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「読書感想文」くらまし屋稼業

直木賞作家今村翔吾さんの時代小説です。

棒手振りは町々を歩くことから、人より噂を耳にするらしい。
「察しがいいね。この江戸には大金さえ払えば、神隠しのように姿を消してくれる奴がいるらしいのさ。何でも三十絡みの武家の男らしい」
ここで棒手振りが首を捻った。
「男?俺はすらりと背の高い女って聞いたぜ」
「色白の役者のような美男子だって話さ。稲荷様の化身って皆いっているよ」

本書  序章より

時代小説というものを、あまり読んで来なかった私。時代背景や、言葉遣い、言い回しに馴染むまで、少し足踏みをした。のだけれども、「神隠し」「すらりとした女」「美男子」のワードが好奇心を煽り、気がついたら夢中で読んでいた。

浅草界隈を牛耳っている香具師・丑蔵の子分、万次と喜八を、くらまし屋が「神隠し」のように二人を晦ませる。
追手は江戸中の宿場に網をはり、躍起になって二人を捕らえようと必死である。
平九郎、七瀬、赤也のそれぞれの「強み」を活かし、追手を煙に巻いていく様子に

「あ〜、そういうことか〜」

とワクワクする。
平九郎の並々ならぬ剣の腕、七瀬の分析、赤也の変装。ワクワクする。

もちろん時代小説、1742年公事方御定書により、拷問が制度化された世の中であったり、各地で飢饉や百姓一揆が起き、地方の武士の生活は苦しい時代にある。
二人を晦ませていく様子を読んでいるうちに、着物を着て草鞋を履き、賑やかな居酒屋「波積屋」で、少しの肴と盃を傾けている気になっている。
「お利根さん!早く逃げて!」と呼びに行きそうになる。

「くらまし屋稼業」はシリーズもので、現在8作出版されている。本書はその第1巻。

平九郎の「真の顔」はまだまだ謎であり、気になる強烈な個性をもつ登場人物も出てきている。
このまま一気に、2巻3巻と読み進めたい。

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この本は、夫が先に読んでいて、次女もそのあと読んだのだが、どハマり。
「めっちゃ面白いから、読んで!」と何度も勧められていた。次女は当時、中学で図書委員長をしていたのだが、司書さんにこの本を取り寄せてもらうほど「おすすめ」だと。
小さな頃から「忍者」が好きで、秘密裏に事を解決していくような話に目をキラキラさせていた次女がハマるのは、とても解る。
ドラマ「七人の秘書」の、バンさん(江口洋介)のことが大好きなのとも繋がる。
ワクワクしながら読んでいこうと思う。


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