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絶滅危惧種 ~スモーカーの憂鬱~|掌編小説

 ――ようやく撤去されたか。

 コンビニの出入口の横にあった灰皿がなくなっている。私にとって、その灰皿は迷惑以外の何ものでもなかった。
 店内に入る瞬間、タバコの臭いと煙が風に乗って漂ってくると、カッと頭に血が上る。私を不快にさせたであろう絶滅危惧種を睨みつけると、そいつは必ずと言っていいほどバツが悪そうに背中を向けるのだ。

 ――自覚してるなら吸うなよ! クソがっ!

 背中に、いつもそうやって声にならない侮蔑の言葉を浴びせる。

 灰皿が撤去された、ただそれだけで気分が良くなった私は、いつもより多く買い物をしてコンビニを出た。帰り道、公園にある小さな公衆トイレの横を通りかかると、建物の陰に男がたたずんでいる。一瞬、変質者かと思い、足を止めて見てみると、男はふぅーっと宙に向かって煙を吐き出し、前にある円筒形の物体にトントンと灰を落とした。

 ――灰皿か。よく見つけたな……。

 至福の時間を満喫しているであろうその男を見て、ちょっと可笑おかしくなった。

 ――生き残るのに必死か。絶滅危惧種は。

 心の中で、そんなエールにならないセリフを投げかけた。

(了)


私は15年前にタバコをやめました。
と言うより、吸える場所が少なくなり、何よりタバコ代がバカ高くてアホらしくなったので、自然と買わなくなったって感じですね。
牛丼より高いって…。
20年前は230円で買えたのに。
今でもたまに吸いたくなる時がありますが、1箱買っても結局2、3本しか吸わずに捨てることになるので買いません。


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