【マッチレビュー】 課題に正面からぶつかっていこう! 2019年J1リーグ 第6節 川崎フロンターレ×セレッソ大阪
皆さんこんばんは。
今節の第6節のセレッソ大阪戦を振り返ります。
試合は1-1で引き分け。
前半はセレッソ。後半は川崎のペースで進んだ試合は、その流れの通りセレッソが前半に先制し、後半に川崎が追い付いてドローという展開でした。後半の出来からしたら勝てる試合だったと思います。決定機の数は上回っていましたので悔やまれる引き分けだったかなーというのが率直な感想でした。
早速内容の方に入っていきます。
図が大きすぎて長くなってしまいました。。
スタメンと噛み合わせ
川崎フロンターレ(水色)
<GK>1チョンソンリョン
<DF>2登里 5谷口 3奈良 27ラルフ
<MF>6守田 25田中 8阿部 14憲剛 41家長
<FW>20知念
セレッソ大阪(白)
<GK>21キムジンヒョン
<DF>3木本 22ヨニッチ 16片山
<MF>14丸橋 11ソウザ 6デサバト 2松田
<FW>9都倉 10清武 8柿谷
川崎ボール保持「右サイドでのチャレンジ」
上の噛み合わせ図でも書いた通り川崎のポゼッションに対して
セレッソは5-4-1のブロックで対応します。
但しボールサイドのシャドーとWBは1列上がって4-4-2の形になることも。
9番都倉は川崎の3番奈良がボールホルダーとなった時に左へのコースを切るように間に立つことが多くありました。
川崎を右サイドに閉じ込める為の立ち位置だったと思います。
そして上図はその右サイドに閉じ込められた時の川崎の選択肢です。(図では2つになってますが3つありました。書き忘れです。。)
①今節のハイライトでもある知念への縦パス。
ほぼノープレッシャー状態ではありましたが、セレッソの中盤4枚の間を通して縦パスを供給していました。
奈良も左に出すふりをして縦に素早く出すようにしており、CHを動かすことでコースを作れていました。
②8番柿谷を動かしてその裏を使う。
奈良の前には柿谷が立ち、41番家長へのコースを切っています。
家長が目の前に降りてきても、アプローチに行くことよりもブロックを崩さないことを優先していたと思います。
その中で家長は柿谷の前でボールを晒したりトラップを浮かすなどして前に引き出す餌を撒いていたように見えました。
成功する回数は少なかったですが引き出せたときは27番ラルフを経由して前線にボールを供給していました。
③逆サイドへのロブパス。
ブロックの外から外へのボールですが左サイドは阿部か登里でどちらかは外に張るポジションを取ってくれているので、逆サイドで孤立しない距離間を取れている場合や攻撃のスピードUPが出来るときに、この選択をしていたと思います。
上記3つの選択肢以外だとラルフにボールを渡して家長・憲剛の3人で突破を試みます。というかそれが1番多かったですね。
セレッソもそこに誘導するように空けていたと思います。
川崎がアタッキングサードでサイドから崩す時は、ペナ角付近で相手のDFを動かしてスペースを作って侵入する狙いがあります。
阿部「右サイドはコンビネーションで成熟していないし、まだチャレンジしているところなので、仕方がないところはある。」
川崎フロンターレ公式HPより抜粋
相手のWB-CB間からラルフか家長がニアゾーンに入っていきDFとGKの間かマイナスのクロスを入れてシュートチャンスを作る狙いがあったように見えました。この阿部のコメントの通り、思うようにスペースを作ることが出来ず攻撃が詰まってしまう場面が多くあったなーと。
ラルフも自分がボールをもってどう動かすかというよりは、憲剛・家長にボールを預けて相手を引き付けるorスペースに入っていく役割を担っていると思われます。まだラルフのボールを扱う精度は川崎基準に達していないかなと感じるので、まずはその役割を担えるようになることからかなと。
それが出来るようになる=相手の動かし方が分かるということだと思うので、技術が追い付いたときは右サイドの崩しをラルフ主導で行えるようになるのかなーと想像してます。
ネガティブトランジション(攻→守の切り替え)
川崎はボールロストするとボール付近の選手がボールホルダーにアプローチしつつ近くの選手へのコースを切りに行きます。
すぐに奪えれば良いですが、奪えずともスペースを埋める時間を作って相手の攻撃を一度止めることは最低限しなければいけません。
上図では阿部がCHの位置に戻ってスペースを埋めてくれたおかげで6番守田がボールサイド寄りにポジショニングすることが出来ていました。
右サイドでのポゼッションが多い中で、左サイドにスペースを埋めに動いてくれる阿部が居てくれるのはネガトラ時に助けになっていたと思います。
毎度このように相手の攻撃を止められていたわけではなく、前半はボール付近のコースを消せずにプレスを交わされて前進を許してしまい、相手にラインを押し下げられる場面も散見されました。
