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門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その19 小雪)

小雪(しょうせつ)どころか、、、

先日の「立冬」から数えてちょうど2週間。 

北国から雪の便りが届く頃ですが、まだ本格的な冬の訪れではありません。雪といってもさほど多くないことから、小雪といわれたものだそうです。

とはいえ、早速ニュースでは北海道で90センチに迫る積雪。積もった雪の表層は、いわゆるパウダースノー(粉雪)でサラサラですが、実は、その粉雪のしたの雪は、水分量が多い、ズシっとした「雨雪」とのこと。この週末から次週29日ころには、日本全国、突然冷凍スイッチを入れたかのような、寒い日が来る予報が出ています。

本来であれば、陽射しが弱くなり紅葉が散り始めるころで、いちょうや柑橘類は黄色く色づいてきます。しかし、東京ではこの寒さで一気に葉が枯れて、あっという間に冬支度になりました。

虹蔵不見(にじかくれてみえず)

小雪が始まる最初の11月22日〜11月26日頃は、七十二候でいうと「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」とよばれ、曇り空が多くなる頃です。陽射しが弱まり、実は虹を見ることが少なくなります。たとえ見ることができても、夏の空のようなくっきりとした虹ではなく、ぼんやりとすぐに消えてしまいます。

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一方で、この時期、収穫を迎える果実は「蜜柑(みかん)」です。ビタミンC以外にも多くの栄養素が含まれ、骨粗しょう症の予防に効果的です。冬はこたつに入りながら蜜柑を食べるというスタイルが定着していますが、食べ過ぎると身体が冷えてしまい逆効果ですw

みかんの季節は、こたつ開きの季節

前回の立冬の中でも「こたつ開きの季節」と書きましたが、蜜柑がこたつの上に置かれていると、まさに冬が訪れるタイミング。

実は、立冬の最終、11月21日(日)に神奈川県鎌倉市・笹目町にある「鎌倉笹目座」にて、久しぶりに対面マルシェを実施させていただきました。

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地元の方はもちろん、その笹目座に出店しているお店の皆様、お客様、そしてわざわざ鎌倉まで足を運んでくださった方々にお世話になり、初めての鎌倉でのマルシェは盛況に終了いたしました。

その時、東京・中野区にある「フタバフルーツ」さんから届いた果実が愛媛県の「真穴みかん」でした。

真穴みかんとは

四国は愛媛県の南西部に位置する八幡浜市。その最南端に真穴地区(真網代地区と穴井地区を合わせた呼称)があります。

日本一細長い佐田岬半島の根元に位置し、穏やかな宇和海、それを取り囲むように見渡す限りのみかん畑を背にするのどかな集落です。

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海岸付近から標高250メートルまでに至る斜面には、ひとつひとつ石を積み重ねて造り上げた石垣が形成され、初夏にはみかんの白い花が咲き誇り、秋にはみかん色に染まる段々畑の美しい景観が見られます。

真穴地区は古くから日本を代表する美味しい温州みかん(※愛媛みかん)の産地です。真穴地区におけるみかん栽培は、明治24年に柑橘が導入されてから現在に至るまで130年余りの時を重ねてきました。その長い歴史の中において、柑橘産地初の天皇杯受賞をはじめ、農林大臣賞ほか数多くの賞を受賞しています。

先人の培った技術を確実に引き継ぎつつ、昨今では高品質なみかん(高級みかん)作りのための新たな栽培技術の開発や導入も積極的に行うなど、日々たゆまぬ努力を続けています。

マルシェでも、今回初めて来られるお客様に、真穴みかんを提供させて、いただき、一口に「甘い」「うまい」という言葉をいただきました。感謝をいただく一方で、「真穴みかんを、鎌倉で、僕(弊社)が販売する」という環境、接点に、いつも新鮮味を感じています。

以前、私は神楽坂で友人から八百屋を引き継ぎ、経営をさせていただいた時期がありました。その時も、多くのお客様にお越しいただき、味の評価をいただく一方で、「どうして神楽坂でこうした野菜が手に入るのか?」という評価をいただくことがありました。もちろん他のスーパーマーケットさんや八百屋さんでは手に入らないものもありました。

また、単にネットワークが広い、僕らが知っているから提供する、ということもあると思いますが、それ以前に、「この食材を、自分以外の人に食べてもらいたい」という思いがあるという認識があるからです。僕にとっての新鮮味はここにあります。

チビキの「撮ったど!」写真を見せられて。

「今回のお魚は”チビキ”です!」(谷田)
(注:チビキ、「ハチビキ」(標準和名)。旬は冬から夏。体長70cm前後になる。細長い紡錘形。全身が赤く、背の方が濃い。)↓

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「先日捌いた時の写真!」(谷田)

僕が料理屋(和食に限らず、洋食含め)にリピートしたり、また食べたいと思わせる最大の楽しみは「料理人が新発見をした時を感じられるお店」です。以前、たにたやでも、お店で食材やワインなどを携帯画面で見せられたときや、今回のように捌いた様子、それが料理になった瞬間、とても食べたくなる気持ちにさせられます。むしろ、情報告知、イベント告知、新メニュー始まった告知を見せられたとしても、実はそんなに盛り上がらないのはなんだろうなー、って思っていたのですが、「チビキを捌いた写真」を料理人から見せられると、やはり気持ちが上がります。

そのチビキの竜田揚げとともに、小雪の季節で、自宅で籠(こも)るようにうずくまって寒がるのではなく、食べる食材から温かみを得られる、そんなお弁当の表情が、今回は伺えました。

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今回のメニューで、特に目を引いたのが、「里芋マッシュとクルミ、ごま味噌味」です。里芋をマッシュ状にアレンジしているのが、粘り気が強く、そしてその柔らかさに反する「クルミ」が、よいギャップを生んでいて、程よく心地よく、味わいもよくて驚きました。

真穴みかんに出会えない人もいれば、たにたやに出会えない人もいる。

いよいよ11月も終わりを迎える。世界的にコロナ禍では、日本が緊急事態宣言解除後、落ち着きを取り戻し、逆に海外では「なぜ日本がその後沈静化したのか」が話題になっているという報道をみた。一方自宅では「いつまでマスクを着ける生活が続くのか」という話題も上がっているが、日々の生活においての新しい様式、接し方、ワクチンへの対応が、日本の目覚ましい発見だったのではないかと考えている。

一方で、飲食業界においても、東京では、すこしデリバリーも落ち着いてきている。とある金融機関からも「UberEatsも落ち着いてきていますよね?」と逆質問があったくらいだ。

話を戻すが、真穴みかんも、たにたやも、新鮮味を感じないところには、誰も反応しないし、その反応(=期待)に応えられなければ、継続できないということが大事だろうと思う。僕はこのお弁当企画を1年間み続けてきて、「継続すること」に意味を持っていたし、できればこの信念を、次のステップとして見出したいと考えていた。ただ一方で、単なるお弁当企画になるには避けたかった。それは、月に2度ほどnoteで記載する自分自身への反省であり、振り返りであり、これもまた次へのステップだという認識を忘れないようにしなければならない。

そうした中、新鮮味を持って、お弁当と接してくださっている谷田さんふくめたにたやメンバーには、毎度ながら頭が下がる。

12月23日が最終営業日だが、営業できる日数はすでに満席とのこと。

映えある、たにたやの、ゴールは迫っている。

ところで、1月の弁当をどのように提供するかというのは、また別問題。。
(キッチンが一旦なくなるってことですね。。)


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