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24.取引のあるショップとの つながりを 強めるために

取引先のお店があなたの商品を売ってくれるのは当然なのでしょうか?納品したら後はおまかせでいいのでしょうか?私はそうは考えません。お店はあなたと対峙しているのではなくて、同じ方向を向いて一緒に商品をお客様に届けてくれる仲間です。あなたの商品を広めてくれる支援者でもあります。そんな支援してくれる取引先店舗が増えれば増えるほど、あなたのブランドを知り、購入してくれるファンが増えていきます。

テーマ27:おつきあいのあるショップとの関係

◆販促支援をしよう

景気が悪くなり、展示会での新規客獲得が難しくなっています。このようなときは、既存取引先との関係を強化し、各店舗での売り上げ向上を図らなければなりません。しかし、デザイナーの多くは、展示会での新規客獲得は意識しても、既存取引店舗に働きかける方法をあまり知らないようです。

店舗の売り上げを増やすためには、販促支援をしなければなりません。例えば、POPやカタログ、マスコミへの掲載記録をお店に配布して、来店客への情報提供を図ります。ブランドの専用什器を貸し出してミニコーナーを作ってもらい、デザイナー自らが接客したり、ワークショップを開催したりもいいでしょう。
売り上げが好調な店舗があれば、売り方をフィードバックしてもらい、それを他店舗にも教えてあげるのも手。お店との接触頻度を高めてブランドをより好きになってもらい、お店のイチ押し商品にしてもらうのも売り上げ効果が期待できるでしょう。
ほかにも、扱ってもらう商品を集客商品から利益商品へとシフトしてもらったり、マンスリーの新商品や売場催事の提案をするなどいろいろな方法があります。

大切なのは、お店の立場に立って、自分ブランドをどうやってお客様に売ればいいのかということを考え、提案することです。
自分の仕事は、モノを作ることなのか、小売店を儲けさせることなのかまたは、バイヤーに売り込むのか、お店と協力してお客様を喜ばせるのか。視点を変えると、取り組み意識も変わるのでは?

◆催事販売の打診があったら

合同展に何度か出展していると、百貨店やショップから催事(イベント)販売のお誘いがかかることがあります。

お店側の意図は、新しいブランドを紹介することで売場に新鮮さを演出し、新たなお客様の獲得につなげること。
デザイナーにとっても、自身が実際に売場に立って接客することが多い催事販売は、ブランドや商品の魅力をお客様に直接伝えて反応を聞くことができる良い機会です。

まず依頼があったら、お店のお客様と自分のブランドのターゲットが合うのかどうか、その店に来るお客様がいくらぐらいだったら催事で購入してくれるのかという価格帯を調べて、販売する商品を揃えるようにします。
商品としては、そのブランドの集客商品としての役割を担う入門~初級商品を用意すると効果的です。

ひとりでブランドを維持している場合は、1週間や2週間という期間が長い催事には声が掛かっても仕事が忙しくて出られないかもしれません。「週末3日間だけではどうか」と交渉してみても良いでしょう。
また、売場に長時間立つことになり、ひとりでは対応できなくなるのでヘルプしてくれる人を探すことも頭に入れておいてください。

展示会同様、集客に頼って何の対策も立てないのでは、成果も期待できません。将来、自分のお店を持ったときの予行演習だと思って、什器や接客などにこだわってみましょう。お店の人と、どうすれば催事の売り上げが伸びるのか、自分で準備できることは何かを相談してください。

催事のお客様には2つのタイプありますから、戦略はそれぞれに立てる必要があります。お客様のタイプ、およびタイプ別の戦略は次の通りです。

●あなたのブランドや商品を目的にして来場するお客様
事前の告知によって集客を図ることが大切です。熱心なファンになってくれる人たちですから、普段は買えない限定商品やちょっとしたプレゼントを用意して、ブランドへの好感度を高める配慮をします。
●通りがかりで買ってくれるお客様
ファッションは誰にでも売れる商品ではなく、テイストが合う人との出会いが大切ですから、できるだけ多くのお客様が訪れる売場が適しています。
デザイナー自身がモデルになって商品を身につけてプレゼンしたり、遠くから見てもブランドの魅力が伝わる什器や演出小物などで雰囲気作りをしましょう。

◆OEMの話があったら

セレクトショップなどの取引先から、OEM(相手先ブランド商品の製造)という話を持ちかけられることがあります。
もしもあなたが自らデザインした商品で起業したものの、売れ行きが不調で売り上げを増やしたいと思っていたときにこのような話があったら、どうしますか?
もし以下の条件に合うなら、OEMを受けてもいいのではないでしょうか。

1)自分のノウハウや経験が高まる
OEMは、取引先からお金をいただいて製造業者への発注ノウハウを確立していけるチャンスです。自分の資本で1シーズン10型しか作れないなら、得られる経験も10型分。でも、OEMなら少ないリスクで多くの経験を得ることができます。既に業者とのやりとりに自信が持てる段階にあるなら、この条件は考慮しなくて
もいいでしょう。

