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海外タンゴデビュー@バルセロナ

私とペアダンスの歴史

舞踏会で踊り明かすために、ほんの少し習った社交ダンスをきっかけに、私のペアダンスの歴史は幕を開けた(その熱は、舞踏会が終わった途端に冷めてしまったけれど……)。

学生時代、友人が習っていた、サルサやアルゼンチンタンゴ。
「一緒に行こうよ!」
と何度か誘われたものの、当時は仲間達と好き勝手にハウスやテクノ音楽が流れるクラブで踊り明かしている方が楽しくて、始めようとは思わなかった。

しかし、大学を卒業した途端に環境が変わり、家で家事ばかりの日々を過ごすようになると、すぐに音楽に合わせて身体を動かしたくなった。
主婦という身で夜な夜なクラブで踊り明かすことはさすがに出来なかったから、お昼にもクラスのあったサルサやアルゼンチンタンゴの世界に足を踏み入れた。

幸い、当時の夫は拒否する所か一緒にそれらを習い始めてくれ、今でもどちらも、本当に良い思い出だ。

その後間もなく、環境は音を立てて崩れて行き、その上すぐにコロナパンデミックも起こり、明るくリズムが一定しているサルサの音楽は、私の感情と一致しなくなってしまった。
対して悲しみ、喜び、憂い、輝き……光も影も感じさせてくれるタンゴは、私の心の傷に寄り添い続けてくれ、素晴らしい恩人の絶大な協力のおかげもあり、続けることが出来た。

その間にキゾンバも始め出したものの、気分がわかず続かなくなる時があった中、タンゴは恩人と素晴らしい先生のおかげで細々とでも続いていった。

今回のバルセロナは、そんなアルゼンチンタンゴと不思議なご縁を頂いている私の、海外ミロンガデビューの舞台だった。

海外タンゴデビューは、バルセロナ

ズークフェスティバルが終わった同日、早速バルセロナ市内にて「レベルが高い」と評されているミロンガ(パーティー)があった。

この記事の通り、ずっと我を忘れ踊り明かしていたから足がビックリしたのか、日曜のプールパーティーでで靴ずれしてしまった。
それでもフルで踊って観光している内に、月曜日には靴ずれした所が化膿してきた。
歩いていても痛く、時々、靴を履けない所まで辛くなってしまった...…

「うわっ、だいぶ痛々しそうだね……タンゴパーティー、本当に行って大丈夫?」
バンドエイドをくれた心優しいランバダズークダンサー、Aさんが、私の小指を見て心配そうにそう言ってくれた。
「サンダルを履くのも実は痛いんだけど……今日のミロンガ、すごく雰囲気が良さそうだし、バンドエイドで痛みが分からない位縛りつけてみる!」

「そこまでする?」
という声が聞こえて来そうだが、ここはバルセロナ。
細々でも、始めてから唯一、ずっと続けて来たダンスーアルゼンチンタンゴを踊らずして、帰るわけにはいかなかった。
世界中の人と、国境を越えてタンゴを踊り明かすという目標を達成しないと、自分自身が満足できないのが、燃えるような魂から理解出来た。

心優しい友人Oさんが会場の目の前まで車で送ってくれ、これで一旦お別れになるAさんやTさんとハグをし合いお礼を言った後、私はやはり感じる痛みと戦いながら、会場の中へと入った。

La Sagrada Milonga

サグラダ・ファミリアを感じながら

なんと会場は、サグラダ・ファミリアのすぐ近くだった!

このイベント「La Sagrada Milonga」は、素晴らしいタンゴ記事を次々と残しているタンゴダンサー、Aさんに教えてもらった。
来ている人は、私のような旅人も多かった。
ここでは、地元バルセロナの人はもちろん、サラゴサから来ているスペイン人、フランス人、イギリス人と出会い、踊ることが出来た。

レベルの高さ

⭐️フォロワー(女性が多い)

足首で見事に気持ちや音楽を表現している女性が、多かった。

老齢の女性も何とも言えない味を出していたが、中年位の女性の柔らかい膝や足先を芸術品のように自由自在に操っている姿に、特に魅せられた。
私自身の才能の問題が一番だとは思うけれど、数年細々やって来たものの、彼女達とは大人と子供程の差があると痛感させられた。
更に年数を重ね、私自身が中年になる頃には、こういう足の使い方が出来ていたら嬉しいものだけれど……。
足首に入れられているタトゥーや足のアクセサリーも、タンゴにピッタリだと感じた。

⭐️リーダー(男性が多い)

踊った男性達も、旅人含め全員が経験者だった。
木曜の方が勢いや楽しさを表現しているリーダーさんがいて、月曜のこちらは、より静寂やこのバルセロナという街の影のある歴史を感じ、踊っているリーダーさんが多かったように思う。サフォンの小説を読んだものとして、少しでも彼らの気持ちに寄り添ったフォローが出来ていたらいいなと思う。

褒め上手なリーダーさん達

皆お世辞が上手なのか、踊り終わった後も
「踊っていて気持ち良かった」
「明日このミロンガがあって、そこでも踊りたい」
「初めて踊った日本人が君で嬉しい」
など、とにかく喜ばせてくれる言葉をどんどん浴びせてくれた。

こうやってスペインの女王達は育てられていくのだと感じた。
この日はスペインに滞在して数日だったが、私も徐々に女王気分が増して来たような気がした!

