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日本ダイエット|毎週ショートショートnote

「はぁ……はぁ……」

薄暗い倉庫の中、二十歳前の少年が息を切らせて入って来た。

「どうだった?」
「手に入れた……」

少年は周りを気にしながら紙袋を開けると……カップラーメンが2つ。

「やった……!」
「実は、これだけじゃないんだ……」
「こ……これは!? ポテトチップス!」

言わずと知れたキング・オブ・ジャンクの代名詞、ポテトチップス。

20××年。日本政府は「1億総健康社会」の実現に向け、政府が国民の健康を厳しく管理する方針を打ち出した。カップラーメンやポテトチップスは国の許可を得ないと食べられない。ましてやタバコや酒なんて、今やフグ並の高級品だ。

「早くお湯沸かせ!」
「慌てるなって!」

――バーン!!

倉庫のドアが勢いよく開き、黒スーツの男が入って来た。

「だ……誰だ!?」
「残念だったな。バレないとでも思ったのか?」
「まさか……健康警察!?」

恐怖のあまり、固まる2人。

「カップラーメンにポテトチップスか。刑期は4年ってところだな」

少年2人は観念してうなだれた。

「だが、見逃してやらんこともない」

男は胸ポケットからあるものを取り出す。

「それは……カップラーメンの……カレー味!」
「なぁ? 最高だろう? ほしけりゃ他の奴らの居場所を教えろ」

「え……?」

少年2人は顔を見合わせる。

「いいのか? お前らこのままだと健康刑務所行きだぞ? 毎朝6時に起きて、ラジオ体操第2まできっちりやって、毎日栄養バランスが完璧な料理と、農家さんが手間暇かけて育てた無農薬野菜ばかりで、頭も心も体も健康的な生活を強いられるんだぞ?」

「い……嫌ですぅ! 不健康でジャンキーな生活万歳ですぅ……」

2人はスマートフォンに記録されている友人や職場の同僚、上司などの個人情報を全て渡した。

「ありがとよ」

男はポンとカップラーメンカレー味を置いた。

安堵する2人に、男が言い放つ。

「あ、お前ら個人情報保護法違反で逮捕されるから」

【了】(780字)


『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』


たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「日本ダイエット」。

まさかまさかの5週連続「バーン」です!
もうここまで来たら、自分の中で「やらないと!」と使命感すら抱いております。

いつもはギリギリなんですが、今日はお題が発表されてすぐに書けました。
一番乗りを狙っていたら、すでに書いている人が……早い。

しかしまぁ、冗談抜きで、皆さん健康には気を付けましょう!

ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!