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裁判で離婚が認められる5つのポイント--連載04

裁判で離婚が認められるのは、大きくいって以下の5つの場合になってきます。夫婦関係の修復を目指している方も多いと思いますが、そういう方でも、知っておくべきポイントになるかと思います。

(1)裁判で離婚が認められる5つの場合

1.  配偶者に不貞な行為があったとき
2.  配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.  配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4.  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.  その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

※ 離婚がどう進んでいくかという進め方の流れ

この5つは、どの離婚関係の書籍にも書いてあることですので、知識としての目新しさはないかもしれません。けれど、まずはどういった場合に離婚が認められるのか(法的な判断として)という点は、これからお話しをしてゆく上での基礎になるところですし、ご自分にとって関係のないと思われる項目の中に思わぬヒントが見つかるかもしれませんから、読み飛ばさずに進めてください。

また、夫婦関係の修復を目指す場合(←夫婦カウンセリングについて解説しています)でも、自分がどういう立場に置かれているのかを知っておくことは重要な事なので、どうか読んでみてください。

特に、5.その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるときについては、分かりにくいところですので、そこも後半でお話をしていきたいと思っています。

なお、列挙した5つの中で、最も曖昧で分かりづらいものが、『その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき』だと思います。実際これについての相談は多いもので、
“借金”“暴力”“同居義務違反”などが、入るのかな・・、ということは、なんとなく分かってらっしゃるようですが、一方で、たとえば、「借金イコール婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するから離婚できるのね」というように、
単にそれに該当すれば、即離婚が認められるという間違った知識になってしまっているように思います。
いずれにせよ、それに該当すれば離婚が認められるというわけではありませんから、その辺りの勘違いなどについても正しい知識へ書き換えてください。では、詳しくみてゆきましょう。

(2)民法770条第1号 配偶者に不貞な行為があったとき

ここでいう不貞とは、性的な行為そのものですから、不倫はダメだけど、性風俗店なら大丈夫というようなことはありません(本気かそうではないか、商売かそうではないかは関係ありません。離婚自体の可否や慰謝料の点で判決上の違いはありますが、どちらも不貞には違いありません)。
また、同性であっても、性的な関係があれば、それは不貞扱いとなります(同性の場合は、異性のそれとは違いますので、判例上は、不貞というよりは、後述する婚姻を継続し難い重大な事由の一つとして考えているようです。また、証拠が揃っていれば、同性であっても慰謝料請求の裁判を起こすことも可能です。実際、裁判をされている方もおられます)。

ただ、不貞があったからといって、では、裁判にしたらすぐに離婚判決が出るのかといえばそうではなく、不貞の原因、不貞の継続性、結婚年数、子どもの有無等、様々な要素から裁判官が判断をすることになります。

ですので、そういった事情を考慮した結果「まだ夫婦関係が破綻しているような状況ではない(つまり、回復の余地がある)」という場合には、離婚の判決がでないことも十分に考えられます。単的に、不貞=離婚という判断にはならないこともあるという話ですね。もちろん、心情的に許せるものではないかとは思いますが。

なお、不貞や暴力で離婚請求をする際(←DVについて説明しています)には、写真・動画等の証拠が必要となります。ですから、誰が見ても不貞だと分かるような証拠がなければ、たとえ裁判にしても不毛な結果に終わるかもしれません。最近でいえば、LINEやSMS等のやり取りをみて、確実な証拠がとれた!と言っておられる方もおられますが、それだけだと客観性が乏しいために、確証というものにはならないかと思います。

※ たとえ事実があっても、裁判官は、客観的な判断材料を元にジャッジするわけですから、白黒つけるためには、明確な証拠が必要となります。ご自身がお持ちの証拠でどの程度の見込みがあるかについては弁護士さんの相談を利用されてみてください。

(3)民法770条第2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき

悪意の遺棄というのは、正当な理由も、話し合いもなく(コミュニケーションもとれず)、一方的に同居を拒否したり、婚姻費用を払えるのに分担しない(生活費を渡さない)といったことを相当期間継続しているような場合のことを言います(同居義務違反、協力義務違反など)。
※ 相当期間:数ヶ月から10ヶ月程度継続していること(期間的なところは判例で変わってきます)

通常は、離婚原因としては、上記の他、相手方配偶者の不貞や借金なども併せて問題になるため、あまり悪意の遺棄だけが取り立たされることはないように思います。なお、「妻/夫が家を勝手に出ていった。同居義務違反ではないのか!」という相談をよく頂きますので、そこについてはこの後で少し詳しく説明します。ただ、単に自宅を出ていったことイコール悪意の遺棄にはなりません。

なお、悪意の遺棄が認められれば、慰謝料請求をすることも可能となりますが、請求できるということと、請求が認められるということは話が変わってくるところで、これは不貞の慰謝料請求などでも同じことが言えます。

(4)民法770条第3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

こちらの理由で、離婚が認められるには、生死不明な状態が3年以上“継続”していることが必要で、たまに電話や手紙が届くような場合は、生きていることが明らかですので、この理由にはあたりません(ただ、そういった場合には、第2号や第5号を理由に離婚となる場合もあります)。
また、警察への捜索願などをせずに「3年間不明です」というのは通りませんから、できるかぎり探してみたという事情も必要ですよ。

