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僕と彼女の宇宙旅行【連載小説#21】

#21 二人の鍵

 紫色の女が消え、再び静寂が訪れた。

「とはいえ、まずこの扉をどうにかしないと…。」

 その後も、鍵をどうにかして挿し込もうとしたがうまくは行かなかった。

「マーク…。もう無理だよー。何でわたしたちがこんな目に…。」
「もうちょっと待って。がんばってるから。」

 鍵穴から向こう側を除いたり、何度も鍵穴に当ててみたりした。

 もう諦めかけていた。
 精一杯前向きに、レイニーにも見栄を張っていたが、ダメなのかもしれないな、と思い始めた。
 しかし、諦めるわけにはいかない。

「ねぇ。ちょっと休みなよ。」

 レイニーがそう言って、鍵穴に挿し込もうとしていた手を握って来た。

「な、なんだこれ!!?」
「まぶしい!!!」

 鍵穴にあてがった鍵が光を放ち始めた。

「うわっ!」

 眩しすぎて、鍵を手放してしまった。

「何なの?!いきなり光ったよ!」

 扉の前に落ちている鍵をまじまじと見つめる。さっきの光が嘘みたいだ。
 鍵を再び拾い、レイニーを見つめる。

「これって…。」
「うん。多分そう。」

 そう言うと、鍵を握っているマークの手をレイニーが握った。

「よし、せーの!」

 鍵穴に鍵を当てると、さっきと同様に直視できないほど光を放った。
 そして、二人で握った鍵を鍵穴に挿し込んだ。

「いけたよ!」
「よし、扉を開けよう!!」
「「せーの!!」」

 そして、鍵を回した。

 カチャッという音とともに、扉の鍵が開いた。
 すると、キィーという音と共に扉が開き始めた。

「勝手に開いたわね。」
「何があるんだろうね。」
「あ、向こうに明かり見えない?」

 レイニーが指差した先には、ほんの少しだけ明かりが見えた。
 近寄っていくとそれが何の光であるかがわかった。
 光の源は蝋燭の火だった。

「え、、、ここって確かずっと扉閉まりっぱなしだったんだよね…。」
「そのはずだけど…。」

 しかし、この扉は何百年も開いていないと言っていた。中に誰かいるのか、この奥に実は外に通じる道があるのか、そうでもなければ蠟燭に火が点いているはずがなかった。

「あなたたち、どうやって開けたの?」

 後ろから声を掛けたのは、やはり紫色の女だった。

「そんなのどうだっていいんだ。何で蝋燭の火が点いてる。ここには誰か人がいるのか。」

 マークは強めの口調で質問をした。すると、紫色の女は少しの間の後に話し始めた。

「この扉の中は、私がここに来る前から閉ざされていた。ここには、無限の力が宿ると言われている【とある石】が置いてあるという伝承があるんだよ。でも、扉を開くことが出来なかったんだ。鍵はあるのにね。」

 確かに鍵はこれで合っていた。実際、森の小屋には置いていたから、紫いろの女が鍵の存在を知っていたのは周知の事だ。
 なのに、なぜ鍵を使わなかったのか。理由はすぐに語られた。

「この鍵を触れないんだよ、私は。」
「なぜですか。自らの力で開けれなかったんですか。」
「開けられないんじゃないよ。鍵に触れる事さえ出来ないんだ。」

 触れる事が出来ない。それを聞いて、今までの想像できる理由はそれほど多くない。

「まさか、あなたは...。」
「そうさ。私は、魔女なんだよ。」

 森の魔女は、目の前にいたのだった。

つづく

T-Akagi

【 つづきはこちら(noteページ内です) 】


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