2)対応する時間が取れる
OEMの仕事は細かい調整に予想外に時間がかかります。自分の好きなデザインができなくなるとか、自分のブランドをしっかり作る余裕がなくなったというのでは本末転倒です。忙しすぎて余裕がなくなるのであれば、断るのがベター。

3)取引先が自分のデザインや製造ノウハウを評価してくれている
単なる便利屋として安く、早く、なんでも言うことを聞くからという発注なら、得られるものは何もありません。

4)相手と互角の立場で取引ができる
もし自分が一方的に不利になるような条件なら断りましょう。

5)取引条件や責任所在が明確
責任所在というのは、例えば相手から漠然と「売れるデザインを頼むよ」と言われてデザインをしたときに、もし売れなかったら責任はどちらにあるのかなどということ。発注時にきちんと確認しておくべきです。また、あらかじめ納期などについて自分なりの標準的なルールを決めて明文化しておきましょう。

OEMを受けるときは、クライアントが出してくる注文に対し、それにかかる労力や仕事の難易度、製造上の課題などをきちんと説明することが重要です。なんでも注文通りにしようと無理をしても、何も説明しなければ、相手は簡単な仕事なんだと値切ってくることもあります。説明すれば、金額などで折り合いをつける方法も検討できますし、クライアントも迷惑をかけてまで無理な注文はしてこないのではないでしょうか。

◆ショップからの別注

ショップからの別注(ショップに合わせて商品の仕様を変更)があった場合。 ブランド名にあまり威力がなかったりデザイナーの経験が浅い場合に、いろいろ
な商品を見て売れ筋を知っているバイヤーから仕様変更を求められることがあるのです。デザイナーの作家性が高く、販売価格が高くても売れるなら、バイヤーもそのほうがいいに決まっています。しかし、なかなかそうはいかないので、売るために仕様の変更を求められるのです。

さて、商品仕様の変更に気持ちよく、迅速に応じていたデザイナー。いつの間にかデザインや素材にまで注文をつけられるようになり、デザイナーだか工場だかわからない、便利に使える内職さん状態になってしまいました。
一度できてしまった力関係を作り直すのは、かなり大変な仕事です。会社が大きくなったときのことを考え、初めからどのような付き合い方をするべきかを考えておくのも創業者には必要でしょう。
また、嫌な店との取り引きを断る勇気もときには必要。嫌な人というのは、一方的に無理難題を押しつけてきたり、嫌なことを平気で言ったり、ルールを平気で破るような人です。そういう人と取り引きをしていると精神的に追い詰められ、消耗してしまいます。

まずは自分の主張をしっかり伝えること。主張してダメなら取り引きはお断りを。取り引きを止めると、売り上げは一時的に落ちるでしょう。しかし、精神的な苦痛が減り、これ以上の消耗を防げます。

理不尽な要求による精神的な苦痛を我慢してまでビジネスをしなくてもいいのが、独立して事業を行う人のメリット。我慢をして精神的に耐えるマイナスの努力を、事業を伸ばすというプラスの努力に転化しましょう。

◆取引先との金銭トラブルがあったら

取引先が増えると、売掛金が支払われないというトラブルに見舞われることがあるかもしれません。その場合の対処法は「、これからも取り引きを続けたいのか」「とにかく回収できればいいのか」によって異なります。

対処法を実行する段階で気をつけるポイントは、初めは控えめにしつつ、徐々に強い意思表明や回収方法をとっていくこと。いきなり強く出ると相手も反発して強行姿勢になるでしょう。
例えば、法的措置を取ればこちらの決意ははっきり伝わりますし、強制力もあります。しかし、その後の付き合いがギクシャクすることも考えてください。これからも取り引きを継続したいのであれば、ある程度事前に連絡してみて良好な関係をベースにお願いし、どうしてもダメなら法的措置を、という流れにしましょう。

一番効果的なのは支払いが遅れないように、常に相手とこまめに連絡をとっておくこと。日頃の人間関係の強化が金銭トラブルを防ぐのです。

段階別の具体的対処法を以下に紹介しておきます。

1)ファクスやメール、電話で支払いを催促
2)内容証明郵便を用いて請求
・のちに裁判になった場合、確実に連絡がついている証拠が必要。相手が確実に受け取った記録が残るのが内容証明郵便
・毅然とした態度と強い決意を伝えることで相手の行動を促す
3)裁判所からの支払督促
・相手所在地の所轄簡易裁判所に支払督促の書面を送付。書面の雛形は、web でも入手可能
・請求額によって異なるが、手続き費用は安価
・確定すると強制執行(差し押さえ)が可能
・相手が異議を申し立てると裁判に。相手の所轄裁判所に出向く
・相手の連絡先が確定していることが条件
・相手の責任が明確でなく、もめそうな場合は小額訴訟を
4)少額訴訟
・60万円以下の金銭の支払いを要求するための訴訟
・手続きは簡単。自分でできる
・1回の裁判で判決が出る
・裁判までに証拠を集める。証拠がない場合は、事前に内容証明で証拠作りを
・金銭債権であれば、自社所在地の簡易裁判所で裁判が可能
・相手が裁判を欠席すると勝訴

※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して公開しています。


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