ロティーナ監督「今日の試合に関しては意図を持って二人のサイドを変えました。一つ具体的な狙いがあってそういう順序にしました。」
川崎フロンターレ公式HPより抜粋
また、今節は2シャドーの立ち位置を交換していたようです。
両サイドの違いはネガトラ時でのSHの貢献度(CHのフォロー)と連携面。
川崎LSBの登里も阿部同様に気の利く選手で全体のバランスを見て動いてくれる選手なので、柿谷が使いたいスペースを消される可能性があります。そこに対するように阿部登里コンビの意図を理解できる清武を配置して対抗する狙いがあったのかなーと。ふわっとしてます。苦笑
意図を完全には汲み取れなかったです。
セレッソボール保持「立ち位置で作る優位性」
■ビルドアップ
①GKなしパターン
川崎はセレッソのビルドアップに対して片方のSHを上げて3CBに対して同数にして対応します。1列上がったサイドのSBはWBに当たりに前に出て対応。
そしてDFラインはスライドします。
セレッソ2CHはしばしばDFラインに寄っていきボールの出し入れをサポート。川崎の2CHが付いていってしまうとDFラインの前に大きなスペースが出来てしまうため守田は前に出ずにステイすることが多かったと思います。
川崎の前線がプレスをかけに行く場面では後ろも連動して前に出たいところですが、2シャドーが川崎SBを抑える位置に立つため中盤との距離間が広がりCHのカバーしなければならないエリアが広くなりがちでした。
清武が川崎CHの視野に入り中のフォローを遅らせる動きをしていました。セレッソの先制ゴールでもそういう動きがキーの1つになっていたと思います。
守田「前半は45分で守備の形を作るというか、ボールの奪いどころを考えていたが、相手に自由にやられてしまったところがあった。攻撃に関してはチャンスもあったし決めきるところだが、守備に関してはもう少しはっきりしたかったし、奪いにいくところと我慢するところのメリハリをつけなければいけない。」
川崎フロンターレ公式HPより抜粋
守田もコメントしている通りですが、前に出されたときにどこで奪うのか。これが前半は特に定まっておらず2CHの動きが後手に回っていたような印象がありました。
②GKありパターン
GKからビルドアップをする場合RCBはサイドに開いてWBを押し上げます。
その右サイドでは2(LWB+RCB)対1(LSH)に、左サイドでも同様に2対1の状態になっています。このパターンでもセレッソ2シャドーは川崎SBを抑えるようにポジショニングして前をケアできないように働いてました。
セレッソは選手の立ち位置によって相手の守備にスペースとフリーマンを作り出していました。上図で41番家長が前に出て3番に当たると14番がフリーになり前進するスペースが生まれます。11番がスペースに入って14番とワンツーでサイドを上がると今度は2(8番+14番)対1(27番)の状況を作れる。みたいな感じです。
■崩しの局面
川崎を押し込んだ局面ではボールサイドのCBがサイドに開いて高い位置を取り数的優位を作ろうとします。また2シャドーはCHとSBの中間にポジショニングをしてアプローチを迷わせるようにしていたと思います。
後ろでは5人が2-3の配置を作ってその5人が近すぎず遠すぎずのポジショニング。ポゼッション時の逃げ場としつつネガティブトランジションに備えられるようにしていたように見えました。
セレッソはここでも同様にポジショニングで川崎に対して優位を作り攻撃を展開しようとしていました。
更に、川崎は押し込まれてしまうと中々ボールを奪うことが出来なくなります。4-4のブロックを作ったとしてもボールホルダーに強くアプローチに行くわけでもなく、どこでボールを奪いたいのかを見つけることが出来ませんでした。
ロティーナ監督「フロンターレは相手チームの陣地でプレーするのが快適なチームで、相手を押し込んで攻撃する、ディフェンスの時も相手の陣地でプレッシャーをかけるということに特徴のあるチームです。逆に自分達の陣地でプレーする時にプレーに苦しむ。攻撃はそうではないのですが特に守備のところで、そういう特徴のあるチームです。」
川崎フロンターレ公式HPより抜粋
ロティーナ監督の試合後コメントにあるようにボール非保持時の川崎は相手陣内でこそ強さを発揮するものの、自陣内に押し込まれるとその強さが見られなくなります。今シーズン開幕してからそんな状態が続いてますし、昨シーズンにもそうなる期間があった気がします。
今節でも押し込まれると相手のミスによってボールをもらうことは出来ても、自分達で奪い返せたシーンは1度か2度くらいだったと思います。
今節の同点ゴールのちょっと前のシーンのように、ボールを持てれば自陣内でも相手の脅威になることは出来るんですが、ボールを奪い返すプレーに余地を感じます。
