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食べ物読書 あまからカルテット/柚木麻子

食べ物がテーマの本、
食べ物が美味しそうな本、
勝手に食べ物に結びつけて話したいだけの本。

自分の思ったことと一緒に紹介しちゃいます。
(※内容言っちゃうので、ネタバレ注意です!)

第2回!柚木麻子『あまからカルテット』

わたしの出会った本に限ってかわかりませんが、
食べ物を巡って、謎(と言っても身の回りの小さな悩みから、大きな事件まで)を解決する本が多いような気がします。

いつかnoteで紹介したい坂木司さん『和菓子のアン』や近藤史恵さん『タルト・タタンの夢』
そしてこの「あまからカルテット」もその一つ。

食べ物にまつわる魅力からか、
もしくは食べ物好きに名探偵が多いからかもしれませんが。
この本は連作の短編集が5つあるのですが、どの話も食べ物を通じて人の人生に触れるようなお話が多くて大好きです。

この本は「カルテット」と題名についているように
仲のいい、でもタイプの違う女子4人組のお話です。
みんな年齢は29才。
結婚も仕事も、30才という節目を前にして、人生について一番悩む年齢なのかなぁと勝手に思ってみたり。

一番好きなのは、1話目の咲子が素敵な男性もといお米屋さんと出会う
『恋する稲荷寿司』

私の大好きなところは、
この本、一番最初の食べ物の描写にあたる稲荷寿司の味

じゅっと煮汁が染み出した。
こっくりと甘く煮ふくめられた油揚げ、
硬めに炊かれたすし飯がほろりと崩れていく。
咲子はため息を漏らした。

という、たまらなく美味しそうな表現。
「じゅっ」「こっくり」「ほろり」
そしてため息を漏らすほどの味…
想像を掻き立てる言葉ばかり。あぁ、稲荷寿司食べたい!

そんな素敵な稲荷寿司を、素敵な男性からもらったのに、
名前も聞けずに終わってしまった花火大会…29歳咲子。
そしてその話を聞いた友人3人。
せめて名前だけでも!と、女子大に行っていた私も咲子に言いたくなってしまう。

特に咲子のような、美人なのにおっとりしていて
恋愛がしたくても、なかなかいい男性と出会えない女子…
確かにこれは見過ごせない。

けれど、稲荷寿司だけをヒントに人探しなんで無理じゃない?
という常識にはとらわれず、3人の友達はどれぞれの方法で挑戦してくれます。

タイプの違う彼女たち4人組、
良いことも悪いことでも、お互いのために奔走する様子を見ると
人生そのものが、あまからく愛おしいものだと感じる一冊です。


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