久松真一 「禅芸術七つの性格」
⑴不均斉
「いびつ」「ひずみ」であり均合がとれていないこと。「真」よりも「行」、「行」よりも「草」。いびつになっている円。均等ではなく左右不対象である。
⑵簡素
くどくどしくしないということ、或いはさっぱりしている。墨一色の墨絵、素朴さ粗放であり、簡素を徹底すると「無一物」や「一」ということになる。障になるものがない。
⑶枯高
長ける、老ける、枯れるということ。初心者や未熟な若い者の到底達し得られない老巧な芸の極致、真髄。極則、骨、生死なき永遠の生命、満ち欠けのない無尽の源泉。
⑷自然
故意とらしくないということ。無理がなく「無心」「無念」という言葉に相当する。「さびたるはよし、さばしたるは悪し」自然に寂びるものであり、無理もなく故意とらしさがない。
⑸幽玄
奥床しさということ。全体を外へ表さないで、内に含蓄すること、、寧ろ隠されていること。細かくはっきりと描かれているというよりも、内にさまざまな内容が想念されて無限の余韻を感じることができる。
⑹脱俗
規矩準縄を脱し、物事に関わらないということ。酒脱という言葉でも表される。超法則的な「無法の法」、自由自在。
⑺静寂
静けさであり、内に向けられた向内的な精神。騒がしくなく、「落着きと静けさ」。さまざまな音を出しながら、われわれを静かに落ち着かせてゆくようなもの。心を何処までも無限な静けさへ導いてゆく。静かさの静寂は、「動中の静」という言葉によっても極めてよく言い表されている。
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