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門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その7 穀雨)

穀雨とは二十四節気の1つで、「雨が百種の穀物を生じさせる時期」を意味します。太陽の位置を表す黄経で30度の時を言い、新暦では4月20日~21日ごろになりますが年によって変わります。

穀雨を迎えると気温は急速に上昇し、寒気が訪れることはなく、雨が降る日も増えていきます。穀物を育てるには絶好の気候で「雨生百穀」(雨が百種の穀物を生じさせる)と言われ、ここから「穀雨」という言葉が生まれました。

ちなみに暦の上での「春の節気」は、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨となっており、穀雨は春の最後の節気です。

そんな春の節気の最後、緊急事態宣言が、とうとう3回目の発令となりました。

時短営業はもちろん、飲食店での酒類提供については自粛を求められており、25日からは、早速商業施設をはじめ、5月11日まで「休業」、またアルコールではなく「ノンアルコールでの飲料提供」といった可変型、また4月末を持っての閉店、閉鎖の物件も多く見られております。あくまでも飲食店の動きだけを見ているとそうですが、社会情勢としては、非常に「あいまいな」状況ではないかと感じました。

つまり「休業」「自粛」はあくまでも「態度」の問題であって、緊急事態宣言に対する回答ではありません。むしろ、蔓延防止ということがポイントであり、それに紐づくサービスを提供する飲食店が槍玉に上がっているという認識です。飲食という行為はもちろんですが、人間というものは「移動」が重なってはじめてビジネスのタネを見出し、新たな資材を産み、次の進化に結びつけるのがポイントです。

さて、2021年の穀雨、穀物を育てるには絶好の気候で「雨生百穀」(雨が百種の穀物を生じさせる)であれば、どんな穀物の種まきをしていたかが問われると思います。このコロナ禍は、災害のような雨だったのか、それとも恵みの雨か。どんな雨でも、穀物は強い。その状況から生まれる芽こそ、2021年後半の軸になるだろう。

さて今回のお弁当のラインナップは、、

◯焼き筍
◯サーモンとディルの卵焼き
◯鯵のグリルトマトソース
◯グリーアスパラと牛肉のソテー花山椒
◯春ごぼうのフリット
◯かたくりの酢のもの
◯わらびと鰹の和え物
◯土鍋炊きごはん「いちほまれ」

おやおや、土で育った食材が、スクスクと育ち始めている。花山椒も、今年の時期は飲食店での取引がすくなく、穀雨の時期でもギリギリ残っており、良いものが市場に出回っている印象だ。近江牛との組み合わせは「たにたや」ならでは。一方で、香りのアクセントから、味付けの変化が出ている。

その変化の矢先、サーモンとディルの卵焼きが一番気に入った。僕は思わず「昔の、スパニッシュオムレツを思いだす!」と一口目に叫んでしまった。。

実は15年前、退職をしたばかりの父親とともに、スペインを旅行した際、タンゴを見て食した、スパニッシュオムレツが印象的で、その時父親は逆に「これは卵焼きではないか?」と話したことを思い出した。父親のスパニッシュオムレツの第一印象が「卵焼き」なら、僕にとっては「サーモンとディルの卵焼き」が「スパニッシュオムレツ」という第一印象だった。

料理は「記憶を甦らす装置」でもある。素晴らしい過去を、思い出させる料理を、少しずつ世に残したいと思う。

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