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門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その15 処暑)

処暑(しょしょ)とは、厳しい暑さの峠を越した頃です。

朝夕には涼しい風が吹き、心地よい虫の声が聞こえてきます。暑さが和らぎ、穀物が実り始めますが、同時に台風の季節の到来でもあります。

ただ、暦の上では暑さがおさまる頃ですが、今年の夏は、暦通りとはいきません。九州~東海・北陸を中心に、厳しい残暑が続いて、今年の処暑、8月23日の最高気温は、大分県日田市や大分県国東市国見で33.6℃など、30℃以上の真夏日地点は13日ぶりに400以上になりました。夏バテや食中毒にかかりやすい時期でもありますので、まだまだ注意が必要です。

昔中国ではこれをさらに5日を一候とする三候 (鷹乃祭鳥,天地始粛,禾乃登) に区分しました。それは、天地が静粛になり、稲がよく実るなどといった時期の意味でもあります。

その中で ちょっとだけ「鷹乃祭鳥(たかすなわちとりをまつる)」をお話しさせてください。

鷹乃祭鳥
〜鷹が捕らえた鳥を神に捧げるように並べて食べる頃

「鷹」という文字がありますが、小暑の七十二候・末候(まっこう)第33番目の節気「鷹乃学習」でもあるのですが、7月に巣立ちをした鷹の雛は若鷹となり、狩りの成功率も上がり、さながら大人の成熟した鷹を彷彿させます。その様子を見計らってか、ちょうど処暑に入る8月下旬から、親鷹は夫婦で行動を取らなくなり、個々で単独行動をしはじめます。

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実は、15回を数える、二十四節気お弁当プロジェクト。たにたや谷田さんも、単純にプロジェクトではなく、食に関わる事業者として、テイクアウト限定になりますが、日付を決めて、お弁当を作り、これまでの常連様、そして新規のお客様に対して、二十四節気お弁当プロジェクトを提供し始めております。おかげさまで、スタートした時から発注も少しずつ増え、半年前には計画できていなかったことが、その半年後生まれている状況です。

そう考えると、まさに、処暑のタイミングで、鷹(=谷田さん?)の様子がまさに、「自ら捕らえた鳥を神に捧げるように並べて食べる」、鷹乃祭鳥」ではないでしょうか。次のステップのために、体力や知力を蓄えておくために、1匹の獲物を仕留めて巣に持ち帰り並べて、またすぐに見つけた獲物に襲いかかる。短時間にできるだけ効率よく狩りをしている様子と言えるでしょう。ちなみにこのコロナ禍は、たんなる「休止」ではなく、谷田さんにもとって、自社事業の見直しの時期、再構築の時期でもあると思います。そのため9月のお弁当プロジェクトは、谷田さんのお仕事の都合で、小休止をする予定です。

ちなみに鷹は陰陽五行思想で表すと「陰」の鳥に属し、これは季節で言うと「秋」のことを指します。陰の気とはいわゆる「陰気(いんき)」ですが、、陰陽五行思想の教学で提唱される言葉であり、「弱る」「衰退」などの消極的な意味合いがあります。すなわち鷹は、「衰退と実りの秋を司る存在」でもあります。つまり「季節の移ろいの象徴」であり、この二十四節気においても「季節の移ろいを象徴する存在」でもあります。秋になると、次の季節は「冬」であり、野に咲く草花樹木を枯らします。この様相が、鷹の小鳥を狩る姿に反映され、秋の訪れとその先の冬の到来が予測されるのです。

実は、中国は新暦でいえば、7月が最も暑い時期ですが、日本の1年内で最も暑いとされるのは8月です。つまり「大暑」の時期がずれており、日本の季節感で例えると、立秋のころが本来の大暑ではないでしょうか。

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さっそくお弁当をいただきました。

まさに、夏を締め括るようなラインナップ。そして、谷田さんが、この夏、豊洲市場に通い、魚の捌き方をならい、今までには登場しなかった品揃えになりました。そして何より、料理した谷田さん自身の「強さ」を感じるようになりました。特に食材に関して、それが堅調です。飲食に携わるものとしては、「ごくごく当たり前」ではありますが「旬を捉える」ということは、より新鮮なもの、その時期に最高に届くものを「全力」でお届けするという意味では、24節気、半周を超えて、達成した、谷田さんの素晴らしさと思います。

ちなみに「牛蒡と紫人参の胡麻和えピンクペッパー」は、谷田さんが提供する料理の真骨頂ですね。肉、魚は食材の良さが出ていますが、「一手間をかける」、その一手を無駄にしない「作り手」としての愛情を感じました。

9月は少しお休みになりますが、ぜひ10月のお弁当も楽しみです。

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