夢見

いち宝塚ファンの問わず語り。忘れたくない思いをここに。

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記事一覧

ドリームチェイサーみたいな月が出ている

細くて白い月がまぶしい夜、「ドリームチェイサーみたいな月が出ている」と思う。 三日月が出ている、と思うより先にその名前が浮かぶ。我ながら厄介なオタクだな、と思う…

夢見
7か月前

Amazing, あるいはwater

最近、心が強く音楽を欲していると感じることがよくあって、オフィスの玄関を出た瞬間に、鞄の中から手探りでイヤホンを引っ張り出して、急かされるようにスマホの画面をス…

夢見
1年前
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薫る風、桜の嵐

咲き狂え、と、あの人は歌った。 花狂い咲きという言葉がある。本来咲くべき季節から外れて花が咲くことだという。 まだ白く冷たい空気に、ひとつの花が狂い咲くのを思い…

夢見
1年前
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二人の言葉に同じ時が流れる(桜嵐記)

2021年の宝塚歌劇月組公演「桜嵐記」を忘れる日など来ないと思うけれど、とりわけ忘れえぬ瞬間がある。 弁内侍が、自らの辛い記憶を、楠木正行に告白する場面。 内侍は、…

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2年前
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桜が栞になるとき ~宝塚ファン人生、一回目。

月が綺麗 月はいつだって綺麗なものですが、なぜだか、月の光のさやけさがとびきり胸にしみることがあります。私が彼女を「私のただ一人の贔屓」と気が付いたときは、ちょ…

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2年前
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愛しみのワルツ(珠城りょう&美園さくら)

宝塚歌劇を見ていると、愛という感情について考えることが頻繁にある。生徒さんもよく「愛に満ちた世界」だと言う。大きな感情。言葉にならない思いを包摂する概念。そんな…

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3年前
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トップコンビを愛す(珠城りょう&美園さくら)

今年の夏、私が愛してやまない二人のタカラジェンヌが、宝塚歌劇団を卒業した。月組トップスターを務めた珠城りょうさんと、その相手役・トップ娘役を務めた美園さくらさん…

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3年前
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ドリームチェイサーみたいな月が出ている

細くて白い月がまぶしい夜、「ドリームチェイサーみたいな月が出ている」と思う。

三日月が出ている、と思うより先にその名前が浮かぶ。我ながら厄介なオタクだな、と思う。

「ピガール狂騒曲みたいな絵」とか、「さくらちゃんが着ていたドレスみたいな青色」とか、「桜嵐記みたいなお雛さま」だとか。大好きで何度も見ていた公演だから、今や、日常の感性としっかり結びついてしまった。

ドリームチェイサーみたいな月を

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Amazing, あるいはwater

最近、心が強く音楽を欲していると感じることがよくあって、オフィスの玄関を出た瞬間に、鞄の中から手探りでイヤホンを引っ張り出して、急かされるようにスマホの画面をスクロールして、決まった一曲をさがしあてる。そんな日が続いている。

二年前、珠城さんが男役時代にリリースしたそのカバー曲は、当時の私にある衝撃を与えた。

「どうかしてなきゃ やってらんねえな」

そんな歌詞が、私には新しく響いた。

とい

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薫る風、桜の嵐

薫る風、桜の嵐

咲き狂え、と、あの人は歌った。

花狂い咲きという言葉がある。本来咲くべき季節から外れて花が咲くことだという。

まだ白く冷たい空気に、ひとつの花が狂い咲くのを思い浮かべる。ひとりだけ違う季節に生きるあたたかな花。春を前に咲く花の命の印象は、冬に一層強いかもしれない。

異なる季節が重なり合い、特別な印象をもって思い出されることがある。

あれは夏の初めであった。けれど、桜が咲いていた。雪かと見え

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二人の言葉に同じ時が流れる(桜嵐記)

二人の言葉に同じ時が流れる(桜嵐記)

2021年の宝塚歌劇月組公演「桜嵐記」を忘れる日など来ないと思うけれど、とりわけ忘れえぬ瞬間がある。

弁内侍が、自らの辛い記憶を、楠木正行に告白する場面。

内侍は、努めて過去と距離をおくように、静かな口調で語りながらも、過去の苦しみに襲われ、声は震えている。

やはり静かに耳を傾けていた正行は、きっぱりと彼女を諭す。

死んでいったあなたの肉親は、あなたがいつまでも過去に囚われることを望んでは

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桜が栞になるとき ~宝塚ファン人生、一回目。

桜が栞になるとき ~宝塚ファン人生、一回目。

月が綺麗

月はいつだって綺麗なものですが、なぜだか、月の光のさやけさがとびきり胸にしみることがあります。私が彼女を「私のただ一人の贔屓」と気が付いたときは、ちょうどそんな心持ちでした。ずっと前から見ていたのに、ある時、彼女がこれまでにない輝きをまとって見えた。以来、彼女の存在は私の中で大きくなり続けました。

私は、今年宝塚歌劇団を退団された一人のトップ娘役さんのことを応援していました。彼女と歩

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愛しみのワルツ(珠城りょう&美園さくら)

宝塚歌劇を見ていると、愛という感情について考えることが頻繁にある。生徒さんもよく「愛に満ちた世界」だと言う。大きな感情。言葉にならない思いを包摂する概念。そんなおおきなものを表現したトップコンビがいた。

2021年月組公演「Dream Chaser」のフィナーレにおける、珠城りょうさんと美園さくらさんの最後のデュエットダンス。その名も「愛しみのワルツ」という楽曲にのせたラストデュエットに感じたこ

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トップコンビを愛す(珠城りょう&美園さくら)

トップコンビを愛す(珠城りょう&美園さくら)

今年の夏、私が愛してやまない二人のタカラジェンヌが、宝塚歌劇団を卒業した。月組トップスターを務めた珠城りょうさんと、その相手役・トップ娘役を務めた美園さくらさんである。

宝塚とは儚い世界で、とりわけ儚いものは、各組で主演を務める男役・娘役が演じる「トップコンビ」というフィクションである。卒業まで数々のラブストーリーの主役をつとめた男女のコンビが、あの夢の世界を卒業した途端に、過去の映像だけに残る

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