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「読書感想文」汝、星のごとく

2023本屋大賞受賞作。
凪良ゆうさんの小説。

凪良ゆうさんの作品は、
「わたしの美しい庭」「流浪の月」を読んだことがある。
とても好きな世界観で、何よりも、著者の綴る「自由」がしっくりきた。

LGBTQ、ヤングケアラー、アル中、近すぎる地域性。普通にあることなのに、疎まれるよな、まっとうから外れたとされる関係。 

は?   まっとう?

この作品を読みながら、私は櫂には移入できた。反対に暁海には、常にもどかしかった。

北原先生と、瞳子さん。
正しくはないけれど、ブレない人。
やってることはむちゃくちゃやのに、かっこいい。外の声に心をみださない。誰に何を言われたとて、かまわないのだ。

ありふれた二文字「覚悟」。
ただ、この本を読みおえたあとにはきっと、違う重みをもつ。「覚悟」。

「自由」の二文字も。
 
LGBTQ、マイノリティ、ヤングケアラー、社会の中で、ズレたり、違ったりが、容易には調整しにくい世の中だ。個人にとっては時に絶望的に。

けれども一方では、誰しもが知っている。

人は間違いをおかすことも。
正しいことだけではないことも。

効率よく記された人生を、忠実に進むことが正しさだろうか。攻略本通りにアイテムをゲットし、着実にレベルアップしていくことが、正しさだろうか。そもそもの設定通りに行かなかった場合は、正しくなく、そんな人生は非難されるに決まってる、だろうか。

そうではないことを知っている。

分かりやすくパッケージングされた関係は、社会的にも受け入れやすく安心感がある。私自身、結婚して安堵したのは、少なくとも「既婚者」「配偶者」というような、社会的なパッケージングに納まる安堵感と、制度でもある。親も親戚もわかりやすく納得する。

そればかりではないことは知っていながら。

そうじゃない方。
 
は?まっとう?

ごめんけど、
そうじゃない方がさ。
制度に当て余らん方がさ。
マイノリティがマイノリティじゃなくて。
まっとうってそんなにおるんかな。
マジョリティはどっちだ?

こんな真面目でおとなしい日本に、
深いところでさざ波が起き、
やがて大きな波になるといい。

大きく息を吸って
大きく息を吐け

個は個だと、自由に受け止め、
流るる川に浮かぶ花筏が
自然に寄り添っていくように
二つ三つ
四つ五つと
寄りつ戻りつ流れてゆくといい

綺麗な装丁と
美しい言葉に

熱く煮えたぎる思いが
したためられていた。




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