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火曜日しばらく雑記帳・3:Carlos Aguirre (カルロス・アギーレ) "Va Siendo Tiempo."

「ヘビメタとハードロックは違うのよ。」と彼女は顔を曇らせて言った。

■ 1985年だと思う、大学受験を落ちて、お茶の水の予備校で1年の浪人生活をスタートさせた。半年すぎたあたりからようやく周囲と打ち解けはじめ、右隣の女性とも、ぽつぽつと話しをするようになった。

小柄のやせぎすでソバージュ、色白で目が細くて可愛らしく、私は最初から一発で参っていた。しかし、今と同じく、とにかく社交性ゼロでコミュ障、内気で自分の世界しか知らない私は、話しかけるすべもしらなかった。初めて話かけるまで半年くらいかかり、秋ごろになってようやく少しは話しができるようになったのだった。

ふと、彼女が、「秋葉原でレコードを買いたいのだけど、あまり店を知らないので、教えてほしい」と言ってきた。どういう話の脈略だったのかはまったく覚えていない。ほんとに今でも不思議だ。そして、どこで待ち合わせたのか、何を話したのか、まったく覚えていない。向こうは飾り気のない紺系のサマーセーターに、ベージュ系の長めのスカートで、いやジーンズだったかも、ローヒールだったと思う。確か、靴は黒い革靴だったように思う、いい靴を履いていた。私は擦り切れたボロシャツにボロボロのジーンズ、今にも壊れそうな靴、だったはずだ。

私と彼女は、お茶の水のレコード店を2店か3店か巡った。私は、ちょっとインテリだと見せようと思ったのかもしれない、ジャズのコーナーに案内して、「ほら、これ、すごくいいんだぜ、日本人ピアニストで初めてアメリカからデビューした小曽根真っていうんだ」とレコードを引っ張り出して見せた。「一つ一つの音が真珠のように転がるようで、流れるような即興のメロディーがいいんだ」と紹介した。

そのときの彼女の表情はなんとも言いようがない。軟弱な男ね、という感じだろうか、ちょっと違う。落胆とも違う、軽蔑とも違う、拒否とも違う、あきらめとも違う、なんだったんだろう。

どんな音楽が好きなのか聞いてみた。

「私、ハードロックが好きなの。」

「あー、ホワイトスネイクとかヨーロッパとか?ハロウインも流行っているよね?(←精一杯の知識)」

「それはメタル。ハードロックはハードロック、違うのよ。」

「アイアンメイデン?」

「オジー・オズボーン、ブラックサバス

なぜ、最初から彼女の音楽の好みを聞いてなかったのか、そこも今から思うと、ものすごく不思議だ。

その後、私が知り合った女性たちや、仕事で関わりあいになった何人かの人たち、そして敵対することになった同僚など、なぜか、ヘビメタ・ハードロックのファンが多かった。そして、最近では、フィンランドの友人の Keijo Salmivaara (*1) も、彼の奥さんもメタリカの熱烈なファンだ。

ケイヨーとの月いちの Web 飲み会。この写真は確か2021年12月の会だと思う。
こちらは深夜11時すぎで真っ暗だが、16時すぎの先方も外は真っ暗だ。
今は、こちらは相変わらず真っ暗だが、先方は17時、しかしまだまだ明るい時刻だ。

なお、私の見立てではフィンランド国民の90%はヘビメタ・ハードロックのファンなのではないだろうか。検証はしていない。昔、Finland の NOKIA の工場では、通路でメタルがガンガンかかっているという噂を聞いていた。私が出張で度々訪れたときには、そんなことはなかったので、ガセネタだったのだろう。しかし容易に信じたくなる話ではあった。

実のところ、私は、ヘビメタとハードロックの違いはあまりよくわかっていない。


■ フォローさせていただいているブラジルにお住まいの Kikko_yy さん。瑞々しい感性の投稿と、一度は行ってみたいブラジルの現地の雰囲気たっぷりで楽しませていただいているが、最近、ボルシチを紹介されていた。

4月7日にもビーツを使った赤いスープを投稿されていた。たまたま3月末に北半球では季節外れのビーツが売っていたのを見つけてボルシチ風シチューを作ったばかりだったし、ちょっとシンクロ感があった。そして、先週の土曜日の晩は缶詰のビーツがあったのでそれを使って、紹介されていたレシピを参考にしながら、私流でまた作ってみた。缶詰水煮のビーツだったせいかちょっと色が薄めの仕上がりだったが、わりあい簡単だし、裏切らない味だ。

ボルシチ風のシチューはこれまでも何度か作っている。比較的見映えがする写真を選択。こちらは生のビーツを使用。色も味も濃い。

ボルシチは何度か作っているが、比較的見映えがするものを選択。2020/11/25の夕食。


■ 先週 Spotify の Play List、 Release Radar にひっかかってきた曲から、惚れてしまった曲を5曲ほどピックアップしておこう。

1.トルコのジャズ畑のギタリストとボーカリスト、Funda & Yavuz Akyazici たぶん夫婦共演、の新曲。これは美しい。ずっと聴いてる。


2.インドの歌姫、シュレヤ・ゴーシャルの美しい歌声とサントゥールの響きも楽しめる、Koi Nidiya Kiyawも、いつもの高いクオリティでなかなかよかった。


3.スウェーデンのトランペットの Jonas Lindeborgの新曲、"The Pyramid Sessons"、幻想的な音で聴いていて飽きない。

YouTube まさかの一番のり。

4/19 2000 (JST) にアクセスしてみたら 「3回視聴」となっていた。全部私である。


4.アルゼンチンの、Carlos Aguirre (カルロス・アギーレ)の新作、"Va Siendo Tiempo." この方はだいぶん前からフォローしているが、1965年生まれのコンポーザー/ピアニスト/詩人ということで、現代のアルゼンチンを代表する作曲家であり、モダンフォルクローレを牽引する存在だということである。(カルロス・アギーレ・グルーポ - CDJournal)

実際、ほれぼれして聴いている。

この人の2020年のアルバムもいい。しょっちゅう聴いている。


5.レバノンから Elissa の新曲、アラブ歌謡に浸れる。



■ 今年4冊目の洋書は、アメリカの話題作、"The Vanishing Half" ページ数が多いので1か月半コース。5月末に読了予定。

ページあたりの文字数が少ないようなので、たぶん読み切れると思うが、人種差別の歴史や 性差別、貧困問題、そしてカラリズム について調べながら読むことが必要そうだ。重たいテーマなのでかなり苦労しそうだ。

早川書房の note 記事を見て、手にとった。この記事の解説はしっかりと読むべきものだと思った。

対立と分断に揺れ動くアメリカ社会からあらわれた、新たな声。ぜひ聴いてください。

全米170万部の話題作がうまれた背景は? 現代アメリカを理解するための必読小説『ひとりの双子』解説(新田啓子)
Hayakawa Books & Magazine より


トップの画像は去年の今頃に撮った写真だ。ソメイヨシノはもう散ってしまったが、八重桜や山桜などが綺麗だ。ハナミズキも綺麗に咲いている。

2022/4/19 新横浜公園の八重桜


季節は巡る。


■ 注記

(*1) もうリタイアしているが、Program Manager, 次のサイトで紹介されている。Finland語なので読めないが、記事中の銀閣寺をバックにポーズをとっている彼の写真を撮ったのは、実は、不肖私だ。

 ちなみに、カメラは高性能のものではなく、2年半近く前まで使っていたアンドロイド・スマートフォン Nexus 5 だ。


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