見出し画像

vol.066「誰にでも特技はある:人の話を、反応しながら聴いて、整理する能力。」

中学生の頃よみふけった『銀河英雄伝説』に、「誰にでも取り柄はあるものだ」というくだりがあります。ヤンが一日に複数の敵艦隊を破って、感嘆した部下がつぶやいたものです。(たしかシェーンコップだったと思う)

私自身に置き換えると、「人の話を、反応しながら聴いて、整理する能力」がそれにあたります。

管理職になってまださほど年月が経ってないころのこと。
チームメンバーに「ちょっと時間いいですか」と呼ばれました。昼休み明けの時間帯だったと思います。
ひとまず別室に移動して話を聞くことにしました。


◆さえぎらず、最後まで聴く。

内容を要約すると、自分たち一部の人間だけが忙しい。他のメンバーは仕事をしていないという訴えでした。

もともと仕事熱心で真面目な人だったので、上司を呼び出して別室で話をするというのはよほどの事だったのでしょう。
溜まっていたものがいろいろあって、話題はあちこちに飛びます。
他のメンバーが職歴や職能級で言えば上であって もっと責任のある仕事をすべきであること。むかし出会った上司、または上級管理職で話を聞いてくれずに無責任な対応されたと言う思い出。今とは別の部署にいて、やはり当時も自分が考える職場の課題などを訴えたと言うエピソード―。

こういう時は話を途中で遮らず、結論を急がず、まず話を聞き切ることです。

管理職にありがちだなと思ってるのが、自分が忙しいので、早く切り上げたくて結論を急ごうとすること。もしくは過去のことなので(悪気なく)事実かどうかを疑う発言をする。事実確認を急ぐこと。
こういう態度って、相手に伝わってしまいます。「あーこの人は面倒だから早く切り上げようとしているな」「効率よくこの件を終わらせようとしているな」と。

そうではなくて、ともかく最後まで聞く。遮らずに、同じ話が繰り返し登場しても、相手の話が終わるまで聞く。話が終わるというのは一文のことではなくて、その人が話したいと言う内容、ボリューム、エネルギーが尽きて、いわゆる満足度、気が済むまで聴ききるということです。

◆反応する。

もう一つ、話を聞くときに大事なのが反応しながら聞くこと。
ずっとうなずき続けたり、ずっと笑顔と言うのは不自然です。「早く終わらせる」のと同じように、相手に「この人はマニュアル通りに対応しているな」と見すかされてしまいます。
かわりに、深刻な話のときには真剣な顔。重要だと思った事件の話ではうなずく。面白い話、こぼれ話のエピソードのときには、こちらも思わず笑う。そういう人間らしいリアルな反応をするということ。

これはトレーニングをすれば誰でも上達する技術です。だけど、テクニックに走るということじゃなくて、毎回、真剣に「話を最後まで聞く」と先に決めて聞く。反応する。うなずく。笑う。
あえて単純化して言うと「損得を計算せず、先にコストを払うのだ、という態度」が大事だと思います。

◆言いにくいことを、言いきる。

チームメンバー、いわゆる部下の人の話を聞くときにもう一つ重要なのが、「言いにくいことを、言いきる」ということです。
一方の話だけを全面的に採用するわけにはいかないこと。会社の事業運営というのは、多数決で決めたりはしないこと。声の大きな人、話の上手な人がの意見が採用されるわけではないこと。すべての要望を返したり宿題に答えられるとは限らないこと。「この件は時間がかかる、答えが出るとは限らない」とあらかじめ言うこと―。

こういった言いづらいことを言わずに先延ばしにすると、けっきょく後で自分にも降りかかるし、期待させた分、相手の落胆も大きくなります。結局トータルで見ると、誰も幸せになりません。

この「いつ言うか」、つまり「時間軸上で、同じことを、いつやるか(やらないか)をコントロールすること」が、リーダーのやることだと思っています。言い換えると、同じ入力、同じ資源で、どういう手順でカードを切っていくかで勝負の行方が変わるということです。

この時はこんな話をしました。
・あなたの話だけを聞いて全面採用することはできないこと。
・指摘している事はわかったので、他のメンバーとも機会を捕まえて、個別にワンオンワン面談をして話を聞くこと。
・ただし、その内容をあなたにフィードバックするとは限らないこと(守秘義務を守る必要があること)。
・今まで何十年か生きてきた人間(他のメンバー)が、今から急に生まれ変わったり、仕事観を変えたりする事はほぼありえないこと。
・ということは、あなた自身が自分の仕事をやり切りたいのか、他のメンバーが仕事をしないから自分も仕事をしないでいいのかは、自分で決める問題だということ。

自分が納得するならそうすればいいし、仕事はやり切ったほうがいいならそうすればいい。だけど、私の見るところ、あなたは仕事をしたい、手抜きができないタイプ。周りに関係なくできることをやったほうがいいと思う。「仕事をする」とは自分で自分を評価することであり、周囲からそういう評判を勝ち取ること。例えば次の職場に行ったり、退職して自分で仕事を見つけたとき、いま手抜きせずに仕事をしたということが生きてくること。他のメンバーはあなたの人生に関係がないこと。他のメンバーの人生にあなたは責任を持っていないこと―。

おおむね、こんな話をしたと思います。

◆本人は、分かっている。

結局面談が終わったのは日が暮れてから。時計を見ると開始から6時間半が経っていました。
「すごい遅い時間になってしまいました。お忙しいのに申し訳なかったですね」と言ってお詫びをすると、「いや、話をこうして聞いてもらったんでいいですよ。ありがとうございます」と言われました。
遮らず否定せず、かといって、言いにくいことも言う。そういう態度を評価してくれたのだと思います。

私が言ったようなことは、本人も内心ではよくわかっていると思います。頭ではわかっていてだけど、長い期間ため込んで納得がいかなかったので、私を呼び出して話をしたのだと思います。

◆まとめ。

管理職が部下の話を聞くときは、遮らずに最後まで聞く。否定せずに聞く。相手に主に喋ってもらうこと。
しゃべる比率が5対5とか、自分の方が多い、自分の方が能弁だ、自分の言う事は説得力があるはず、相手にも受け入れてもらってるはず、と思っている管理職は要注意です。

それと、繰り返しになりますが、言いにくいことも言う。解決できる保証のないときはそういう。全面的に採用できないときはそういう。
言いにくいことを、はっきり、ごまかさずに言う。真剣な表情で、目を見てゆっくり言う。
こういった態度が大切なのだと思います。

今回はiPhoneの音声入力を使って書いてみました。このあと少しだけ誤字脱字は整えますが、毎日発信実行に向けて、「時間短縮で原稿が書けるか」の実験を兼ねています。

お読みいただきありがとうございました。

(音声入力ここまで)


先日の木下斉さんライブアワーに登壇されたメンバーのみなさんをならって、更新頻度を上げられるか、やってみます。

人間の(私の)文字処理に対するスピードは、①黙読する>②話す>③タイピングする の順なので、③から②へのシフト、「音声入力する」を試してみました。
入力した原稿を手直しする時間を足して、従来の時間以下なら成功ですが、「原稿無しで話す訓練になる」効果を考えると、トントンでもプラスだと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?