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【書評】アフターデジタル

こんばんは、金清(@KYP_1223)です。

皆さんは平安保険を知っていますか?アリババ、Tencentについて時価総額が中国国内で堂々の第3位の保険会社です。

保険という商材は、それが必要となるライフイベントが起こらない限り能動的に接触を試みない商材です。企業は顧客との接点を生むことに苦心していましたが、平安保険は、これをユーザーの健康管理を行うアプリをリリースすることで解決しています。

しかもその解決法が徹底しており、1日の歩数を換算し、アプリ内で利用できるポイントを付与するシステムがあるのですが、それは受け取らないとその次の日には消滅してしまうのだそうです。毎日ログインをする必要性を生み出し、結果平安保険は顧客、見込み顧客の行動データを日々収集することが出来るのです。シンプルだけど、だからこそインパクトのある試み。

この、顧客体験ごとhackするようなサービスが日々生まれ、消えていくというサイクルが尋常でないスピードで行われているのが中国であり、その中国市場での変化を現地に滞在するビービット 藤井 保文さんの著書である、「アフターデジタル」です。

冒頭の平安保険はもちろん、OMO(Online Merges with Offline)という発想の元、事例としてアリババが生んだスーパーマーケット「ウーマー」や、グローバルコーヒーブランドであるスターバックスすら脅かす「ラッキンコーヒー」など、驚きの事例が様々で、それらをキャッチアップする、というだけでも充分読み応えのある書籍でしょう。

しかし金清が本書籍で強く学びを得たポイントはここではないのです。この本には、CX・UXといったエクスペリエンス系の用語の影響をより拡張する、素晴らしい視点が組み込まれているように金清は思いました。

そもそも大いに誤解をしていたのですが、金清にとってCX・UXというのは顧客のファネル毎にどのようなデジタルでのコミュニケーションをするのか?程度にしか思っていなかったのですが、この本を読むことによりイメージを更新することができました。


<CX・UXに対する誤解>
- 各ファネル毎にどのようにコミュニケーションを行うか?その戦略とアウトプット

<CX・UXのあるべき姿>
- 企業・ブランドが提供し、得られる生活体験そのもの

どういう事か?というと、僕らはこれまで企業・ブランドが提供するものは

実際に手に取り、使ったり食べたり、身につけたりできるもの=商品
実際に足を運び、その場で経験できるもの=イベント
など


これらがパッと頭に思い浮かぶものだと思いますが、アフターデジタル以降の時代は、企業が提供するものはそれらのスポット(点)毎の体験に留まらないんですよね。提供された商品・イベント・アプリなどはあくまで起点であり、その後の生活で継続的に接触する機会もすべて提供価値に含まれる、ということです。

先に記載した平安保険の例がまさにそれです。アプリのダウンロードはあくまで起点でしかなく、一日どれくらい歩いたか?どんな病院をアプリ内で検索したか?歩いて貯めたポイントをどんな健康商材を交換したか?全てが行動データとして記録される事で、健康にまつわる全ての行動のクオリティが日々向上していくという事、なのだと思います。

だからこそ、CX・UXというのはアフターデジタル以降にブランドが提供すべき商品の代わり、というか進化形態、であるべきなのだと思います。(頭の悪い表現になってしまいますが。。)

つまり、全てをまとめると企業と顧客との関係は今後は、サービスを提供する(to You)ではなく、常にサービスというかたちを取り寄り添う(with You)を意識しなければならない。これがアフターデジタルにもある学びだと思います。

その他にも様々な学びがあるのがこの本です。マネジメント層主導でものすごい速さでオンオフ関わらずPDCAを回す組織体系、日本というマーケットにいる僕らが何を強みとして意識すべきなのか?などがこの本には書かれています。

中国市場からデジタルの最先端を学びたい!キャッチアップしたい、と思う方にはもってこいの本だと思いますし、最新事例を把握する、という目的だけでも読みやすさも相まって、最適な本だと思います。


ちなみに金清がこの本を読んで最も驚いたポイントは、スウェーデンでは身体にICチップを埋め込む事で、改札を手をかざして通ったりする生活が既に始まっている、という事実でした。すごい..埋め込んでみたい..。


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