Milonga Casa Valencia

靴ずれ上がりにも負けず

月曜日のミロンガを終えて帰る頃には、足を引きずらないと歩けなくなっていた。
「ミロンガでは奇跡的に踊れて、嬉しいお褒めの言葉までもらえたのに……」
何をしても、痛い。

無理やりタンゴシューズを履こうとすると見事に小指と当たり、化膿で膨らんで来た小指の上から、もはやタンゴシューズを履くことが出来なくなってしまった。
こんな状況で、泣き泣き火曜と水曜のミロンガは断念……。
友人達の誘いに乗りカラオケで気分を晴らせたから、感謝そのものだった。

2日間の休みを経て、化膿からの膨らみはやっと治って来た。
「なんて良いタイミング!木曜日はかなり大きいミロンガがあるってAさん、書いておられたはず!」

こうして、靴ずれ上がりながら私はギリギリ、もう一つのミロンガに行くことが叶ったのだった!

嬉しいレッスンつき

月曜日のイベントはミロンガ(パーティー)飲みだったが、木曜日の「Milonga casa Valencia」は20:00〜と21:00〜にレッスンがあり、1コマ12ユーロで受けられる。

Erven David Samaniego 先生のレッスンは、クロスをする時の2つの方法(ひねる、方向を変える)について音楽もふんだんにかけながら実践的に指導下さり、こういうレッスンを受けながらもsocialで踊ってるような気持ちになれるの、ズークフェスのWSと通じる所があって楽しかった。
いつも恩人ルシウス様やShinji Ponja Ii 先生、Natsune Sugano 先生に細かい所まで見て頂いてるからか、何度も
「ムイビエン!!」
と先生や、組んだリーダーさんに言ってもらえて、素直に喜んでしまった!

照明も美しい、ムード満点のミロンガ

このミロンガではアルゼンチンのリーダーさん達とも出会うことが出来た。
アルゼンチン人は、同じスペイン語で仕事やしやすいからと結構スペインに出稼ぎ?に来ているようだが、タンゴだけでなく、ワルツやミロンガで踊ってもらっているタンダの間、曲が終わる度に
「エイサー(発音違う?!)!!」
「ムイビエン!」
と笑顔でハグをしてくれて……こんな瞬間は達成感が半端なかった!


レッスンで仲良くなった同世代のドイツ/ロシアの女の子とイスに座って盛り上がっていると、これまた同世代のアルゼンチンの男の子が
「隣、座っていい?」
と声をかけてくれる。

こういうフレンドリーな雰囲気が嬉しかった。
私が住んでいる地方のミロンガもとてもウェルカムな雰囲気だけれど、ここもそれに通じるものがあった。
くじ引きが実施されるのは、Aさんが記事に書いて下さっていたから知っていた。
「はるばる日本から来てラッキー続きだから、当たっちゃうかも?!」
ドイツちゃんとアルゼンチン君とワクワクして番号を待ったが、私達3人は誰も当選せず。
残念!

レベルの高さ

⭐️フォロワー

月曜と同じ足首を芸術品のように操る女王がこの会場にもいて、ドイツちゃんとアルゼンチン君と盛り上がりながら、この日も彼女の足先をじ〜っと見つめる。

「こんな中年女性を目指せたら……」
と、将来の目標が出来る。
ただ、そもそも持っている才能自体が違う気もする……。

この女王以外も素晴らしい足の表現をしている人をちらほら見かけた。
ただ月曜日に比べると、ノリで踊っている私のようなダンサーの割合も高く、芸術品級の足首を持つ女性ばかりという訳ではなかった。

⭐️リーダー

明るいタンゴを踊る人が多かった!
ステージのような勢いで踊るラテンみなぎるリーダーさん、ずっとカンツォーネ風に歌い続けてワルツを踊るリーダーさん、などなど……。
私が明るいオーラを発してるのか、明るい人が引き寄せられただけなのかもしれないけど。
確かに月曜日はステップを踏む度に小指が痛んだタンダもあって、そういうタンダでは少し気分が落ち込んでいたが、木曜はやっと靴ずれも負傷上がりで治って来て、気分が上がって来ていた。
気分に寄って誘ってくれるリーダーさんの種類が変わったのも、面白かった。

より深い思い出は、フェスティバルで?!

一晩という短い間で、先生や世界のダンサーと仲良くなりS N Sも交換して、今もコンタクトを取り合えているのは、本当に嬉しいことだと思う。

ドイツにもスペインにもフランスにも、彼らを訪ねて必ず行ってみたい!

ただ私の場合、このミロンガの前後にズークフェスティバルやキゾンバフェスティバルを経験した。
それぞれの3日間で深まった絆、深まった踊り、深まったドラマがかなり濃厚で深いものだったからか、タンゴの2つのミロンガで踊ったり楽しく話をした経験は、その2種類のメインディッシュに囲まれ、楽しい口直しとなった気がする。

ズークフェスティバル中に仲良くなったフランス人のように、タンゴでもフェスティバルにも参加すれば良かったなというのが、今回の唯一心残りの点かもしれない。

タンゴには、ミロンガ(パーティー)だけが連日行われる「タンゴマラソン」というものも、他のペアダンスと同じように、一日中レッスンもパーティーも行われる「フェスティバル」というものも、存在する。

レッスンも大好きな私は、やはりフェスティバルがいいかな、と思う。
そんなことにも気付かせてくれた、バルセロナでのタンゴデビューだった。

恩人、先生をはじめ、このバルセロナ行きに向けてたくさん応援してくれた、タンゴ、そしてペアダンスの仲間達に、心から感謝したいと思う。

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