その要因の1つはSHのフォローの遅れかなと。
SBが当たるにしろCHが当たるにしろ、アプローチに行くということは=スペースを空けるということなので、そのスペースを周りの選手に埋めてもらわないと逆にピンチを招いてしまいます。
行くべき時にアプローチに行けないのは選手の距離間に問題を抱えているからなんじゃないかと思います。多分。。
上図のように前線4人と後ろの距離間が空いていると、戻るにも時間がかかるし2CHは大きなエリアをカバーしないといけない。今節はセレッソがピッチを大きく使うチームだったのもあり、距離間のところをCHが担うことになってしまってました。
まずは自陣に川崎をおびき寄せて前と後ろの間を使うというのは狙いだったかもしれません。CB→WB→CHという流れで上図2枚目の家長の裏のスペースを使われる場面もあったので。以前の記事でもCHのタスク過多について書きましたが、バランスを調整する必要はあるのかなーと思います。
まとめ
川崎の同点ゴールは後ろで落ち着いてボールを回しながら、相手の中盤の背後を取ってスピードアップした前進でエリア内に入っていったことで生まれたものでした。自陣内でボールを持った時の強さが出たシーンだったかなと思います。逆に前半はそれが出来ずに相手のやりたいように守られてしまった印象があります。
中村憲剛「前半は、そんなにバタバタしなくても良いところで、テンポというか間というか、相手を見てやれていないというのを感じていた。相手は前からプレス来ているわけでもない。後半ぐらいしっかりと、中と外、右と左と振れば、空いてくるディフェンスだった。ちょっと無理めに縦パスを入れたり、ためてためて縦パスを入れたりとか、そこを閉めてくるなら、外を使えばいい。外に広がったら、また中に戻せばいい。前半は、それがちょっと足りなかった。」
川崎フロンターレ公式HPより抜粋
鬼木監督「まず前半のところはいろんなところのスピードを上げすぎてしまっていたというところ。自分たちの走るスピードもそうですし、パススピードを含めて、コントロールをもっと自分たちの体が動かしやすいようなスピードでやるべきだった。そこのところで少し慌ててしまったかなと。そこは前半が終わってハーフタイムに選手たちに話して伝えました。そういう意味で言うと、後半は立ち直ったと思います。ただ、判断というところで言うと、もっと逆にこれはスピードは上げていかないといけないという風に思っているので、両方がもっとうまく噛み合ってくればいいかなと思います。」
川崎フロンターレ公式HPより抜粋
2人のコメントの通り、攻撃に焦りや攻め急ぎがあったのかもしれません。
セレッソの守備は川崎が昨シーズン苦手にしていた5-4ブロックを作り中を絞めてカウンターで仕留めるやり方に見えました。
これまでの経験から川崎としては少しでもスペースを作れたら、そこを使って守備をこじ開けたい。そのスペースを使うタイミングやテンポが気が急いたことで速くなってしまい自分たちで攻撃機会を逸してしまったのが前半だったのかなと。先に失点したのも影響あったかもしれないですね。
逆に後半は相手を引き付けて出来たスペースを周りがフォローに行ける状態を作ってから使うようになったので、落ち着いてやり直せていましたし、落ち着けた分ベクトルを相手に向けられたのかなと。
相手を見る為の余裕を持てるかが継続してキーになってきますね。というかそれこそが川崎の強みだと思います。
選手たちのコメントでもあるように徐々に内容は良くなってきていると思うので、1個ずつ丁寧に積み重ねていって強固な地盤を築いていきましょう。
最後にラルフについて。
川崎ポゼッション時のウィークポイント。ボールの奪いどころとして相手に認知されてしまい、苦い思いもしているかと思います。
今節も知念がゴールを奪った直後に憲剛と家長に詰められるシーンがありました。。MVP選手2人に詰められるとかプレッシャー半端ない。メンタル大丈夫かしら。でもこの2人の要求に応えられれば=代表も見えてくると考えられるんじゃないかと。
今節のハイライトである奈良の縦パスも相手がサイドを完全に捨てて中をがっちり固められたら、通らなくなるでしょう。
相手にサイドを捨てさせない為にも、というか今の川崎対策を打ち破るにはラルフの活躍は必要不可欠です。
メンタル的にしんどくても、それは心の成長痛で今後飛躍するための起爆剤になってくれるでしょう。
今季タイトルを1つでも取れるかどうかはラルフにかかっていると言っても過言ではありません(過言かも(笑))
ラルフは馬渡やマギーニョが計算できるまでの繋ぎでなんかじゃありません。柏の降格が決まって「小池欲しい!」とか、「エウソン戻ってきてー」とか少しでも思ってしまった自分を見返す活躍を期待してます!
川崎に来れば成長できる!という対外的な宣伝にもなるし(笑)
今回はこの辺で。それでは。