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vol.114「話し方の実践練習方法:とにかく相手に関心を寄せる。はだしの英雄に助けられた話」

「お金持ちになるための話し方」から、おまけのお話。

質疑タイムでの質問と回答、すこし詳細。こんな内容でした。

Q.話し方の上達にはやっぱり『実践で練習』しかないでしょうか?
A.実践練習とイメージトレーニングがある。実践練習はリスクの少ない、安全な場でやるといいですよ。

「安全な場で」とは、たとえば家族向けなら照れも含めて話しづらいこともある。仕事関係者や友人なら、話した内容があとでなにかギクシャクする原因になりえる、みたいなことです。

「訪日中の外国人観光客の人に話しかけてみるとかいいんじゃない?少々英語がたどたどしくても何か失うわけじゃないし、けっこう会話続くこともありますよ」
「そういえば私、東京に住んでたころ、何度か声をかけられて、道案内したことあります」
「でしょう。絶好の機会ですよね」
「たしかに!向こうから欲求があって話しかけてきてるから、会話しやすいですよね。英語の練習にもなる」

受け答えしながら、思い出したエピソードがあります。もう何年も前、東京在住時代のできごとです。


この日は、その年、苦闘を演じた大きなプロジェクトについて、個別のお客様企業との懇親会でした。
プロジェクト全体としては翌年もまだまだ続く難事件(けっきょく約2年半、900日ほど、こればかりやっていた)。このお客様ともさんざんバトル(どこまで出来る・断るの交渉)をした仲だけど、先方からのお誘いでささやかに開催したものです。※私費のワリカンです。

お客さまと別れて、メンバー(大苦労した)に、帰るかもう一軒寄るか尋ねたところ、行きたいとのことで、バーを見つけて入りました。

隣のテーブルに、アフリカ系の男性3人客。後ろのテーブルに日本人の男女2人の先客。ほどなく日本人客2人がお会計を済ませ、お店を出ました。

ふと外をみやると、お店の前で、まだ解散せずに立ち話をしています。どうやら、男性(60代と思われる)が女性(30代後半~アラフォー)を熱心に口説いている様子。15分ほど経って、二人は別の方向へ分かれました。男性の思うようにはいかなかったようです。

気づくと、アフリカ系男性3人も興味深く注視していたようで、目が合いました。
※エチオピア人だよと教えてくれたので以下では「E」=三人、「Y」=私、とします。

E「 Difficult…, Japanese! 」(笑)(日本人、なかなか難しいね~笑)
Y「 Yeah…, welcome to Japan!」(笑)(まったく...ようこそ日本へ!笑)

以下、ブロークン英会話でのやり取りです。※なお、彼らは当たり前に英語を話します。ChatGPTによると「エチオピア連邦民主共和国の公用語はアムハラ語(Amharic)。英語も広く使われており、教育、ビジネス、政府の公式文書は英語で書かれることが多い」とのこと。

Y「どこから来られているんですか?」
E「エチオピアです」
Y「日本で働いているの?出張ですか?」
E「出張です。10日間です」
Y「何のお仕事ですか?」
E「ハイウェイの建設に携わってるんだよ。」
Y「ハイウェイの建設!(すごい)日本へは何の用件で来ているの?」
E「JICAの事業で、現地での建設を日本企業が行ってる。我々は彼らと一緒に仕事してます」
E「明日、国へ帰るんだよ」
Y「そうでしたか」

E「エチオピアは知ってる?」
Y「もちろん知ってます。ただ、アフリカのどこかが いま正確に分からない」
E「東側だよ」
Y「東側?海には面してますか?」
E「Yes,Red Sea(紅海)」
Y「紅海!あぁ、このあたりですね」(宙空でアフリカ大陸の形をしめしてソマリア半島を指す)
E「そうそう」

E「東京で、オリンピックがあったよね?」
Y「2020のことですか?」
E「いや、1964年のほう」
Y「ああ、1回目のTOKYOですね」
E「マラソンランナーのアベベって知っていますか?」
Y「もちろん!知っていますよ!ゴールドメダルを獲った」
E「ファミリーネームはビキラ(Bikila)っていうんだよ」
Y「へぇ~、アベベ・ビキラかぁ。知らなかった」

E「靴を履かずに走ったんだよ」
Y「知ってます!裸足のランナー。子どもの頃に父から何度も聞かされました!」

(一同大喜び)

そこでふと思い出します。

(...あれ?今日の通勤読書に、たしか出てきたぞ??)

