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夫婦問題での相談です--私の場合は慰謝料請求できますか?それもとされますか?--連載08

離婚時の慰謝料については分かっているようで分かりづらいものです。まずは、どういった場合に、原則として、法律的に慰謝料が認められるのか、というお話ししましょう。

(1)法律的に相手方配偶者に慰謝料請求ができる場合って?

さて、なぜ離婚に伴って慰謝料が認められるのかと言えば、簡単に言うと、婚姻関係というのは法律にも記載のある通り、守られている存在なわけです。
その法律でも守られている夫婦関係を破綻させるような、浮気、暴力等は、法に反したわけであり、そして相手方配偶者の権利をも侵害したわけです。

つまり、簡単にいえば不法行為にあたるわけです。ですので、その不法行為によって受けた損害を賠償してもらうために、慰謝料が発生するという仕組みになるわけです(あくまで分かりやすくお伝えするうえでのお話しですから例外もありますよ。たとえばですが、離婚自体慰謝料といって、離婚をすることで被る精神的苦痛への慰謝料というものもあります。もちろん、それが認められる場合には、それなりの理由も必要ですが)。もっと簡単に言えば、ルール違反をした、その制裁金ともいえるかもしれません。

(2)法律って融通が効かないところもあるよね。夫婦問題の責任があれば、慰謝料請求できてもいいじゃない。

そして、ここからが法律の融通が聞かないところなのですが、客観的に、一方に非・問題があれば、浮気や暴力等に限らず、広く慰謝料が認められてもよいのではないか、という思いもあるかもしれません。

けれど、相手方が離婚原因を作ったとしても、法律で支払いを強制する以上は、どんな理由でもよいというわけにはいかず、あくまで基本的にはという前提付きですが、noteの連載04で書いた民法770条の1~5号の理由が必要となってきます。

なんとなく、離婚といえば慰謝料というイメージがありますよね。ですが、上のような理由から、法律上(判例上)なかなか慰謝料は認めてもらえません(明確な証拠も必要)。 

(3)慰謝料請求が”できる” と ”認められる”の違いとは何?

けれど、上でお話しをした “認められる”というのは、あくまで裁判上でのお話しですから、仮に裁判上で慰謝料が認められないであろう場合でも、協議で、相手方に請求をすることまでを否定するわけではありません。

また、法的には認められない場合であっても、相手方が任意に「支払う」と言っている場合に貰ってはいけない、ということでもありません。

あくまで、相手方が慰謝料を拒んだ場合に、その件で調停、裁判にまでなった時の話です。ですから、たとえ法的には慰謝料が認めてもらえないであろう場合でも、請求をして協議(話し合い)で話がつけられるのでしたら、それは一向に構わないものとなるわけです。

 あまりロジカルな話ではありませんが、協議であれば、法律的に認められるか、そうでないかはなく、支払ってもらえればよいわけですから、強気に出た方が勝ちというようなところもあります。

また、慰謝料を取得するための話の運び方や、交渉方法もあるかと思います。ご相談を受ける中でも、到底認められるはずもない慰謝料が、話し合いで決着が付いている場合も多々あります。

もちろん、決定的ではないにせよ証拠がある場合や、相手方配偶者がどの程度、裁判所の関与を拒んでいるかにもよりますが、法律的なロジック云々は関係なく、前述の通り、どう話していき、交渉していき、そして自分が持っている明確ではなくても、証拠的なものを、どんなタイミングで相手方に見せていくか等、頭を使うことで、慰謝料を確保できることもあると思います。
明確な証拠がなかったとしても、相手方の頭の中には自分の非が存在しています。そして、自分で感じている非・責任というのは、自分にとってはマイナスであるという、そういう理解があれば交渉はしやすくなります。マイナスがある以上は、裁判にされてしまったらどうしようか等、不安は大きくなってもきますので(ただ、そういう相手程、自分を被害者にして、少しでも不安を拭いさろうと必死になりますので、強気な態度で出てくることが多いものではありますが)。

