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たとえ、小さな一歩でも。

「少年B」が生まれて、まもなく20年になる。

と、言ってもハタチの誕生日を迎えるわけではない。
このハンドルネームを使って今年で20年になるという話だ。
「キリバン踏み逃げ禁止!」の時代、「名無し厳禁」の掲示板に投稿するために、軽い気持ちでつけたこの名前と、人生の3分の2近い時間を共に過ごすことになるとはおもわなかった。自分がいちばんおどろいている。

当時はポケモンの金・銀が発売されたころ。たしか、1999年の冬休みに入ってすぐだったはずだ。
ポケモン攻略情報を求めて、Yahoo!の検索からたどり着いたサイト。
学校から帰ってサイトにアクセスすると、毎日新情報がアップされていて、そりゃあもう胸が高鳴ったというものだ。

ざんねんながら、そのサイトは翌年の春には閉鎖となってしまい、仲良くなったかたがたのうち数人が個人サイトを立ち上げた。
そこからはポケモン中心というより、その友人たちがいる一次創作界隈を、なにをするでもなく漂っていた。
毎日掲示板でどうでもいいことをあーだこーだ、まるでチャットのように話していた。それはそれは、たのしい時間だった。
いまでもわたしはTwitterでよくツイートをしているし、リプの応酬もそれなりにやるほうなので、あのころからまったく進歩していない説もある。

みんなから遅れて、自分のサイトを立ち上げた。
落書き程度の絵、いま見るとはずかしいけど、無駄に熱意のこもった小説、その他もろもろがつまった黒歴史サイトの誕生である。
文章に自信があったわけではない。絵が描けないから、曲が作れないから、消去法で小説を選んだだけだった。
書くことがすきなわけでは、なかった。

あのころの仲間は、飛びぬけて才能に恵まれていた。
明るくてやさしくて、誰からも好かれるあのひとは、絵も描けたし曲も作れた。イラストレーターとして、一線で活躍しているひともいる。プロの漫画家になったひともいる。イラストの新ジャンルを、自分で作ってしまったひともいた。発言がおもしろいひと。めちゃくちゃに行動力のあるひと。
みんな輝かしかった。光っていた。かっこよかった。
でもわたしは、なにも持っていなかったんだ。

時は流れ、個人サイトはmixiになり、さらには徐々にTwitterに移行していった。だが、そのタイミングで、わたしは移行を選択しなかった。
いつしか、尊敬と同時にコンプレックスをこじらせて、勝手に卑屈になっていた。
何者でもない自分がいやだったんだ。自信がなかったんだ。
才能にあふれる、さいこうにすてきなひとたちのことがだいすきで。
なのに、わたしなんかがそんなひとたちと一緒にいていいわけがないって、ひとりで勝手に怯えて逃げてたんだ。仲間になれないって思い込んでたんだ。だからわたしは、彼らについていかなかった。
……ほんとうはちょっとだけ、誘ってほしかった。

さらに時は過ぎた。5年ほどのあいだ、ほぼインターネットを絶っていた時期もある。2015年、久々に戻ってきたSNSはTwitterだった。アカウント名は……正直、ちょっと迷ったけども「少年B」のままにした。
もしかしたら、あのころの彼らと、ひろいネットの海のどこかで、ふたたび出会えるかもしれないから。

漫画家になった彼女の作品がアニメ化したことを、ニュースサイトで偶然知った。わたしが何もせずに、ただだらだらと過ごしていた時間。あのひとはその間に努力を重ねてきた。描き続けてきた。
今さら、「昔の友達だよ」だなんて、どんな顔で言えるというんだろう。

2017年末、前年に出会った友人たちに刺激を受けて、ブログを書き始めた。
「ノーモア・黒歴史」。
ノンジャンルで統一感のないブログには、たったひとつだけのルールを課した。いやなこと、腹の立つこと、つまらないこと。そういったことは、いっさい書かないこと。

そんな「スキ」と「たのしい」だけが詰まったブログは、すきなサイトの投稿コーナーにたまたま運よく続けて載る。翌年の夏には、偶然に偶然が重なった結果、わたしはライターになっていた。
気付けばあたらしい仲間が、たくさんできていた。

2018年の暮れにかけて、「あのころの」仲間たちとの再会があった。
期待をしていなかったわけではない。でも、まさかほんとうに会えるとは、おもってもいなかった。
ネット上での再会にとどまらず、そのうちのひとりとは、つい先日食事をしにいってきた。

わたしがそっと距離を置いてから、もう12年くらい経っただろうか。
でも、顔を合わせてわずか5分で、あのころのふたりに戻れたんだ。
過去に顔を合わせたのは、数えるほど。でも青春時代の約6年間、画面越しにおなじ時間を共有してきた仲だ。
お互いに30歳を過ぎ、おもしろい発言で掲示板を沸かせていた中学生はイラストレーターに、黒歴史を量産していた高校生は駆け出しのライターになっていた。
でも、立ち位置や年齢は変わっても、変わらないものはたしかにあった。

2年前までなら、ずっと過去を懐かしんで、すがりつくだけの一日になっていたかもしれない。でも、いまはちがう。
あのころはほんとうにたのしかったね。「まぁ、いまもたのしいけどさ。」
その一言が言えるようになったのは、わずかながらの成長なのかな。
なんて、そんなことを思う。

いまでも正直、尊敬しているし、「やっぱかなわねぇな、あのひとたち、ほんとうにすげぇや」って思う。
でも、書くことで繋がってくれた仲間がいる。一緒に、おもしろいイベントの企画をかんがえてくれる友達がいる。
そしてなにより、この文章を読んでくれているあなたがいる。
いまはサブステージかもしれないけど、いつかはメインステージのトリを目指してる。だから、ちょっと待っててよ。すぐに追いついてみせるからさ。

わたしはもう、卑屈にならない。

#エッセイ #日記 #コミュニケーション #人間関係 #コンプレックス #大人になったものだ

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