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マジック・タッチ7:押尾コータロー「夢ごこち」 20th Anniversary

先週の Release Radar にひっかかってきたのが、押尾コータローとジェイク・シマブクロの「夢ごこち」。超絶テクニシャンの二人がリラックスした演奏でゆったりと聴かせる。週末の朝に聴けば、日々の仕事で緊張しきった心と体が溶けていくように思えること間違いない。

私は知らなかったのだが、2022年MBSお天気部冬のテーマ曲だということで、YouTubeでもショートバージョンが1か月前ほどから上がっていたようだ。

押尾コータローといえば、気さくで気取らない明るい人柄でも有名で、世界のトップミュージシャンたちからも人気抜群と聞いたことがある。

YouTubeチャンネルもそんな人柄全開の楽しい動画ばかりで、ジェイクと二人の楽しい会話も聞くことができる。

この動画を見て知ったのだが、二人ともデビュー20周年ということだ。

押尾コータローは2002年の "Starting Point" でデビュー、以来、ほぼ1年に1枚のペースでアルバムをリリースしている。1968年生まれというから少し遅咲きのほうかもしれない。最近、2016年のあと、少し間が空いているようだ。

私は 2004年のライブアルバム "BOLERO! Be Happy Live" で初めて聴いて驚かされたのだった。

オリジナルの楽曲ももちろんいいが、この人のテクニックがわかりやすく堪能できるのは、やはり1曲目の「ボレロ」、そして、7曲目、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」だろう。

ラベルの「ボレロ」に関しては言わずもがなの有名クラシック曲だが、1991年にラリー・コリエルがギター一本の演奏で演奏して以来、ギターのソロ演奏の可能性を広げた一曲として、一部の間で知られている。ただ、ラリー・コリエルの演奏は原曲をモチーフとしたインプロヴィゼーションであって、クラシックのファンに聴かせたら「何これ?」と鼻で笑われたものだった。

また、エレクトリックギターであれば、ソロで、両手を使ってメロディと伴奏を流麗にエネルギッシュに弾けるといえば、1985年のスタンリー・ジョーダンの衝撃的な登場以来、もの珍しさは無くなっていた。

また、ロマンティックなメロディと柔らかいバッキングに加えてギターを叩くように音を出してパーカッシブなリズムを同時に刻むタック・アンドレアスのようなギタリストもいた。

しかし、その全てを交えてアコースティック・ギターの表現力を余すところなく開花させたのは押尾コータローその人だろう。

そして、当時、そのうえにさらに衝撃を受けた点は、まさにオープンな人柄だった。譜面を出版し、自分の持つテクニックを自ら解説つきで公開してしまうのだ。もちろん、公開したところでおいそれと真似ができない、そんな自信もひょっとしたらあったのかもしれないが、そんな自負を微塵も感じさせないフレンドリーな調子の解説に驚いたものだ。

20周年記念のベスト盤が出ている。

粒ぞろいの楽曲ばかりで楽しく聞くことができる。そして楽しそうにギターを弾いている表情が浮かんでくるようだ。

白状すると、最近、あまり聴いてなかったのだが、先週から改めて聴いているとやっぱり楽しくて右手と左手をエアーギターでジャカジャカしながら踊ってしまう。

またこれからの10年、どんな変貌を遂げるだろうか。変わらず、今のままのテイストで続けていくだろうか。ジェイク・シマブクロとともに、いろいろな人との共演も聴きたい、楽しみなスーパーギタリストだ。



■関連 note 記事

ジェイクシマブクロは2か月前に記事に書いたけれど、大好きだ。

最初、押尾コータローを聞いて、あ、この人はタック・アンドレアスの直系だと思ったのだけれど、テクニック的にはちょっと違うかもしれない。

似た感じの最近の人だと、ヤスミン・ウイリアムス。


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