僕と彼女の宇宙旅行【連載小説#25】
#25 地上への扉
「待てええぇぇぇ!ここからは一人も出す気はない!」
紫の魔女が、目の前に現れた。魔女は宙に浮いていて、確かに只者ではないのが一目でわかる。
「マーク!マーク!!」
紫の魔女の力なのだろうか。僕がいる廊下は、地上への扉からどんどん離れていく。押し戻されているのだろう。
徐々にレイニーからも離れていく。
「レイニー!行くんだ!!地上へは真っ直ぐ上がれ!分かれ道は全て上だ!」
「マーク!置いていけない!」
「だめだ!行け!地上へ!お願いだ!!」
二人は再び離れ離れになってしまうのか。
もう、ここから飛んでも届かないだろう。
レイニーは、決断を迫られた。
マークは、危険を省みず助けに来てくれた。
このまま、逃げていいのか。
「マーク!」
「なんだい?」
「待ってて!」
「え?!」
「今度はあなたを助ける番。必ず助けに来るから!」
そういうとレイニーは、地上に向けて駆け出した。
ごつごつした岩の洞窟を駆け上がる。光など見えるはずもないが、そこに光を見出だす他なかった。
マークは、地上に上がっていくレイニーをかろうじて見届ける事が出来た。
その場に座り込み、さて今からどうするかと思案を巡らしてみたが思い付くはずもなかった。
その間、紫の魔女は何かに気を引かれているようだった。
マークは、もう1つの光と再びぶつかり合っているのを見ているしかなかった。
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レイニーは、つまずきながら駆け上がっていた。
いくつもの分岐を真っ直ぐに上がって20分ほどが経っただろうか。
遂に、地上に這い出した。
辺りは真っ暗で、見上げると森の木々の隙間から星空がチラチラと見える。
夜だった。
ちょうど正面の左側に小屋が見てとれた。
周りは池で囲まれている。ぐるっと歩いてみると、見慣れたバッグが落ちているのを見つけた。
「これ、マークの…。」
マークが池を渡って小屋から地下に潜る時に、置きっぱなしにしていたバッグだった。
この小屋が、地下への入口なのだとわかった。
池を渡って小屋に入ろうか迷っていた。
しかし 次の瞬間、背筋の凍るような動物の鳴き声が聴こえて来た。
『グァガォオオオ』
驚きのあまり飛び上がってしまった。
猛獣だ。猛獣に違いない。
ライオン?虎?どちらにしても、命の危機を感じた。
姿が見えたら、すぐにでも池に飛び込んで小屋にむかおうと腹を括った。
しかし、結果として池に飛び込む事はなかった。
「あぁ、ごめんごめん。大丈夫だよ。こいつはおいらの相棒だから。」
森の陰から虎と共に現れたのは、少年が現れた。
「あら、君は。」
「あ、この前の姉ちゃん!?って事は…。」
つい先日、出会った少年だった。
その少年は、宇宙船から降りた後、下山できずにいた私に道が
そして、少年は何かを知っている様子だった。
「姉ちゃん助かったんだな。マークが助けに来たのか?」
「うん。でもね、マークだけ逃げ遅れたの。」
「え!もしかして、森の魔女に捕まったのか?!」
「今、捕まってるかどうかわからない。はぐれちゃった。あの穴から出てきたんだけど、ずっと奥の部屋に扉があって、その向こうに…。」
「そっか。ってことは、もう何分も前ってことだよな。」
「そう。必死で上がって助けてくれる人探そうと思って。」
少年は思案を巡らせている様子だった。この星の事はよく知っているはずだ。どうにかマークを助けられる方法を思いつくかもしれない。
「ちょっと待って。おーい!レイト!こっちこっち。」
気づかなかったが、少し離れたところにヒゲの男が立っていた。ヒゲの男は、レイトというらしい。
「マークがこの洞窟の奥にいる。だけど、森の魔女が一緒にいる可能性が高いと思う。どうする。」
「森の魔女か。会ったら最期と言われている噂の人物か。…君は。」
「私レイニーって言います。マークの、その、ガールフレンドです。」
「そうか。君が。」
「え、マークの事知ってるんですか。」
「あぁ、昨日、牢獄で出会ってね。マーク君は今朝まで僕の家にいたんだ。とにかく、マーク君を助けに行こう。どうにかするしかない。今助けなければ、二度と会えなくなるかもしれない。」
レイトは物騒な事を言い始めた。しかし、それも嘘には聞こえない。何せ魔女まで現れたわけだから。
「レイニーさん、ここで待っていてください。」
「行きます。」
「ダメだ。危険だ。」
「行かせてください。」
レイトと虎と少年は、真剣な面持ちでレイニーを見ていた。
「わかった。その代わり、少しでも危険だと思ったら逃げるんだ。」
「わかりました。」
「じゃあ、行こう。」
三人のヒトと虎が洞窟に入った。