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「俳優虎の巻」〜演じるとは?〜

人は日常で演じています。
俳優は舞台で演じています。
演技とは何でしょうか?

私が考えるのは
「何者かになる」ことではないです。
「何者かになりきること」でもないです。
「ある行動を起こしている」状態です。

役が最高の状態とはどんな状態?

役が最高の状態とはどんな状態ですか?

それは「役自身がそこに存在すること」です。
何も考えることなく、発した言葉が役の台詞になっている状態です。

俳優の意識的に働かせた言葉と、役自身が発した言葉では、明らかに違い、どんな人でもそれが分かります。そのため、俳優自身が違和感を持って演じている状態は、役が言葉を発している状態と言えません。

この違和感を削っていく作業が、稽古で必要となります。

役の失敗パターン

台詞を覚えるために、強引に覚えようとする人がいますがやめた方がいいです
 ※ 覚えては駄目だと言うことではないです。

強引に頭に叩き込むと、自分に生じている違和感に鈍感になり、違和感自体を無視するようになります。それを繰り返していくと、最終的に、違和感が分からなくなります。

台本に書かれている内容で、違和感なく、丁寧に繋げていく必要があります。場合は、この物語の中で、役が一本通しているものは何かを、見つけ出す必要があります。

どうしてもつながらない場合は、この物語の中で、役が一本通しているものは何かを、見つけ出す必要があります。

役が物語で一本通しているもの

役は、大なり小なり、物語全体を通して、必ず“役の信念”を一本持っています。
役作りの背骨ともいうべき、この信念を発見できれば、違和感なくつなげていくことが容易になります。

この信念は、俳優によって色々な言い方をされています。「役のこだわり」、「役のへそ」、「役自身の幸せ」など、俳優は自分にしっくりくる言葉を使っているようです。

物語が描いているもの

この信念を発見するためには、物語の構造を理解することが助けとなります。

物語は、非日常を描いています。

日常を描いているような作品でも、役の人生において、
重要な出来事や出会いが描かれており、その前後で、
役自身の仕事や人間関係、恋愛の変化を描いています。

この変化の中で、役の信念はゆるぎなく一本通されています。
この一本通された信念は、受身なことではなく、役自身が能動的で、自主的に行動を起こす内容となります。

有名な「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主役のマーティで考えると、マーティは、“人に自分を認めてもらい、自分を確立したい”という信念を持っています。

信念を成就させるには、これまでの“自分が自分のために何かする”のではなく、“人のために何かする”ことでハッピーエンドになることを、未来でテロリストに撃たれる運命のエメット・ブラウンに手紙を渡そうとしたり、両親をくっつけようとしたりすることで発見します。

役作りのイメージ

役を作っていく過程を、穴掘りのイメージで新人の子に伝えたことがあります。

ずっと真下に掘っていくと、掘り切った先に役が存在する。
その場所を掘り当てるためには、まずどこを掘るか調査が必要となります。
調査の手がかりは、台本の内容からです。

調査を終え掘り始めると、順調に掘り進んでいたけど、硬い岩盤にぶつかることがあります。

これが違和感です。

この違和感を避けて進めれば、真下に掘れず、あらぬ方向へと掘り進むことになり、役から大きく外れていきます。

また、一発で当たればいいのですが、掘る場所自体が間違っていて、そこに役として存在するという金鉱がないことがあり、調査して掘り直すということがあります。

トライ&エラーを繰り返し、硬い岩盤を砕いたり、掘る場所を変えたり、試行錯誤を繰り返すことで、ようやく役まで掘り進め、役として存在することができるようになります。

何度も掘る作業が稽古になり、稽古場だけでなく、自主稽古で研鑽を積むことで
得られる境地です。

台詞100遍とはよくいったもので、一つの同じセリフを100回言うことで、
人によってはそれよりもっと言うことで、掘り当てられます。

俳優の腕の見せ所

この一本通された信念を軸に、どのように肉付けしていくかが、俳優の一番個性がきらめくところとはるので、どれだけ早く役の信念を一本通し、これを軸に、肉付け作業ができるかが、俳優の腕の見せ所です。

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