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僕と彼女の宇宙旅行【連載小説#23】

#23 彼方からの使者

 僕たちは言われた通り、鍵を火に当てることにした。

「やるよ。終わったら…ここから出られるようにしてくれるんだろうね。」
「…そうだね。望み通り道を作ってあげる。」

 変な言い回しだな、と感じた。
 それに、一切信用はしていない。
 それでもやるしかない。

 そう決心し、レイニーと共に鍵を握り、徐々に火に近づけていった。
 炎は相変わらず煌々と燃え続けていて、鍵を赤く熱し始めた。

 レイニーを見ると、少し顔が強張っていた。手を火に近づけているんだから当然だ。直接火に当てられているわけでもないのに、指先はかなり熱くなっているし、このままでは鍵も溶け始めるはずだ。
 二人は、それでも鍵を火に当て続けた。

「さぁ、何が起こるんだい。早く。早く見せておくれ。」

 紫の魔女は、高揚を抑えられなくなっていた。狭い部屋を歩いていて、ばたばたと落ち着かない。

「あついわね…。」
「さすがにあついな。…あれ?」

 指先の熱さに、そろそろ耐えきれないなと感じていたちょうどその時だった。

『君たち。』

 誰かが僕に語り掛けていた。

「え?誰?」
『君たちが”彼方からの使者”なんですね。』
「え?ええ?何?使者?」

 レイニーを見ると、どうやら同じ声が聴こえているようだった。

「マークにも聴こえてるのね。誰かが、私たちに語り掛けてる。」
「あなたたち、何かあったのかい。もしかして、、、!」

 紫の魔女は、僕たちを掻き分けて蝋燭の火を確認した。
 しかし、何も起きていない。

「なんだ。まだ何も起きてないじゃないか。」

 またその場から、廊下の方へ戻って行った。
 どうやら、声は僕たちにしか聴こえないらしい。

「レイニー、続けよう。」

 再び、鍵を火に当てた。

『あなたたちは”彼方からの使者”ですね。とても遠くから、ここまで来たのでしょう。私を助けに来てくれてありがとう。』
「はい。誰かはわかりませんが、助けられたのなら幸いです。」

『あと少しで、この呪縛から解き放たれます。もう少し。』
「助けられたら、どうなるの?」
『それは、あなたたちを…』

 そこまで言うと、僕たちは今まで見た事のないような光が部屋全体を包み込まれた。

「きゃ!まぶしい!」
「目が開けてられないな。何が起きた!!!」
「あなたたち遂にやったのね!!!よくやった!!さあ、伝説の”魔石”よ、この私に力を与えなさい!!!」

 目が開けてられない程に輝いている中で、魔女が横を通っていく気配を感じた。
 そして、僕たちは何かの圧力で吹き飛ばされた。

「いたい…。なんだよ…。」
「マーク、大丈夫?」
「あぁ、何があったんだ...。」

 部屋には煙が充満していたが、少しずつ晴れて行った。
 そこには、さっきまでいた紫の魔女はもういなくなっていて、蝋燭の火も消えてしまっていた。

つづく

T-Akagi

【 つづきはこちら(note内ページです) 】


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