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変わり者なんです。

食洗機と洗濯機が働いている音がする。
目が覚めて、洗面所で髪の毛をセットするのだけれど、黒髪ボブに少しウェーブがかかった自分を見て、寝直そう…と思う。
そう、これは夢、覚醒していく途中の。

夜に高校のクラス会があると思っていた。
何人かの同級生の顔が思い浮かんだのは、昨日、取引先の若旦那さんと話してたからだ。

「僕、〇高でした、楽しかったですよ?」
進学校で勉強がかなり大変だといわれているその高校は、私も通っていた高校だ。
「私も実は〇高でした。途中で辞めちゃいま     したけど…」
「えっ!?そうなんスか!?」

それから、自販機で彼のコーヒーを出しながら、軽く私の変わった経歴を話す。
「スゲーっすね!!めちゃ面白いじゃないスか!行動力ありますねー!」

「変わり者なんです、私」

彼とは一回りも違うから、きっと知ってる先生もいないだろうけど…と話していると、
「ハットリ先生(仮)とか、陸上部で教えてもらいました」

「ハットリって…生物の?」
「そうっス、あの体がガッチリした」
「ハットリタカヤ?」
「そうっス!え、知ってますか?」
「私、同級生だよ。一緒に陸上部で走ってたもん、ハットリくん」
「そうなんスかー!」

そうか…彼とは教師と生徒くらいの年の差があるのか…と長く生きてたことを思い知る。

もしもあのままあの学校にとどまって、受験してどこかしらの大学へ行っていたら…と思ったことは幾度もある。その度に、
「でも、あの時『どうしてもそれが出来ない』と思ったから、その後、朝も夜も働いて、一人ぼっちでも個人留学したんだ」と思う。
それが『覚悟』だったのか、『無謀』だったのかわからないけれど、あのころの行動力は、我ながらすざまじかったと思う。

きっと私のことだから、大学へ進んだとしても、どこかの時点で、「大幅に舵をきりたくなっちゃった…」とか言い出しかねない。

「変わり者なんです、私」

シャレみたいにそう笑って、やってきたけれど、いつもそう口にすると、心の奥がキュッとなる。きっと私は、心底『わがまま』なんだなと思う。人と違うことを選んできたのは自分なくせに、人と同じならばもう少し上手く生きられたろうか、と。

「お前は道具をたくさん持ってるのに、
   使い方が下手くそすぎるな」

昔 数学の先生に、言われた言葉を思い出す。

本当だよ、先生。

もう少し上手いこと生きられないものかね。

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