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落語家としての日常

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落語家として起きた身の回りのおはなし。
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落語家のこだわり−紅花染めの着物−

落語家のこだわり−紅花染めの着物−

着物は商売道具だし、衣装だし、そりゃ好きなものを着たい。だいたいの落語家がそうだと思う。
やっぱり、お気に入りの着物を着たらテンションが上がるし、いろいろと凝り出してくる。

少し前だが、りんごの紋をつくった。

このへんは、意外と落語は自由である。基本的には一門の師匠の紋であったり、実家の紋なのだが、好きなものだっていい。僕は実家がりんご農家だから、りんごの紋である。師匠だって、クラゲのようにフ

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はじめまして、サックス

はじめまして、サックス

 サックスをはじめました。

はじめましたと言っても、音楽教室に通い始めただけだが。

もともと僕は、音楽に疎い。苦手である。

中学時代、音楽の授業のときに、歌い出しの「あ」の段階で、禿げた音楽教師のおっさんに

「全然ちがう」

そう言われた。うまくはないが音痴ではないと思っていた僕の人生は、なるべく音楽に触れないように生きる人生に変わっていった。
だって全然ちがうんだから。

 ところが落語

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今年やるべきこと

今年やるべきこと

「来年はどうしようか。」

 去年の12月に、そんなことを考えていた。

去年は、仕事もプライベートも初めてのことが多い一年で、振り返ればあっという間である。今年やっていない何かをやろうかなあと考えて、ふと独演会をやろうと思った。まあ、今までやったことがないわけではないのだが、都内で自分主催でやるというのは今までにない。
なぜふと思いついたのかと言えば、去年の1月に山形で独演会を開催した。その時に

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酔っ払い(落語家の場合)

酔っ払い(落語家の場合)

2月は暇だ。

ただでさえ元々仕事が少ない中、さらにコロナで落語会が中止になっていく。本当に暇だ。やんなっちゃう。

そんな時はもう酒を飲むしかない。

落語家になる前は、そこまで酒は飲まなかったがこの世界に入り酒の量が増えた。打ち上げがたくさんあるということもさる事ながら、飲まなきゃやってられない!ということも増えたためだ。さらに、このコロナ禍。今までしなかった家飲みまでしてしまう始末だ。
スマ

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落語家の稽古

落語家の稽古

落語家になって悲しいことがある。

それは客席から高座を見ることができないことである。
我々落語家は師匠に入門した段階で、舞台袖からしか高座を見ることが許されない。
前座修業では毎日袖から落語を聴き、それが当たり前になっていく。だが、ふと寄席で落語を聴き、笑い、楽しんだあの感覚、それがもう一生味わえないのかと思うと、なんだか寂しくなる瞬間もある。

稽古の時は正面から見ることができる。
落語の稽古

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落語家の出囃子

落語家の出囃子

落語家にとって出囃子は大事なものである。

落語家一人ひとりに出囃子があり、高座に上がる時に自分の気持ちを高めてくれたり、また背中を押してくれるものだ。

前座という修業期間を終え、二ツ目という身分に昇進すると自分の出囃子を持つことが許される。前座の修行中にはあの出囃子かっこいいよね、二ツ目になったら何で上がりたい?こんな会話をよくしていた。

お客さんも出囃子好きな人は多い。落語通のひとであれば

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我が師へ

我が師へ

去年の5月下旬、緊急事態宣言が終わり世の中が徐々に動き始めた頃、僕はあることに悩んでいた。
それは師匠に何を渡すべきか、である。

僕の師匠は笑点の司会でお馴染みの春風亭昇太である。去年の6月僕は前座の修行期間を終え、二ツ目に昇進した。その際に師匠へのご挨拶がある。今までの感謝、そしてこれからもよろしくお願い致しますという思いを伝える言わば落語家人生の大事な節目なのだ。
挨拶では自分で作った手ぬぐ

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ミッション:インポッシブルin寄席

ミッション:インポッシブルin寄席

コロナ禍で、さらに暑すぎるそんな今、アクション映画を観る方が多いようだ。

やはり、なにも考えずに楽しむことができる。

特に、「ミッション・イン・ポッシブル」はやはり面白い。言わずと知れたトム・クルーズ主演のスパイ映画。
キャッチコピーは「不可能を可能にする」

映画.com https://eiga.com/movie/29278/

この暑い中、エアコンを効かせた室内でアイスを食べながら、

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寄席芸人グルメ

寄席芸人グルメ

寄席の空き時間に行く食堂や洋食屋。
また師匠方が打ち上げで連れてってくれる馴染みの居酒屋。
我々芸人は、それらを全て称して「寄席芸人グルメ」と呼ぶ。

なんてことは無い。

だから間違ってもよそで言わないでね。

だが今回は「寄席芸人グルメ」と称して、いろいろと書いていきたい。

寄席が終わり師匠方に
「ちょっと呑み行こうか」
そう言われ、馴染みの店に連れてってもらう。

「若手の頃、◯◯師匠によ

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