人を活かし、人を動かす〜上杉鷹山
【読書ノート】
『人を活かし、人を動かす〜上杉鷹山』
鈴村進著 知的生きかた文庫
してみせて、言って聞かせて、させてみる
上杉鷹山……江戸時代中期、貧窮に喘いでいた米沢藩の財政を再建し、奇跡的な繁栄をもたらした日本を代表する名指導者である。第35代アメリカ大統領ジョン F ケネディ、42代大統領ビルクリントンが、最も尊敬する日本人と賞賛した人物でもある。
江戸時代後期、米沢藩主の上杉鷹山が家臣に「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という歌を教訓として詠み与えたという話は有名。
📗人の上に立つ者必読の書
「徳のあるところには富が生まれる」
それが米沢藩を甦らせた、強いバックボーンとなったのである。
鷹山の藩政を紐解き、その根底にあるものを詳細に学ぶならば、そこには時代を超えた真理がある。
すなわちそれは、
人は『誠実』『謙虚』『慈愛』と言った心の力に動かされるということ。
信念がなければ人は変わらない。
信念がなければ人は動かない。
鷹山の『リーダー論』は今もなお輝きを放ち続けているのである。
📗人は自らの弱さを認めた時、強烈な力の持ち主となる
反対に自らの力を過信したとき、彼はその傲慢さによって身を滅ぼす。
📗物事は急には思うようにはならないもの。人の上に立つ者の忍耐
自ら率先して鷹山は一汁一菜を実行し、木綿を身につけた。
近習達もこれに倣ったが、これ以外の家臣たちはなかなかこの命令に従うとはしなかった。
一度華美な習慣に慣れてしまうと、これを改めて質素にすることは難しい。
「家臣たちが木綿を着用しないのはむしろ当然のこと。
殿のように、国全体を心配するようなものはいないのです。
自分が今、安楽に過ごしたいということだけしか考えないのが、一般の人情というもの。
したがってまずは、ご自身の行動だけを正しく守っていかれるべきであり、物事が急には思うようにはならないものと考え、ゆるゆると時間をかけて改善の方向へ導いて行かれるべきです。」
と、師である細井平洲に諭されます。
📗誠意とは100%純粋であること
誠意とは100%純粋であることであり、それを支えるものは謙虚さ以外にはない。
誠意という言葉は便利かつ手軽である。
真に誠意を尽くし、相手にそれを伝えるためには、その根底に自らの人格の高揚が必要である。
その上、虚心にひたすら努力を続けなければならない。
うわべだけのひとりよがりの誠意などなんの意味もない。
📗苦境の時は二重三重に災難が降りかかってくるものだということを常に覚悟しておくべきである
順調な場合には、することなすことが図に当たって予想外の好調が続くものだが、逆境に陥るとありえべからざるような不足の苦難が必ず次々と降りかかってくるものだ。
📗感想&考察
人の上に立つということ、人を動かすこと、人を活かすことどんなものが丁寧に書いてある本である。
今となっては常識となっているが、この上杉鷹山のような人物が、こういったことを生涯をかけて勉強し、書物として残してくれたおかげで、現代に生きる私たちは本から「人の上に立つもののしての常識」として人生を一度経験しないとわからないような事が学べる。
自らの生涯をかけて会得した人を活かす方法だからこそ活きた情報であり、二番煎じ三番煎じが書いたようなノウハウ本とは違ったニュアンスで、『本来の形をそのまま』受け取ることができる本ではないだろうかと思った。
あなたも人の上に立つのであれば、この本を一読していて損はないと思う。