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感想文部|毎週ショートショートnote

「へへへ……ボロい商売だな」

薄暗い部屋で、少年達が500円玉をジャラジャラと数えている。

「これでピノが思う存分買えるぞ!」
「雪見だいふくもな!」

――バーン!

「全員動くな! おいコラ! スマホ置け!」

勢いよくドアが開き、男が入って来た。あまりに突然のことで、少年達は口を半開きにしたまま固まっている。

「お前ら。ずいぶんと稼いでるな。バレないとでも思ったか!」

男の正体は東京地検特捜部……いや、教師だ。

ここは感想文部。読書好きが集まって本の感想を言い合う、ごく普通で真っ当な部だ。しかし、実は裏の活動があった。

――読書感想文の販売。

読書感想文が苦手な生徒に、400字詰め原稿用紙3枚分の感想文を500円で売っていたのだ。これが意外と好評で、まさにぼろ儲け。
著作権ごと売っているので、顧客の中にはそのまま読書感想文コンクールに出す生徒もいるくらいだ。

「なぁ、俺にも一枚噛ませろよ」

教師がニヤリと笑う。

つられて生徒達もニヤリと笑った。

「録れたか?」
「バッチリ」

部員の1人がポケットからスマートフォンを取り出す。

――俺にも一枚噛ませろよ。

教師の声が再生された。

「僕ら、推理小説大好きなんで」

【了】(488字)


たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「感想文部」。

なんか前回の「株式会社のおと」と展開が似てますが、まぁ細かいことは気にせずに……。

私は読書感想文、大好きでした。
原稿用紙5枚も6枚も書いて、先生に「長いよ!3枚で良いんだよ」と言われたこともあります。
最高で11枚書いて、さすがに「だから長いって言ってるだろうが!」と怒られましたね。

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