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半分ろうそく|毎週ショートショートnote

「これが……俺の寿命……」

目の前には、他のろうそくより、明らかに短いろうそくが1本あった。

「ええ、残念ながら」

死神さんが平然と言う。この死神さん、ある日突然ウチにやって来て、こう言った。

「人間界の寿命を管理する部署でシステムエラーが起き、あなたの寿命が半分になってしまいました。お詫びに、ここのろうそくのどれかから半分の長さをもらっていいです」

と。

「本当に、誰のでもいいのか?」
「ええ、もちろん」

俺の中で、すでに決まっていた。

「佐藤……あいつの、俺の上司のをもらう」
「その人、娘さんのお腹に赤ん坊がいますが……」
「知るか」

よく見ると、佐藤のろうそくの横に、まだ火がともっていない、小さなろうそくがあった。

「いや待て。この小さなろうそくをもらおう」
「そうすると、その佐藤という人の孫が生まれませんが……」
「構うもんか。苦しめばいいさ」
「あなた、鬼ですね」
「死神に言われたくねぇよ」

こうして、まだ生まれていない命のろうそくに手を出した俺は、地獄へ落ちた。

(了)


たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「半分ろうそく」です。


先週のお題は「伝書鳩パーティー」でした。
ホロッホー!


テーマ「創作」で「CONGRATULATIONS」を頂きました!

ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!