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マジック・タッチ10:Marcin, Ichika

先月、バレリーナの友人 nahos さんが、バレエ界若手トップダンサーの二山治雄が目当てで "In The Mirror" というバレエの新作クリエーションを見てきたと聞いてうらやましい思いでいっぱいだ。

二山治雄も素晴らしいダンサーで、こちらも見たかったところだが、音楽は、私がこのところずっと推しているギタリスト、Ichika Nito なのだ。

Ichika のことは前にちょっと書いたことがある。

この記事「マジック・タッチ・2」でも書いたが、面白いと思ったものを全部ここに上げると、Ichika Nitoチャンネルと同じになってしまう。このときは2曲だけ紹介してあった。

指弾きでのアルペジオやギターらしい和音の合間にタッピングを効果的に使う独特の操法は独学だというから驚きだ。奏法をそれぞれの要素に分解すると、今となっては比較的基本的なものばかりかもしれないが、指板を広くダイナミックに使うことでギターの表現力がこれまでになく引き出されていると思う。表情豊かな和音も現代的でスタイリッシュな響きが綺麗だ。

"When a band only gives you 30 seconds to audition" は彼のテクニックを30秒の間で存分に披露している。

オーディション・シリーズは面白い。もしメタリカがオーディションで60秒しか演奏時間をくれなかったら、とか、オーディションで指が一本しかなかったら、など、YouTube で"Ichika Nito audition"と検索すればいろいろ見つかるので視聴してみてほしい。他にも伝説のカシオのデジタルギターを使って見事に演奏してみたり、お洒落なうえにシャレが効いている動画が多い。

音そのものは繊細で、ゴージャスさには欠け私の好みからいうと少し細すぎるが、そのぶんそっけない感じがお洒落で好感触だ。

時代の申し子というか、最初は大手のプロダクションやレーベルに所属せずに、instagram や TikTok、YouTube他 SNSを駆使した動画配信でファンを集めて世界的に有名になるミュージシャンを何人も見かけるようになった。それこそオーディションで有名なバンドに加わる機会もあるだろうに、自身でプロデュースし自身でプロモーションしていく。

このようなミュージシャンたちの目ざすところは商業的な成功や名声とは違うのかもしれないと感じている。

ある意味、ポピュラー音楽が一大産業になる前、あるいは権威と名声によって位置づけられる前の、そんな音楽による交換様式がITテクノロジーに乗って高次元で回復してきているのかもしれない。

そんな YouTuber系ギタリストで以前から私が注目して見ているのが、ポーランドのマルチン Marcin Patrzalek だ。

この人はアコースティック・ギターをかき鳴らし、両手でのタッピングも交え指板の端から端まで使い切り、ボディを叩いたり、ギター全体をパーカッシブに使う奏法だ。押尾コータローとよく似ている。

オリジナルの曲よりも、むしろクラシックの名曲やロックの名曲などを、一本のギターで弾いて楽しませる。駐車場や倉庫のようなところで録画したものもあるしストリート・ミュージシャンの動画配信という感じも悪くない。

この二人は、もちろん、もともと YouTubeを通じて交流もあったのだろう。そして、二人とも日本のギターのメーカ、アイバニーズの official endorserとして契約していて、その縁もあるだろう。

マルチンは最近来日していたし、2人の共演の動画を何本かアップしている。

できる者同士、楽しそうな演奏だ。

そして、Just the Two Of Us という曲もいい。動画は 3か月前から公開されているが、デジタルプラットフォームでは先々週だったろうか最近にリリースされている。

二人とも活躍の場を広げているようだ。Marcinはソニー傘下のレーベルと契約して、目下メジャーデビューのフルアルバムを制作しているという。

Ichika は最近、Aurora Dream というマイアミのバンドの先週リリースされたシングル "Confy" にゲスト参加しているのを聴いた。

このバンドのギタリストはベネズエラ出身の Daniel Morales、初めて聴くが私好みのきらびやかなゴージャスな音で、こちらもなかなかのテクニシャンで驚いた。


広い世界には凄腕で感性あふれる若手ミュージシャンがたくさんいる。どんな音楽をこれから作って楽しませてくれることだろか。楽しみにしている。



■関連 note 記事

この「マジック・タッチ」シリーズは好きなギタリストの中でも特に変則奏法の人たちを取り上げて、好きだと語っているわけで、これまでに書いた 1 - 9 の全記事が関連しているとも言えるが、Ichika, Marcinを聴いていて思い出されるのが、文中でも名前を出した、スタンリー・ジョーダン、押尾コータロー、そして、タック・アンドレス。


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