(5)民法770条第4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

第4号は医学的見地が必要ですので、その判断はドクターの鑑定等を参考に裁判官が下します。一般的には“躁うつ病、統合失調症など”が対象となりますが、その病気に該当しても、今後回復の可能性のある場合には4号としては認められないということもあります。
また、その病気に該当することイコール離婚が認められるという話でもありません。
なお、精神病に属さないもの、たとえば「アルコール中毒、ノイローゼ等」は、第4号には該当しません(とはいえ、アル中で、日々暴力を振るうというような場合は、第4号ではなく、第5号として扱われるでしょうが)。

ちなみにですが、第4号に該当して、やむを得ず離婚となる場合でも、病気を患っている相手方配偶者が離婚後に困窮しないよう、経済的な援助や病院などの体制を整えてあげることが条件となることもあります。ですから、何の面倒もみずに相手方配偶者の親族に丸投げのような場合には離婚判決が出ないことも、また条件が厳しくなることもあると理解してください。

(6)民法770条第5号 その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

冒頭でも申し上げた通り、こちらは、曖昧ではっきりしない感じがしますが、簡単に申しますと、第1号~第4号以外のものは全てここに入る、と言えるでしょう。
たとえば「性格、価値観の不一致、暴力、虐待、セックスレス、犯罪によって相手方配偶者が服役している場合、宗教、親族との不仲」など様々な理由があります。

ただ、上記に該当をしていれば、必ず離婚判決が出るかといえばそうではありません。

あくまで、上記理由によって、誰が判断しても“婚姻を継続することは不可能なほど夫婦関係が破綻している”“相手方が故意に婚姻関係を壊そうとしている”と思われるようなレベルが必要となります。5号は幅広い表現ですが悪く言えば曖昧です。
ですから、5号を理由にした離婚判決には、第1~第4号と同視できるほどの原因レベルが要求されるのです。
なかなか分かり辛い表現かと思いますが、法律はなかなか離婚を強制してはくれない、というような状況なのです。

また、悔しいことに、暴力は、そもそも犯罪であるにも関わらず、離婚原因として認められるには“日常継続的”というような条件が必要で、つまり“一過性”の暴力の場合には、法定離婚原因とは認めらないことも多々あるということです(もちろん、一過性であっても、あまりに酷いものであれば話しは別ですが)。
また、夫婦の精神状態なども含め、様々な原因から判断をされますので、暴力が認められ、離婚、さらに慰謝料というのはハードルが高いのが現状のようです(慰謝料が認められても、治療費程度ということもあるようです)。

いずれにしても、まだ夫婦関係に回復の余地が見られるような場合には、離婚判決はでません。そして、第1号~第4号のように、明確に表示されているわけではありませんので、基準は厳しいわけです。

そういったことから、相手方配偶者の暴力が原因で離婚を進める場合(←DVから逃げるためのヒント)は、十分な証拠を用意して進めてゆく必要があります。なお、どういった証拠を集めておけばよいのか、どこへ相談をしておけばよいのか、という点については、別途説明をする予定ですが、上記の「相手方配偶者の暴力が原因で離婚を進める場合」へ詳しく説明しておりますので、そちらをご参照ください。

それともう一点、皆さんが聞きたい話しとしては、性格・価値観の不一致についてだと思います。おそらく離婚原因で一番多いのが、これにあたります。これも確かに5号に該当する離婚原因にはなるでしょう。ただ、これに該当するかどうかを客観的に判断することは難しいですから、通常は、たとえば別居・暴力・借金など、その他のものと併せて5号に該当しての離婚となることが多く、よって、性格・価値観の不一致のみを理由としての離婚判決というのは、あまりないものとなります。その内容を具体的に落とし込んでいく必要があります。

いずれにしても、第5号に該当する場合で、相手方配偶者が離婚を拒否すれば、なかなか離婚は難しいですから、まずは気持ちを別居の方向に切り替え、ある程度時間が掛かることを覚悟したうえで、進めてゆくことも必要かと思います。

なお、最近、モラルハラスメントによる離婚請求(←モラハラについて解説しています)というご相談もいただきますが、多くの場合、相手方から離婚請求を受けて、離婚原因を聞かされた時に、初めて、自分がモラハラをしていたのか・・ということに気づくケースはとても多いものです。
心のどこかで、夫婦の関係を絶対と思っている中で、次第に相手方に寄り添うことよりも、自分に寄り添って欲しいという気持ちばかりが大きくなり、結果として心無い態度がエスカレートしていった結果という部分もあります。また、モラハラをしてしまっている方は、あまり良い言葉ではありませんが、外面のよい方も多く、また自分が傷つくことを必要以上に恐れている心理から来ていることもあります。
だから思うこととしては、自分のことを分かって気にはならずに、自分の事をしること、そして相手方の気持ちを知ることの大切さを忘れないようにしていただきたいと願うばかりです。

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