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踊り子。

浴衣を羽織り、帯しめて、
どうかしら? 
おはしょりが長いかしら
衣紋は抜きすぎかしら

いいえ、
素敵な踊り子さんですね、と

まだ暮れきらない夕暮れに、
まだ火の入らない提灯の
山車を囲み、輪になって

初は「炭坑節」から

ほって ほって またほって
かついで かついで
ながめて ながめて
おして おして
ひらいて ちょん

さぁさ、入った入った
そんなところで見ていないで、と

小さな浴衣の金魚帯、井筒紋に腰の貝ノ口、揃い浴衣の踊り手と、吉原繋ぎの青法被

サノ ヨイヨイ

郡上おどりの「かわさき」も、
「そうだろ節」も、「河内おとこ節」も

気がつけば日が落ちて、
ぽぉっと赤提灯の火が灯る

祭はいよいよ興にのり、
山車を囲む一重も広がる

ソウダロ ソウダロ ソウダロヨ

酔いに任せて、踊らにゃソンと
おまわりさんも誘導棒手に、踊り出す

どこぞの親父も、おばちゃんも、
「わしゃ踊れんぜ」
と笑いながら

アー ソンレンセ

ひらいてちょん、ちょちょんがちょん
老いも若きも、まわってちょん

さあさ、輪になり、踊らにゃソン


三日月の浮かぶ宵のこと
はやし唄が鳴り響く

笹の葉に赤提灯がゆうらりと
からんころんと浴衣娘の下駄がなる


ひらいてちょん


ちょちょんがちょん


赤提灯の火が灯る

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