カバンから本を取り出して、当該ページを見つけました。

Y「えーっと、これは世界史の本なんだけど、アベベの話が載ってますよ。『ハイレ・セラシエ』のguardianかSoldierだった?」
E「Yes!ハイレ・セラシエ、皇帝だよ!」

(さらに大喜び)

今度は購入したばかりの新品スマートフォンで、Wikipediaを検索。
指し示しながら、読み上げてみせる。

Y「裸足で走っている写真。ローマのときだそうです」
E「1960年だ!」
Y「ローマでも金メダル?2回連続取ってる?」
E「Yes!」
Y「アフリカ系黒人の金メダル第1号?」
E「Yes,yes」
Y「20世紀の最も偉大なアスリートのひとりだね」
E「Yes!!」

Y「彼は、、、オ、オロモ人?(oromon?)」
E「Yes!」
Y「えーっと、ショア州、オロミア州のジョル村というところで生まれた」

(大喜びその3+大笑い)

E「それ、日本語の本ですか?」
Y「はい、そうです」
E「日本では、みんな日本語(Japanese)を話す?one language?」
Y「うーーーーん、ほぼそう(※)」

※地方によって方言はかなり違う、そして少数民族だけど琉球、アイヌそれぞれ言葉がある(あった)、だから厳密にはone Languageじゃない、と言いたかったのだけど、そこまでの英語が話せず。すくなくとも単語を知っておくべきだと帰宅してから反省した。(例:方言=dialect、少数民族=ethnic minority)

Y「エチオピアではいくつ言語があるんですか?」
E「エイティ」
Y「8個?」
E「ノーノー、eighty.」
両手の指で 8 0 とジェスチャしてくれた。

Y「80個!?すごい」

リーダー格の人が、何やら提案してくれている。
聴くと、「1杯ごちそうしたい」とのこと。

こういう場面での行為は、(特段の危険でもないかぎり)素直に受けることにしています。

Y「わかりました。ありがとう。では遠慮なく」

1杯ずつ注文して、お店の人に事情を説明し、彼らの会計につけてもらう。

Y「乾杯、エチオピアに」
E「乾杯、日本に」
(しばし、アベベや、エチオピアの話をする)

Y「そろそろ行かなきゃ。今日はごちそうさまでした」

ちゃんと自分たちの支払いになってるか気にしてくれたので、会計を見せ、訂正済みの箇所を説明した。

Y「本当に本当に楽しかったです。出会いに感謝」
E「こちらこそ、本当に楽しかった。アリガトウ」
Y「アリガトウ(笑)。明日の帰国も良い旅を!」
E「Thank you!」
Y「Thanks,too. Good night!」

お店に入ったのも思いつき。出口さんの本を持っていたのも偶然。スマートフォンに買い換えたのもたまたま。(なんとそれまでガラケーだったのです)

ひとつ言えることは、誰かに好意を持ってもらおうと思ったら、
「その相手に関心を持つ」
のがいちばんの近道だということ。

エチオピアの、アフリカの偉大なランナーは、1973年の10月、私が生まれた年、41歳の若さで亡くなりました。

"国際交流"を盛り上げてくれた、はだしの英雄に敬意を捧げます。

出口治明さん『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅱ』



振り返ってみると、この事件は、冒頭のセミナーで話に出た話と、多くが重なる。

「上手に話す」ではなく「役に立つ」。
相手にとってなにが嬉しいかと考える。
興味関心をしめす質問する。
知ってる情報は総動員する。
知らないことはその場で調べる。
質問する。相手に教えてもらう。
うなずく。笑う。

しばらく忘れていたので、また機会をとらえてやってみます。

最後までお読みくださりありがとうございます。



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