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AIが選んだ読売新聞「らしい」本 38冊(新聞書評の研究2019-2021)

はじめに

筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています

なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。

過去の連載はこちらをご覧ください。

AIが選んだキーワード

前回は毎日新聞が書評した書籍のタイトルを他紙と比較して、キーワードを抽出し、そのキーワードを含む書籍を紹介しました。

キーワードは、「歌集」(3冊)、「漱石」(3冊)、「大江」(3冊)、「医師」(3冊)、「パチンコ」(1冊)、「日没」(1冊)です。手法については以下にまとめてあります。

今回は読売新聞のキーワードと書評された書籍を紹介します。

読売新聞の書籍に紹介された本のタイトルのワードクラウド

読売新聞のキーワードは「国語」(8冊)、「琉球」(5冊)、「漱石」(4冊)、「復刻」(4冊)、「秘蔵」(3冊)、「戦禍」(3冊)、「人魚」(3冊)、「近世」(3冊)、「神戸」(3冊)、「太宰」(2冊)です。

朝日、産経、日経に比べて、読売新聞のキーワードからは、独自のカラーがほとんど感じられません。「琉球」は朝日新聞の、「漱石」は毎日新聞のキーワードにもなっています。

バランスが持ち味なのかもしれません。

読売新聞「らしい」タイトルはこれだ

国語

「国語」がキーワードになっているのは、書評子に国語辞典編纂者の飯間浩明氏がいたことが大きいです。「国語」の後に「辞典」か「辞書」がついている6冊のうち4冊が飯間氏の手による書評でした。

他紙では、毎日新聞が『「国語」から旅立って』『新明解国語辞典 第八版』を紹介しているほか、以下の3冊を取り上げています。

日経新聞は『国語辞典を食べ歩く』『新明解国語辞典 第八版』のほかに、以下の一冊を紹介しています。

琉球

「琉球」は読売新聞だけでなく、朝日新聞でもキーワードになっています。この2紙のほかに「琉球」をタイトルに含む書籍を紹介した新聞社はありません。

面白いことに、読売新聞と朝日新聞はそれぞれ5冊ずつ取り上げているのですが、重複するのは『古琉球 海洋アジアの輝ける王国』だけです。以下が、同書を除く、朝日が紹介した書籍のリストです。

読売新聞は歴史に登場した琉球王国についての本ですが、朝日新聞は琉球を今の沖縄と重ね合わせた本が多いです。

漱石

「漱石」は毎日新聞のキーワードでもありました。毎日新聞は以下の3冊を紹介しています。読売新聞が紹介した本との重複はありません。

本稿の分析対象としている期間(2019年~2021年)からははずれていますが、朝日新聞も『漱石を知っていますか』を2018年2月18日に取り上げています。

復刻

他紙では朝日新聞が、

を紹介しています。

秘蔵

「秘蔵」をタイトルに含む書籍は読売新聞以外に紹介していません。「復刻」とも相通じるワードのような気がします。

戦禍

「戦禍」をタイトルに含む書籍も、読売新聞以外に紹介していません。特殊な言葉ではないので、3年間分の5紙の書評でこれだけというのは不思議な気がします。

人魚

人魚をタイトルに使った書籍も、読売新聞だけです。

近世

近世も同じです。他の新聞ではこのタイトルを含む書籍の紹介はありません。

神戸

他紙では朝日新聞が『神戸・続神戸日没』を紹介しています。本稿の分析対象期間外ですが、毎日新聞は『神戸 闇市からの復興』を紹介しています。

太宰

『完本 太宰と井伏 ふたつの戦後』は、2019年6月と9月に取り上げられています。基本は同じ本は二度紹介しない読売新聞で、これほど近い時期に重複紹介するのは異例です。太宰生誕110年の記念年だったことが理由のようです。

太宰を含むタイトルの書籍も、読売新聞以外は紹介していません。

朝日、産経、日経はいかにもその新聞社「らしい」書籍を紹介していました。毎日は重複紹介に特徴があり、読売は全体に特徴がよくわかりませんでした。

読売、朝日、毎日は新聞社員ではなく、外部の書評子が本を選ぶわけですが、それでも社の色というのはにじみ出てくるもののようです。

次回は、新聞社同士の書評のかぶり具合を調べます。

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