で自分の、もとい役者さんが主役のフォトブックを販売したい。

ポストカードという選択肢はありますが、どうにも”所有されてしまう”感覚に抵抗があって。
そこはこだわってフォトブックで、かつ金額もお手に取ってもらいやすいもので、という難しい課題に挑戦したい。
野望として。

「憧れの方と同じ観せ方をしたい」というこだわり

今回、額装で展示をしていました。
ハレパネやパネル印刷など手法は数ありましたが、どうしても額装が良かったのです。

理由は、憧れであるビーバーさんの展示に感銘を受けたから。
2年連続で訪問させて頂いて、「自分も展示やるなら絶対額装で」と心に決めていたのです。

こだわった結果として大いに失敗を経験しました。
ひとえに知識不足・準備不足ではあるのですが。
その一方で飾った時の印象は「やっぱこれだ」と
額装だからこそ得られた経験値と充実感、そして憧れへと一歩近づけた感覚はひとしおだったのです。

その他にも、周りから見たらどうってことない細かな点で工夫をしていました。
自分の中では大いに収穫がありましたし、数多くの展示を見てきてよかったと報われた瞬間でもありました。

こだわることで悪い面もあります。
しかし「作品づくりをしている以上、自分の感覚を信じることは必要」と思っています。
次回以降の糧としていきます。

最後に - 自分の写真が好きだと思えた

noteの下書きに、こんなメモを残していました。

UNTITLEDに求めたのは、「批評家に依存する美術」の場ではなく
「鑑賞者が自由に解釈するアート」としての写真に臨める場。
「誰かから認められているから素晴らしい」ではなく、
自らの足で立ち、自分で自分を認め、
愛せるようにするための挑戦。
なぜ素晴らしいのかを、私とモデルとで言語・非言語問わず共有し、
「この自分が好きだ」とモデルに言わしめることこそ挑戦する価値がある。
そのための場にしたかった。

果たして、この目的は達成されたように思います。
多くの方に認めて頂いたことは間違いないですし、誇らしいものです。
それを助けにしつつ、上述のこだわりもあわせることで、自分自身の口から自分の写真が好きだと言い切れるようになりました。

なかでも武藤彩さんからいただいた言葉は、今でも大切に覚えています。
展示する写真を選ぶべく相談していた時のこと。

(どれを展示するか)これだけ迷うってことは、それだけいい写真がたくさん撮れてるってことですよ。どうでもよかったら消去法になりますから。

私が積み重ねてきたことは、間違いではなさそうです。
私の写真は、人の心へ届けられるモノがあると思っています。

もらう言葉も書く言葉も宝であり、写真はあなたにとっての宝物であってほしい。
鑑賞者の椅子は被写体さんのためにあり、それでいて共感してくれる人に開かれたものでありたい。

もし次回展示をするなら、タイトルは
「自己愛Vol.2 幸福論、それと『なんかいい』の言語化」
まだ曖昧なので、1年くらいかけて温めます。

またUNTITLED2024の開催が決定しております。
すでに参加希望者多数で抽選の恐れがあるとのことですが、とても経験値になるグループ展です。
奮ってご参加を。

それでは。

こちらもどうぞ


ご覧いただきありがとうございます! サポート頂きましたら、役者さんのコーヒー代、撮影機材への投資、資料購入費として使わせていただきます🙏