(4)モラハラや精神的虐待による慰謝料の証拠について

なお、私が特に悩ましく思うのが、相手方配偶者から受けた、罵倒やモラハラでの精神的な被害です。こういったものは、目に見える形や証拠がなく、また相手方配偶者の行為と精神疾患とのとの因果関係が明確ではない場合などもあり、なかなか慰謝料ということにはならないようです。

ですが、第三者がその因果関係を認めずとも、モラハラを続けていた相手方配偶者は、自分がしていることは理解しているわけですから、自ら手紙にして相手方に伝えていったり、弁護士さんの方から調停も辞さない旨を伝えてもらうなど、先制して主張をされると、案外出すものは出して早く決着をつけたいと考える方も中にはおられます。

なお、モラハラ傾向にある配偶者は、外面がよいというか、世間体を異常に気にする傾向が高いように思えますので、たとえば、会社の上司などの目上の方に相談をする旨を伝えることで多少は落ち着くケースもあります。ただ、それは根本的な解決ではありませんから一時しのぎのためと考えてください。

※ 会社に言いふらすといった不特定に吹聴するというような伝え方は法的に問題になり。また、「慰謝料を○○万円支払わなければ、会社に言ってやる」というような発言も問題になりますので、お止めになってください。脅迫や名誉毀損になることもあります。 

(5)夫婦問題解決には、特に調停には弁護士さんを代理に立てるべきか?

なお、DV・モラハラ配偶者の中には、自分の中でモラハラなどを正当化し、悪いことをしている感覚が全くない方もおられます。また「そうさせているのはお前だ!」という考えの方もおられ、そういった方の場合は慰謝料どころではなく離婚自体も、「なんで、こちらが離婚請求を受けなければならないんだ」とばかりに拒みますから、あまりに抵抗が強いようでしたら、弁護士さんを代理人に立てて調停を見越して進めていかれた方がよいかもしれません(調停は必ずしも弁護士さんを代理に立てる必要はありません。調停は代理人を立てずに行っている方の方が圧倒的に多いのが現状です。また、裁判まで見込んでいる場合には、調停ではお金を使わずに、裁判まで費用をとっておかれた方が懸命な場合もあります。)。

確かに弁護士費用は安くはないですし、また調停は申立てが簡単であることから、調停で弁護士を代理に立てる方というのは5人に1人とも言われているようです。けれど、調停での説明や、資料の作成、またなによりも心理的なプレッシャーから解放されるということもありますので、仮に自分でできそうな場合でも、それができるか、できないかというのは、一度専門家に相談をしてから決めていってもよいかとも思います
なお、1回目の調停はご自分でされ、厳しいと思えば、2回目からお願いするということでもよいかもしれませんね。

私としては協議や責任がイーブンのような場合には弁護士の代理は必要なく、知恵と交渉で乗り切れるものと考えております。けれど、暴力やモラハラなどがあり相手方配偶者と同じ土俵で話し合いができないような場合には、あまり自分だけで頑張らずになるべく早いタイミングで弁護士の検討をお勧めいたします。
餅は餅屋ではございませんが、ご自分でできることとできないことを整理して、できない部分は専門家に任せた方が総合的にみた時のメリットは大きいものです。

※ 前述した通り、どんな場合でも、弁護士さんを立てた方がよいというわけではありません。タイミングを考えずに、急に弁護士さんを代理に立てることで、相手方の感情を爆発させてしまうこともケースとして少なくありません。また、相手方と直接交渉をしてくれる方もいれば、調停以外では話しをしないという方もおられます。ですので、弁護士さんを立てるタイミングも大切ですが、どんな弁護士さんにお願いをするかという点も、非常に重要です。また、協議の段階では行政書士さんや夫婦カウンセラーへ相談をされ、どうしても訴訟まで検討せざるを得ない場合に、そこから弁護士さんへ依頼をされるのもひとつの方法かと思います。

なお、次回の連載では、具体的な例を持って「私は慰謝料請求をされてしまいますか?」というご相談についてお話しいたしますね。

//行政書士松浦総合法務オフィス 離婚と修復のおきがる相談室

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