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理由のない雪

小説や映画などの物語では、理由のないときに雨が降らない。

それに気付いたのは確か中学生のころ。漫画『グッドモーニングコール』の作中で、雨に降られた日に美容師さんにばったり会う、という一コマだった。

物語で雨が降るのは、何かの伏線でしかない。好きな人に傘を貸したり、男女が一夜を共にするきっかけになったり、犯行の証拠が失われたり……何かしら物語のターニングポイントか、ロケなのに雨が止まずどうしようもなかったとき。基本は何も降らない。通学用の自転車に必ず傘を装備している、雨や雪も高確率で降ってくる地方で育ったわたしはそれに気付いたとき驚いた。そして抱いた、晴れがデフォルトの世界線への憧れ。

今日の東京は、昼ころからぼた雪が降ってきた。すでに積もってきて、夜にはもう少し細かい雪に変わるんだろうか。交通機関の乱れに注意とニュースでも言っている。

この雪にも、降る理由があるのかな。身を寄せ合うカップル、空を見上げる仕事中の人、ヒールの靴を選んで後悔するOL、慣れない雪道に戸惑うドライバー、電車が遅れて家に帰れない学生、温かいごはんを囲む家族。どんな人にもそれぞれのドラマはあるはずだから。

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